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歩んできた道のりを真摯で優しい視線でたどり、「読まれる」社史・記念誌で存在証明を未来へつなぐ

「読まれる」社史・記念誌を追求する編集のプロ

竹林哲己

竹林哲己 たけばやしてつみ

#chapter1

企業や学校、病院、社会福祉法人など、社史や記念誌で創業35年の実績

 社史や記念誌を専門に手掛ける「牧歌舎」は、兵庫県伊丹市に本社を置き、東京都千代田区に本部を構え、全国からの用命に応えています。創業以来約35年にわたり、企業や学校、病院、社会福祉法人など各種団体のヒストリーをまとめ、自分史や家族史といった個人出版も含め、累計1500冊を超える制作実績を積み上げてきました。

 「社史については『過去と現在をつなぎ、未来を見据える経営史のドキュメント』ととらえ、会社を強くするための存在証明だとも考えています。会社も人間も実はみんな等しく生存競争にさらされる『弱者』。だから『弱者に寄り添う目線』を基本に置いて社史を作りたいと思うのです。また、どんなに頑張った人や会社も、書かれなければ忘却され、歴史上に存在しなかったことになります。みんなが生きた、頑張った事実を『歴史』の中にきちんと存在させておくためにも、会社の歩みを記録として残すことには大きな意味があります」

 社史がなぜ会社を強くするのか。二つの力があると竹林哲己さんは見解を述べます。

 「一つは、従業員が先人の営みを知ることで自分の仕事の意義を再確認し、誇りを持てるようになること。もう一つは、共通の記憶を共有することで、会社としてのアイデンティティーが育つことです。自らの役割を胸に刻み、一体感を得ることで一人一人のモチベーションや組織全体の結束力が高まり、前に進む力になります」

 経営者の方針や目標達成に向けた従業員の努力、時流や苦労のいきさつまで。できる限り詳しく正確に調べ、具体的に記すことを大切にしています。

 「社史は単なるブランディングのためのパンフレットとは異なり、現役の社員やOB・OG、創業期からの歴史を支えた人々が主な読者。現役社員が創業からの経緯を理解したり、OB・OGが往時を偲んだりできるように詳細に描いて初めて、後の世代にも働く価値や教訓が伝わると思っています」

#chapter2

従業員やOB・OGが原稿を分担する「社史手づくりサポート」で充実感も提供

 印刷会社や出版会社で経験を積んだ竹林さん。「誠実な料金で、読まれる社史を届けたい」と1991年に独立しました。

 A4判100ページ前後であれば約1年かけて制作。関係者への取材や事業の沿革など資料収集を重ね、創業者の人物像やその時々の世相を丁寧に描写。膨大な労力を要しますが、竹林さんが軸にしているのは「どれだけ喜んでもらえるか」。

 「ヒアリングでは、できるだけ多くの声を拾います。創業者や経営者の視点だけでなく、従業員の言葉や思いを盛り込むことで、社史は『会社を主語とした自分史』として立体感を帯び、自分事になります」

 印象深い案件の一つが、ある大学の運動部の百年史。明治期からの資料を掘り起こし、試合ごとの選手名まで索引化した大作となりました。
 「完成後、OB会の会長から涙声で『歴代の部員たちの足跡が分かる』と感謝の電話をいただきました。この仕事をしていて良かったと感じ入る瞬間でしたね」

 また、2019年から「社史手づくりサポート」も開始。基本は竹林さんのもとで調査や執筆、編集を行いますが、従業員やOB・OGも原稿を分担します。

 「プロに全て依頼するより費用を抑えられるうえ、『自分たちで作った』という充実感に満ちた一冊になるのが特長です。採用した企業さまからは『出来上がりだけでなく、工程にも満足できた』との声が寄せられています。障害者就労支援施設や小規模団体は特別価格でお手伝いするなど、多くの組織でビジョンや取り組みを整理する機会になればと願っています」

#chapter3

編纂委員会に向けたセミナーや、社史づくりのコンサルティングも実施

 自らを社史職人と呼ぶ竹林さんは、長年の経験から導き出した哲学を「社史制作の5原則」として牧歌舎のWEBサイトで公開。経営者がどのように会社を維持・発展させてきたのか、従業員も含め職務に励む人たちのストーリーをつづり、血が通ったメッセージとして届けることを趣旨に、制作のメリットやノウハウを伝えています。

 「創業者の生い立ちや試行錯誤の日々、時代背景を探っているときは探偵の気分。編集者として人間ドラマを描くことは何よりのやりがいです」と笑顔を見せる竹林さん。

 実行委員など編纂を担うメンバーに向け、「過程を楽しんでほしい。資料を集め、人に話を聞き、文章を紡ぐプロセスそのものが、会社の存在を見直し、未来を考える大切な時間になりますから」と呼び掛けます。

 編纂委員会や企業担当者を対象にセミナーをしたり、社史づくりに関するコンサルティングをしたり、知識と経験を伝える活動にも注力。知見を還元する一環として、2024年には千葉県内の中学校で60周年記念誌を制作する生徒たちに、どんな内容を盛り込むか、企画の立て方など本の作り方を伝授する出前講座を実施しました。検討段階の企業や団体には、大阪や東京で随時無料相談会を開催しています。

 「現場で直接語り合うことが、良い作品づくりの第一歩と考えています。全国各地にお伺いするほか、オンラインにも対応しています。私どもと一緒に、読む人が主人公になれる、人間味あふれる一冊をかなえましょう」

(取材年月:2025年9月)

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専門家プロフィール

竹林哲己

「読まれる」社史・記念誌を追求する編集のプロ

竹林哲己プロ

書籍編集・出版

株式会社牧歌舎

牧歌舎は平成初年、バブル景気で大企業などの豪華な社史や記念誌が次々と発刊される中、日本を底辺から支えてきた中小企業や小規模団体の風雪の歩みを歴史に刻むことを志して発足。蓄積された職人スキルで実現中。

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