自分が主人公の絵本作りで前向きな人生をサポートするプロ
小笠原映子
Mybestpro Interview
自分が主人公の絵本作りで前向きな人生をサポートするプロ
小笠原映子
#chapter1
「カウンセリングを通して、あなただけの物語を絵本にしませんか」と、呼びかけるのは、「ナラティブひろば」の代表・小笠原映子さん
ナラティブとは物語という意味。「心理カウンセリングにおいて、クライアントが抱えている問題を語りによって外在化し、新たな物語に置き換えることで問題のとらえ方を変えていく「ナラティブ・アプローチ」という手法があります。小笠原さんは、この手法と絵本作りを掛け合わせた「ナラティブ絵本」を考案しました。
特徴は主に三つあります。一つ目は自分が主人公の物語を考えることで、自身の生き方を肯定し前向きに生きる力となること。二つ目は手を動かして表現する喜びを感じられること。
「カウンセリングは受け答えに慣れていない方、特に高齢の方には負担となることも多いんです。絵本作りでは、一つ一つの場面について、当方とのやり取りを通じて楽しみながら仕上げていきます。あまり触れたくなかった事柄も、絵本づくりという作業によって俯瞰して見られるようになるのです」
三つ目は、気軽に見返すことができること。自身のがんばりや望む未来を、温もりのある挿絵と短い文章で表現された絵本で再確認できます。
小笠原さんのもとでは、プロのイラストレーターが絵を描き、印刷・製本を行う「フルパッケージ」と、専用の用紙に自身で言葉と絵を手掛ける「ワークショップ」の主に二種類のサービスを用意。
「ワークショップでは、数人で集まって制作し、最後にシェアする時間も取っています。それぞれが大切にしている思いに触れ、毎回温かな時間を過ごしています。絵が苦手な方も参加しやすい工夫をしていますので、どうぞお気軽にお越しください」
#chapter2
小笠原さんは子どもの頃から絵や工作が好きで、漫画家になるのが夢でした。両親から、作家で生計を立てるのは難しいと言われ方向転換。看護師という職業を選び大学卒業後、聖路加国際病院の病棟看護師となりました。
「やりがいのある仕事でしたが、時間に追われる毎日でもっとゆっくり患者さんの話を聴きたいと強く感じました。訪問看護科へ異動し、一人ひとりの気持ちに向き合う療養の在り方に関心を持ちました」
結婚を機に群馬県へ移住。知り合いもいない孤独な環境での子育てに悩んだ時期を経て、県内の病院に再就職。子育てとキャリア形成の両立を模索し、産業保健師、大学教員をしながら群馬大学大学院博士課程に進みました。
在宅看護学を専門に、群馬大学、群馬パース大学、新潟大学と昇格しながら転職し、高崎健康福祉大学で教授に就任。目指していた職位だったものの、その先のビジョンを描いていなかったこと、コロナ禍でオーバーワークとなったこと、実家の両親の介護が重なったことから退職し起業を決意します。
「起業当初は、カウンセリングを軸としていました。お話をされた直後は元気になられるのですが、長年の考え方のくせ、習慣を変えるのは難しく、時間がたつともとに戻り、ネガティブに傾くことも少なくありません。自身で心のケアができる方法はないか、これまでの自分の経験を総動員して考え出したのがナラティブ絵本でした」
27年にわたり看護や教育の現場で培った知見をもとに、カウンセリングを通して聞き取ったエピソードからその人らしさを丁寧に引き出し、一貫性のある物語へと作り上げる力が強みです。
#chapter3
「例えば70代の女性は家族に関する悩みを抱えていましたが、趣味の家庭菜園の話をするときは生き生きしたご様子で、芽吹きや収穫と菜園が織りなす四季を絵本にすることを提案しました。制作後は、『未解決のこともあるけれど、前向きな気持ちで自分の時間を楽しめるようになった』との感想が寄せられました」
ナラティブ絵本は、年老いた親へ感謝を伝えるツールとしてもおすすめしたいと語る小笠原さん。自身も自営業をしていた両親の人生を絵本にしてプレゼントしたそうです。
「親が一生懸命働いてきたことを再認識できましたし、普段はあまり感情を表に出さない父も喜んでいました。相互理解の下地ができて、介護の話などがスムーズにできるようになりました」
また、がんや障害などをテーマにした絵本作りも依頼があるとか。
「最初は自分や家族のためという目的だったのが、同様の境遇の人にも届けたいと心境が変化し、電子書籍などで販売を始めた方もいます。反響を得てさらなるチャレンジへの力に変えているようです」
今後は、患者会でワークショップを開催したり、ナラティブ絵本コーディネーターを育成したり、楽しみながら心の整理ができるコンテンツとして広げていくことを目指します。
「ナラティブ絵本は、ろうそくの“ともしび”のようなものと私は考えています。届く範囲は狭いけれど、その人らしい味わいが読む人の心を温めます。周囲を優しく照らす明かりが増え、社会全体がぬくもりで満ちることを願っています」
(取材年月:2024年12月)
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自分が主人公の絵本作りで前向きな人生をサポートするプロ
小笠原映子プロ
カウンセラー
ナラティブひろば
ナラティブとは物語という意味。自分だけの物語を描く絵本制作やワークショップを通じて、心の安定や前向きに生きる力を引き出します。子から親へ感謝を伝え次世代へ思いをつなげるツールとしてもおすすめです。
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