トラクターの自動操舵やドローン活用でスマート農業を進めるプロ小山直樹

トラクターの自動操舵やドローン活用でスマート農業を進めるプロ

小山直樹

トラクターの自動操舵システムで耕運から収穫まで一連の農作業を機械化

　デジタル技術を生かして省力化、省人化を図るスマート農業の普及に取り組む、群馬県高崎市の「心」の代表・小山直樹さん。近年は、新旧のモデルを問わずトラクターに搭載できる自動操舵システムを推奨しています。

　「GPSアンテナやハンドルモーターを取り付けるだけで耕運、種まき、植え付け、収穫といった一連の作業を機械化できます。当社は世界的メーカー『CHCNAV』の代理店を務め、性能を詳細に説明し、デモンストレーションで実用性をご案内しています」

　農地の面積や形状をデータで読み込み、適切な経路を割り出して誤差2.5cm以内で走行。経験や勘に頼らず、誰もが一定の成果を出せるのが特長です。

　「皆さまに『私よりも運転がうまい』『トラクターは若手に任せて他の業務に集中できる』と喜ばれています。ある熟練の方も『自動操舵に切り替えたらマルチシートを張れる面積が増え、仕事が楽になった上に収穫量もアップした』とうれしそうでしたね。群馬ではコメやネギ、コンニャクイモの生産者を中心に導入が進んでいます」

　コストパフォーマンスもよく、トラクター1台で間に合うような小規模農地ほど効果を得やすいと語る小山さん。北海道などの大農場の話ではなく、郊外の限られた土地を活用し、生産性を追求する農家をサポートしたいと力を込めます。

　「私は農業高校出身のためリアルな提案が強みです。先進技術を扱う会社は数あれど、現場の悩みを深く理解し、作物の特性や周辺環境も踏まえて話せる人間は他にいないと自負しています。県内を中心に、遠方の方もどうぞご相談ください」

ドローンによる農薬散布も手掛け、作物の病気や生育不良への対処方法も共有

　小山さんはドローンによる農薬散布にも従事。きっかけは幼少期からの“ものづくり”への興味だと話します。

　「プラモデルの組み立てから始まり、無線で動かす自動車模型を経て、リモートコントロール式のヘリコプターに夢中になりました。ドローンとは比較できないほど操作が難しいのですが、当時はパソコンのシミュレーターや近所の学校の校庭で繰り返し練習できました。実践で培ったスキルで全国各地に赴いて病害虫を防除しています」

　操縦への熱は冷めず、農業高校卒業後は大型クレーンの運転士として千葉県内の会社に勤務。やがて妻と出会い「静かな場所で暮らしたい」と意気投合して、自身の故郷である群馬に移住します。

　「転居を機に起業しました。当初は人間が乗る農薬散布用のヘリで事業を興す予定でしたが、友人がドローンの農業利用で日本のパイオニアだと知り、プロジェクトに参画して当社の看板の一つとして掲げています」

　新型の機種は散布する農薬の粒子の大きさを変えることも可能。葉の裏にも行き渡るため、和歌山の有田ミカンや沖縄のシークアーサーなど、かんきつ農家からの依頼も増えていると言います。

　「私は農薬に関する専門知識を持ち、ドローンのカメラを通じて作物の病気や生育不良への対処方法も分かります。『小山なら何も言わずに任せられる』と、農業法人やJA（農業協同組合）とも取引があります。さらに埼玉の河川を測量したり、都内の音楽イベントを撮影したり、ドローン検定の審査員を務めるなど広く活動しています」

古い価値観を改めて若い世代の参入を促し、農業を持続可能なビジネスに

　小山さんにとって情熱の原点は、農家の収益向上と負担軽減への貢献。特に夏場の炎天下の作業は過酷であり、自動操舵やドローンの導入でリスクを回避できることにやりがいを感じています。

　「農業に携わる人の平均年齢は下がらず、引退する70代の生産者を未経験の50代が引き継ぐといったケースも珍しくありません。それでも次の担い手が見つかれば幸運で、廃業による耕作放棄地も目立つようになりました。衰退の一途をたどらないようテクノロジーを活用し、若い世代の参入を促すのも私の役目です」

　持続可能なビジネスにするには若者と向き合うことが“鍵”になると強調。「土で汚れるのが嫌だ」「虫が苦手」「収入も休みも少ない」という声を甘えと捉えるのではなく、時代の変化として認識し、農業における従来のイメージを一新したいと続けます。

　「ある80歳の生産者は『新しいアイデアや技術に関心があり、積極的に取り入れたい』と話していました。進歩に前向きな人を増やしてイノベーションの波を広げるとともに、私自身もいつまでも柔軟な発想を持ち続けたいと大変刺激になりました」

　時流を追い、仕事に打ち込めるのは社内のエステ事業を担う妻の支えがあるから、と小山さん。彼女は高崎市内でログハウス調のサロン「森の時計」を営み、ケアメニューを提供しています。

　「互いに好きなことに打ち込みながら社会の役に立とうと努めています。サロンは男女を問わず利用できるので、ぜひお仕事で疲れた体をほぐしにお越しください」

（取材年月：2025年4月）

小規模農家のスマート農業化をサポートし、負担軽減と収穫量向上に貢献

トラクターの自動操舵システムで耕運から収穫まで一連の農作業を機械化

ドローンによる農薬散布も手掛け、作物の病気や生育不良への対処方法も共有

古い価値観を改めて若い世代の参入を促し、農業を持続可能なビジネスに

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