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いわて生まれ品種の夏秋イチゴとクッキングトマトを全国に。地域を巻き込んでメイドイン岩手を発信

夏秋イチゴとクッキングトマトで地域をつなぐプロ

田原浩志

田原浩志 たはらひろし
田原浩志 たはらひろし

#chapter1

イチゴは「なつあかり」「夏のしずく」、クッキングトマトは「すずこま」が人気

 日本百名山の一つ岩手山の裾野に広がり、四季の彩りと山々が織りなす壮大な景色に恵まれた雫石町。総面積は東京23区とほぼ同じという広大な農山村地域は、夏でも冷涼な避暑地としても知られています。豊かな自然を生かし、オリジナリティーのある農作物の栽培にいそしんでいるのが「しずくいしチャレンジド」の代表・田原浩志さんです。

 「当方の主力は、6月から11月頃に採れる夏秋イチゴと加熱調理用として開発されたクッキングトマトです。食味がとても良いと高い評価を得ている、いわて生まれの品種を栽培。雫石の気候風土に育まれた自慢の果野菜です。いわて生まれのブランド作物として誇りをもって全国の皆さんにご賞味いただけると自負しています」

 大ぶりで糖度が高くジューシーなイチゴ「なつあかり」は生食におすすめで、色艶も美しいことから高級贈答品としても注目が高まっています。田原さんが名付け親でもある「夏のしずく」は酸味と甘みのバランスに優れ、果形が良いのが特徴。製菓などの業務需要にも重宝されています。

 クッキングトマト「すずこま」は、抗酸化作用を持つリコペンの含量が多いため加熱調理しても赤色が鮮やかで、食味やうまみに優れ和洋食や中華などの外食事業者から人気を集めているそう。

 「『わが家でも育ててみたい』という声に応えて種苗も生産しています。ご家庭をはじめ農家の方にも種苗を販売しているので、一緒にメイドイン岩手を日本の食卓に届けましょう」

#chapter2

農福連携に取り組み、生活に欠かせない「食」に携わることで心身に活力を

 かつては電力マンとして忙しく過ごしていた田原さん。転機となったのは子どもの不登校でした。心のバランスを崩し苦しむわが子を見て、家族だけで悩み生きづらさに気付いてあげられなかったことを悔やんだと話します。

 「何かヒントが見つかればと、全国の福祉施設や就労支援事業所を見て回り、施設園芸や農業による支援事業に興味を持ったんです。親子で一緒に取り組み、得た知識は技術として自立の一助になればいいなと思いました」

 生活に欠かせない「食」に携わることで自信がつき、体力や規則正しい生活が身に付くなど、農業は心身の復調につながるとされています。自然の中で活力を取り戻していく練習生の姿を見て、地域と福祉の担い手になりたいと思案。農家に転身し、関係機関や周囲の支えを受けながら十余年にわたり農福連携に取り組んでいます。

 「実は農福連携という言葉はあまり好きじゃないんです。心の病は中途疾患で生涯を通じて5人に1人は経験すると言われるくらい身近なものです。傾聴などのサポートに心がけ、職域は農業に限定せず、本人が望む仕事に挑戦できるのが理想です。雇用へのハードルを下げるためにも、地域の個人法人事業者の協力のもと『働く練習』から始めることが出来たら素敵ですね」

 心のサポーターや精神障害者家族相談員としても活動する田原さん。「身近な人の様子がおかしい、心配だと感じたら、ぜひ勇気を出して相談してほしい」と、応急支援の大切さと姿勢を貫いています。

田原浩志 たはらひろし

#chapter3

夏秋イチゴを通してさまざまな事業と連携し、地域の雇用創出が目標

 当初はなかなか生産量が伸びなかったと振り返る田原さん。工夫や教えを乞い、最近は生産量の自己目標を達成し、品質も良くなってきたと言います。

 「病気にしない・させない環境作りが大切です。ハウス内環境や生育に適した肥料と潅水管理、異変が現れたタイミングで迅速に手を打つことも重要。肥料や補助活性剤は植物の栄養です。植物も健康が大事で、免疫力が強化されると病気に強くなるので、人間と同じだなと思います」

 試行錯誤のうえ確立してきたノウハウを提供することにも前向きで、「まねは成功の近道。素晴らしい農作物を世に出すのが最優先なので、ライバルを増やすという意識はありませんね、恩返しです」と朗らかに語ります。

 「当方の苗を購入してくれた方やコンサルティング希望の事業者に栽培指導中です。これから栽培を始めるなど、入門者向けの栽培指導を重視して行っています。楽しみながら始めるのが成功の秘訣のひとつ。たった2坪で始める本格的な夏秋イチゴ栽培も手ほどきしますから、お気軽にご相談ください」

 生産物の品質向上と普及拡大に注力する田原さんは、精神疾患を経験する人々の社会参加と生きがい創出に向けて「7215club(夏イチゴクラブ)」を発足しました。

 「夏秋イチゴやクッキングトマトを通して、さまざまな職域の方と一緒に福祉支援ができればと考えています。例えば栄養士や製菓衛生士、調理師とコラボしての商品開発や、地域の観光や流通関係者との協力、業種を超えた共創でいくつもの仕事が生まれ雇用も促進できるでしょう。そして同じ悩みを持つ人に寄り添える、自ら精神疾患を経験した頼れる素敵な経営者もここから生まれることを期待しています。農福連携から『業福連携』へのステップアップが目標です」

(取材年月:2025年1月)

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田原浩志

夏秋イチゴとクッキングトマトで地域をつなぐプロ

田原浩志プロ

農業サービス

合同会社しずくいしチャレンジド

雫石の気候風土を生かし、みずみずしい夏秋イチゴと加熱調理に適したクッキングトマトを栽培。就業支援サポートなど豊富な実績を持ち、多様な人々の社会参加と生きがいづくりを目指した「7215club」を発足

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