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生きるために必要不可欠な食を生み出す農業を通じて、地域の魅力を発信

農業を通じて十文字町の豊かな風土を発信するプロ

飯野陽彦

飯野陽彦 いいのあきひこ
飯野陽彦 いいのあきひこ

#chapter1

野菜の収穫体験や展望キャンプ場など、気軽に自然と触れあえる場を提供

 「生きるために必要不可欠な食を、自分たちの手で作り出すことの大切さを伝えたい」と話すのは、高崎市十文字町にある「十文字ヴィレッジ」の代表・飯野陽彦さん。
 群馬県の名峰、榛名山の麓に位置するこの地区は、朝晩の寒暖差が大きく、火山灰が堆積してできた水はけのいい良質な土壌があることから、昔から農業が盛ん。飯野さんは農業を軸に多彩な事業を展開しています。

 「畑の野菜を収穫できる『ベジ放題』というサービスを手掛けており、月額制とスポット利用できるコースを用意しています。日頃の世話は当方が行うので、自然との触れ合いを楽しみながら、気軽にとれたてを手に入れることができます」

 訪れるのは、食に関心が高い子育て世代や主婦が多く、企業が福利厚生として取り入れるケースも。飲食店から、「メニューの付加価値を高めるために食材を作ってほしい」といった依頼も舞い込みます。

 「高崎市の中心部から車で30分ほど、一気に登った標高約450メートルのところに『展望キャンプ場』も開設しています。南面が開けていて関東平野も秩父の山々も見渡すことができ、天気がよく空気が澄んだ日はスカイツリーも見えるんですよ」

 日が沈むと辺りは静かになり、聞こえるのは虫の音や鳥の声。眼下には夜景が、頭上には満天の星が広がります。

 「都内から3時間ほどの場所で出会える雄大な眺望に魅了されて、リピートで来られる方も多いですね。キャンプ場に隣接する畑で実った新鮮な野菜を、その場で食すこともできます。慌ただしい日常から離れて、ゆっくりとお過ごしください」

#chapter2

食品メーカー営業から農業へ。東日本大震災を機に自分で食料を作る強さを実感

 十文字町で生まれ育った飯野さん。実家は農業を営んでいましたが、後を継ぐつもりはなく、20歳で群馬県内の食品メーカーに就職しました。

 「未熟ゆえに社会に対して背を向けていた自分に、人のために働き感謝されることの喜びを教えてくれたのが、勤務先の社長でした」

 営業担当として、県内外の飲食店を飛び込みで回る日々は苦労もありましたが、若さもあり、顧客にかわいがられたそう。地道な努力が認められ、埼玉や東京で営業所の立ち上げを任され、「将来は後継者に」と期待をかけられるまでになりました。

 「転機は、2011年の東日本大震災でした。コンビニやスーパーから食品が消え、災害時の都会のもろさを実感。日本の食料自給率の低さに危機感を覚えました」

 同時に飯野さんの脳裏に浮かんだのは、自分たちで食料を作って暮らす故郷の農家の人たち。取り組み方次第でとても強い職業になるのではと考え、農業と観光を絡めた新規事業を社内で模索しますが、なかなか具体化には至りません。

 「仕事で各地に赴く中で、わが町の豊富な資源や里山の美しさを再認識する一方で、高齢化を背景に農地が放置されたり、太陽光パネルに置き換わったりしている現実がありました。いま戻らなければ取り返しがつかなくなるという思いに駆られました」

 2019年に帰郷し、起業。荒れた畑1カ所からのスタートでしたが、徐々に周囲の農家から「飯野さんなら」と託されて、今では30カ所以上を預かりさまざまな作物を育てています。

飯野陽彦 いいのあきひこ

#chapter3

「十文字大根」「十文字ビーツ」のブランド化に尽力

 飯野さんが特に力を入れているのが、地元で長年作付けされている「十文字大根」。50センチ以上の大きさになり、たくあん用に重宝されています。

 「十文字町で産出されたものだけが、こう呼ばれているんです。土質がよいため皮が柔らかく、山から吹き下ろす“からっ風”によって絶妙な干し具合になります。主に地区内で消費されてきたため、幻の大根とも言われているんですよ」

 飯野さんは漬物の加工所も操業し、栽培から商品化までを一貫。地元の生産者にレシピを聞き、長く親しまれてきた味を再現しています。
 「食品メーカー時代の経験を生かして販路開拓にも努めています。都内の展示会に出品したところ好評で、多くの方にご賞味いただけるよう生産体制を強化していくつもりです」

 新たに、鮮やかな赤色が特徴の「十文字ビーツ」のブランド化にも着手しています。

 「カルシウムやビタミン類を含むビーツは栄養価が高く、今後ますます注目されると考えています。栄養士さんと組んでレシピの考案や加工食品の開発も進めています」

 地域の未来を見据え事業を推進していく飯野さんを慕って、農業を志す人をはじめ多様な人たちが、十文字ヴィレッジに集まるようになりました。

 「それぞれがやりたいことをこの場所を活用しながら実践することで、地域が豊かになってほしいという思いを『ヴィレッジ』という言葉に込めています。十文字町の風土から生まれる恵みを広く発信していきたいですね」

(取材年月:2024年9月)

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飯野陽彦

農業を通じて十文字町の豊かな風土を発信するプロ

飯野陽彦プロ

農業

十文字ヴィレッジ株式会社

高崎市十文字町で農業を営みながら、野菜の収穫体験ができる畑や展望キャンプ場を運営。気軽に農業や自然に触れられる場を提供しています。「十文字大根」や「十文字ビーツ」のブランド化にも取り組んでいます。

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