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自分にとって「楽しい」を選ぶ勇気を持ち、困難をも乗り越えるエネルギーを育む

自然と学びの体験で、子どもの成長と家族の癒やしを支えるプロ

蓮沼周平

蓮沼周平 はすぬましゅうへい
蓮沼周平 はすぬましゅうへい

#chapter1

子どもが自ら考え行動する、2泊3日の宿泊プラン「しずキャンプ」を開催

 福島県会津若松市、“会津富士”と呼ばれる優美な磐梯山を望む猪苗代湖畔で「しずの家」を主宰するのは、「ストローハット」の代表で、“しず”こと蓮沼周平さん。小中学生を対象に、金曜日の夜から集まる週末2泊3日の宿泊プラン「しずキャンプ」を開催しています。

 「湖水遊びや森の探検、夜の宝探しにかくれんぼ、雪遊びなど。季節ごとにおおまかなプログラムはあるものの、具体的な進め方は子どもたちに任せています。スタッフは安全の枠を整え、『どう楽しむか』を見守ります」

 子どもの主体性を重んじる蓮沼さん。大事にしているのは「君の楽しいは、きっと誰かの役に立つ」というメッセージです。

 「子どもたちは正しいことと間違いを見分け、正解を選ぶよう教えられます。でも社会に出ると、正解は一つじゃないと気づく。人によって異なり、タイミングや立場によっても揺れ動き、何を基準に日々の選択をすればいいかといえば、自分の心に聞くしかない。自分軸で楽しいと感じることを選ぶ勇気を持ち、自分で自分を幸せにできる人こそが、周りも幸せにできるんじゃないかと思っています」

 15人の少人数制で、参加する年齢はさまざま。子どもたちが話し合ってやりたいことを決め、うまくいかない場合はみんなで振り返り、試行錯誤する過程で必要な答えを見つけ出します。

 「初日は緊張して口数が少なかった子が、2日目には年下の子を気づかい、3日目には自分から片づけを始め、最後に『またあの遊びがしたいね』と声を掛け。自分だけでなく、お友達のために楽しいことを選べるようにもなるんです」

#chapter2

被災地で、前を向いて生きる子どもたちのたくましさに触れたことが転機に

 蓮沼さんが「楽しい」を大切に思う背景には、東日本大震災の経験があります。

 大学卒業後に建築会社に入社し、翌2011年3月に地震が発生。福島県の相馬市・新地町・郡山市でプレハブ住宅の建設に従事しました。がれきの山と寒さの中で、人が生きる場所をつくるべく奔走する中で目にしたのは、暗い顔をした大人たちとは対照的に、元気に走り回る子どもたちの姿でした。

 「大人が打ち沈んでいても、前を向いて生きようとする子どものたくましさに驚き、救われました。希望と生命力にあふれる子どもたちを支えたいと考え、会社を辞めて、フリースクールなどを運営する会津若松市のNPO法人を手伝うことにしました」

 被災した子どもたちの学習支援などに携わるようになった蓮沼さん。当初はボランティアでしたが、子どもたちが次第に笑顔を取り戻す様子を見てやりがいを覚え、正式に入職。2013年には、小中学生を対象にした自然体験活動「自遊学キャンプ」を始めました。

 「山や川でのびのびと遊ぶ中で意見を出し合い、仲間と協力して生活する。失敗も分かち合い、ともに学び合う場として口コミで広がり、年間1500人もの子どもたちが参加するまでになりました」

 子どもの成長を後押しした経験を糧に2019年に独立。「ストローハット」を立ち上げ「しずキャンプ」をスタートしました。

 「どんなに厳しい状況でも、人は楽しさを見つけることで前に進めます。楽しいとは単なる気分ではなく、困難を乗り越えるためのエネルギーだと伝えたいですね」

蓮沼周平 はすぬましゅうへい

#chapter3

裏磐梯でペンションをオープン。何もしない休日で親子に癒やしの時間を

 しずキャンプはリピーターも多く、かつての参加者がスタッフとして戻ってくるようになりました。子どもの頃に得た体験を、今度はサポートする立場で次の世代へ手渡していく循環を、蓮沼さんは「楽しいのリレー」と呼びます。

 「子どもたちを送り出す保護者の皆さんにも目を向けています。お話を聞くと、休日さえ習い事などのスケジュールで埋まることが多いようです。親も子もゆっくり休めていない気がして、『食・自然・ぬくもり』の三つのやさしさに包まれる、新たなサービスを始めることにしました」

 福島県の北塩原村にある高原リゾート、裏磐梯にあるペンション「歩野慕野(ほのぼの)」を事業承継し、2025年12月に再オープンへ。大浴場やサウナ、森に囲まれた庭を備えた静かな宿で蓮沼さんが提案するのは、お湯につかり、たき火を囲み、空を眺め、心身を癒やす「何もしない休日」です。

 「地元の食材を用いた料理もご用意します。のどかな環境の中で、保護者は『してあげなくちゃ』から、子どもは『させられる』から解放され、自由な時間を過ごしてほしいですね」

 「楽しむことに罪悪感を持たない社会をつくりたい」と語る蓮沼さん。忙しさの中で、自分を後回しにしがちな大人たちにもエールを送ります。

 「楽しさは、誰かに与えられるものじゃなく、自分で見つけていくもの。好きなことに夢中になり、自分が喜ぶことを見つけ、ワクワクする道を選んで軽やかに人生を歩んでもらうのが願いです」

(取材年月:2025年10月)

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蓮沼周平

自然と学びの体験で、子どもの成長と家族の癒やしを支えるプロ

蓮沼周平プロ

野外教育インストラクター/宿泊施設運営

合同会社ストローハット

「楽しい」こそ困難を乗り越えるためのエネルギー。自然体験活動を通じて、子どもたちが自分なりの「楽しい」を見つけて行動する力を育むとともに、ペンション事業で家族が心から癒やされる【何もしない休日】を提案

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