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ピアノ調律師としての経験を生かし、顧客のこだわりを細部まで反映した防音室を提供

演奏者に快適な音環境を提供する防音室工事のプロ

三宅久夫

三宅久夫 みやけひさお

#chapter1

二級建築士の資格を持ち、音を漏らさず心地よく演奏できる空間を設計・施工

 「音を部屋の外に漏らさないだけではなく、室内に美しい旋律が響き、心地よく演奏できる空間をいかに構築するか。それこそが腕の見せ所だと考えています」

 そう話すのは、関西を中心に全国で防音室の設計・施工を手掛ける「宝塚ピアノ工房」の代表・三宅久夫さん。二級建築士の資格とピアノ調律師の顔を併せ持ち、40年以上のキャリアを誇ります。

 「一人一人奏でる音が異なるように、音響に対するこだわりはお客さまによって違います。私は調律師の経験から、お客さまのご要望を丁寧にくみ取り、細部まで微妙な調整を施すことができます」

 三宅さんは以前、北海道でピアノの防音室のリフォームに携わりました。音の透過を防いで吸収する吸音性こそ抜群でしたが、鍵盤を鳴らしても室内にまったく反響せず、依頼主は「どこか物足りない」と不満を抱いていました。「豊かな情感に包まれるよう内装材を全て入れ替え、最低限の吸音性能は確保しつつ音が反射するようにしたところ、『ピアノが上達したように感じます』と大変ご満足いただきました」

 上質な音環境を作り出すとともに、三宅さんは工期を短縮するため、防音パネルを組み合わせる工法を採用。グランドピアノ1台が入る部屋であれば、4~5日あれば作業が完了すると言います。

 「やりがいは、音楽を愛するお客さまからの感謝の言葉です。近隣のクレームを恐れるがゆえに、思う存分プレーできない愛好家は少なくありませんが、『防音室のおかげで好きなときに、心ゆくまで演奏を楽しめるようになった』と聞くと、うれしい気持ちになります」

#chapter2

建築学科で学び、楽器店に就職して調律の技術を習得。防音工事にも従事

 三宅さんは1955年、宝塚市で建築関係の事業を営む家に生まれました。家業を継ぐ意志は希薄であったものの、いずれは子どもの頃から身近だった業界に進むことを視野に、大阪工業大学建築学科に入学します。

 在学中に製図など建築のいろはを学びましたが、卒業後は当初考えてもいなかった、楽器メーカー「ヤマハ」の特約店に入りました。「当時、オイルショックの影響で建築業界は軒並み不況に陥り、思っていたような就職先を見つけられませんでした。悩んでいるとき、知人から『ピアノの調律師が足りないのでやってみませんか』とお誘いを受けたのです。それまで、ピアノを弾いたこともほとんどありませんでしたが、せっかくお声がけいただいたので挑戦することにしました」

 入社後は、音律を調える技術を身に付けるため職務にまい進。約20年にわたって調律一筋を歩みます。1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、防音工事にも関わるようになりました。

 「当時、調律の仕事が減りつつあって、勤務先が業容拡大の一環で防音室を作るサービスに着手したのです。周囲の大工職人が軒並み住宅の復興に従事していたので請負先がなく、商機を見いだした会社側が、建築系の学部を出ていた私に白羽の矢を立てました」

 以来、調律と防音室の設計・施工の二刀流として数々の音響シーンを整備。2009年に、これまでに蓄積したノウハウを生かして住まいと音楽を調和すべく独立を決意し、「宝塚ピアノ工房」を立ち上げました。

#chapter3

木造、鉄筋コンクリート造と建物に合わせて理想の音楽環境をオーダーメード

 「50代半ばの開業で見込み客がいたわけでもなく、不安もありました」と三宅さん。一つ一つの仕事に丁寧に向き合うなかで、紹介の輪が少しずつ広がっていきました。

 「転機となったのは2013年。神戸の設計事務所から『お客さまが防音室を希望されているのでお願いできないか』とご連絡がありました。実は、施主さまがピアノを習っている先生の元へ私が調律に伺っており、『適任者がいる』と話してくださったのです」

 事務所の担当者は大学時代にオーケストラに所属していたそうで、音楽ルームづくりで豊富な経験知を持つ三宅さんとすぐに意気投合。信頼できるパートナーとして、防音室の案件を数多くオーダーされるようになりました。

 「楽器が好きではあるものの演奏から遠のく人が多いのは、『迷惑をかけるから』と遠慮するからではないでしょうか。周囲に気兼ねせず音が出せるように、大好きな楽器を長きにわたりプレーできるように、当方がお手伝いします」

 「音楽は感情を動かすものと」と語り、奏者の繊細な感性を捉え、音響性能とデザイン性を備えた設備をオーダーメード。個々が理想とする表現の場をかなえてきました。

 「声楽の練習をしたり、レッスン教室を開いたり、ご家族で合奏したり、シアターとして映画や音楽を鑑賞したり、用途はさまざま。木造住宅や鉄筋コンクリート造のマンションなど、建物に合わせて適切に設置します」

 一人でも多く音楽愛好家の力になるため、三宅さんは「生涯現役でいたい」と意気込みます。

(取材年月:2024年8月)

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専門家プロフィール

三宅久夫

演奏者に快適な音環境を提供する防音室工事のプロ

三宅久夫プロ

防音工事業

宝塚ピアノ工房

長年調律師として働いてきた経験を生かし、どのような音場にしたいかを丁寧にヒアリング。単に音を外部に漏らさないだけではなく、心地よく音が響き、快適に演奏できる防音室を施工する。

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