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森林や廃校に新たな価値を見出し、企業や地域の成長に貢献

森林や廃校など地域資源を価値化して課題解決を導くプロ

足立龍男

足立龍男 あだちたつお

#chapter1

地域産木材を活用したSDGsやカーボンニュートラルの取り組みと地方創生をサポート

 総面積の75%を森林が占める兵庫県丹波市で林業を営む「FOREST GROUP」代表の足立龍男さん。先進的な循環型の林業モデルを基盤に、SDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラルに取り組みたい企業や団体に向けたコンサルティングを提供しています。

 コンサルティングの軸は、丹波地域産の木材を活用した取り組みにより企業価値を高めることです。
 「木の伐採は温暖化を加速する一因ですが、日本の森林には特有の問題があります。国内では、輸入材に押されて林業が衰退し、間伐などの森林管理が十分ではありません。増えすぎた木により、光が届かず土壌が貧弱になり、土砂災害のリスクも高まっています。国産の木材を適切に使うことは、環境保全や地域課題の解決につながります」

 同社は森林整備から国産木材の加工・販売、木造建築の建設設計施行、情報発信まで、グループで一貫して行っています。
 「林業の6次産業化に加え、山を所有する山主さんにも収益を還元し、さらなる森林整備への投資を促す、循環サイクルが確立されている点が強みです。自社で実践するノウハウをもとに、企業に応じた取り組みを提案します」

 例えば、〝オフィス家具や設備に地域産木材を取り入れる〟〝山林を保有し、カーボンクレジット制度を活用〟流域ビジネスの取り組みなどさまざまな手法をアドバイス。補助金の申請や、地域との折衝も支援します。
 「実績の一つが、神戸にある消防・防災サービス会社の新規事業です。丹波市の里山に地元産の間伐材を使ったロッジを建て、都市部在住者にリフレッシュや災害時の備えとして二拠点生活を提案。収益の一部を家賃として山の所有者に支払い、森林管理にあてる仕組みを確立しました」

#chapter2

「無価値の価値化」がテーマの廃校活用をもとに、地域創生のノウハウを伝授

 足立さんは、丹波市青垣町の廃校を活用した「森の情報発信基地 FOREST DOOR -旧神楽小学校-」の運営も行っています。施設内には、木のおもちゃで遊べるミュージアムや、木の空間と地元食材を楽しめるレストランなどがあり、年間約5万人以上の来場者数を誇ります(2023年4月~2024年3月)。
 「コワーキングスペースや研修室、一棟貸しのサウナ付きウッドヴィラなども設け、当初の想定は経営者向けでしたが、あるインフルエンサーによる投稿が拡散し、ファミリー層が増えました」

 行政からの依頼を機に、廃校活用事業を始めた足立さん。経営学を専門とする大学教授から助言を受け、2年かけて形にしました。
 「廃校と森林という〝無価値〟とされるものを掛け合わせ、イノベーションを起こす〝無価値の価値化〟をテーマに地方創生に取り組み、3年で黒字化を達成しました。このビジネスモデルをもとに、同じように地域創生に取り組む行政や企業をお手伝いしたいと考えています」

 成功のポイントは、地域との連携と収益源の確保と話します。
 「持続可能な地域資産には、住民の満足と収益化の両立が必要です。学校は、地域コミュニティの拠点なので、倉庫などハコ利用では、住民との接点がなく、施設の老朽化に伴う移転リスクも残ります。当施設でも、夏休みの自習室開放やお祭りの会場提供など地域密着を大事に、飲食事業などで収益を上げました。にぎわいが戻ったと住民から喜ばれており、さらに地域にお金が落ちるよう、地元事業者と連携したサービスも拡充させます」

#chapter3

生まれ育った丹波の森林環境を守りたいという思いが原点に

 丹波市出身の足立さんは、設計事務所を経て、父が営む地元有数の製材業へ。後継者として経営力をつけたいと、独立して工務店「栄建」を立ち上げました。転機は、2014年に起きた丹波市豪雨災害で崩れた山を目の当たりにしたことでした。
 「当時、市内に林業の会社がほぼないことに危機感を覚え、森林整備を行う『森のわ』を創業しました。2022年には、廃校利活用と森林保全の推進を目的に、『フォレスト・ドア』を設立。トライアンドエラーの連続で、経験を積みました」と振り返ります。

 幅広い活動の根幹には、地域の環境保全に貢献したいという思いがあります。
 「子どもの頃にアマゴやアユを捕まえて遊んでいた地元の川が、大人になってUターンすると、山の保水力が失われて干上がっていました。豊かな海は豊かな山が育てると言われるように、森林は私たちの生活の源です。山の間伐が進まなければ、生物多様性も脅かされます。森林整備の重要性を、多くの人に知ってほしいですね」と足立さん。森林資源や林業などをテーマに、講演や研修も行っています。

 社会課題に取り組むことは、企業にもプラスになると力を込めます。
 「〝いつか〟ではなく、今踏み出すことで、人材確保や新規ビジネスにつながります。特に新しい世代の環境意識は高く、当社の採用活動でも東京や大阪などから100人を超える応募がありました。地域資源を活用して企業価値を高め、循環型社会をともに実現しましょう」

(取材年月:2024年11月)

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足立龍男

森林や廃校など地域資源を価値化して課題解決を導くプロ

足立龍男プロ

地域産木材の利活用や廃校利活用などの地方創生コンサルタント

FOREST GROUP

林業から木材の販売・加工、建築まで森林資源の6次産業化を実現。地域産木材を活用したSDGsやカーボンニュートラルなどの取り組みをサポートし企業価値を高める。丹波市での廃校活用の実績から地方創生の支援も

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