オーダーメードの旅行とウエディングをプランニングするプロ山下洋一郎

オーダーメードの旅行とウエディングをプランニングするプロ

山下洋一郎

「ゆふいんの森号」で行く「ゆふ婚」やハワイ挙式、カジュアルウエディングなど予算や要望に応じて提案

　「旅とウエディングを融合させたプランをオーダーメードでご提案します」と話すのは、久留米市にオフィスを構える「旅ステージ」の山下洋一郎さん。
　中でも力を入れているのが、お世話になった人に感謝の気持ちを込めた湯布院への小旅行と結婚式を組み合わせた「ゆふ婚」です。ヨーロピアンスタイルの外観が人気の列車「ゆふいんの森号」でJR由布院駅まで乗車。一車両貸し切りにすることもできます。到着後は、著名な建築家が設計した駅隣接の施設で挙式を行い、観光客からも祝福されながら心に残るひとときを過ごせます。

　オプションとして、ステンドグラスが美しい美術館での挙式も選択可能です。
　「宿泊される方には、森の中にたたずむホテルをご案内します。現地のフォトブラファーやヘアメイクと提携しており、挙式をせずに、ウエディングフォトだけ撮影するという方もいらっしゃいます。ご予算やご要望に応じて、柔軟にプランニングします」

　海外挙式を希望するカップルにはハワイウエディングを提案。現地のコーディネーターとのオンライン打ち合わせや、空港へのお迎えなど、安心して準備が進められる体制を整えています。

　また、親しい仲間を招いての肩ひじ張らないスタイルを希望する場合は、会費制のカジュアルウエディングも用意。
　「学生時代の卓球部をきっかけに結婚された方から、卓球大会をしたいから卓球台を持ち込みたい、吹奏楽で知り合った方からは仲間と演奏したいといった希望を伺い、実現させたこともあります。お客さまが本当にかなえたい式や披露宴が実現するよう尽力します」

大手旅行会社に就職し26年間勤務し独立。「ウエディングトレイン」を企画し反響を呼ぶ

　山下さんは旅行業界に興味を持ち専門学校に入学。在学中から派遣の添乗員として現場を経験していました。
　「子どもの頃から社会科が得意で、人前に立つのが好きだったので、お客さまを案内する仕事は自分に合っていると感じました」

　卒業後は大手旅行会社に就職し、26年間にわたって法人営業を中心に団体旅行を担当しました。仕事を通じて、旅行が縁で結婚したカップルから結婚式に招待されたり、修学旅行の生徒一同からネクタイを贈られたり、多くの出会いがあったそうです。
　その後、熊本支店長を務めていた2016年に熊本地震を経験。働き方について熟考の末、2018年に地元久留米市で起業を決意します。しかし、独立して2年もたたずに、コロナ禍に見舞われ、旅行業界全体が打撃を受けました。

　「当時参加していた異業種交流会で、私ども旅行業界だけでなく飲食業やブライダル業界も大変な状況であることを知りました。加えて周囲では、結婚式を挙げたいけれど感染リスクを考えると難しいと悩まれている方も多くいらっしゃいました。そこで、安全面に配慮した旅とウエディングを融合させた『ウエディングトレイン』を考案。JR久留米駅の当時の駅長さんの協力を得て、観光列車『かわせみやませみ』を貸し切りにするという企画が実現しました」

　クラウドファンディングで資金を調達し、抽選で一組のカップルに結婚式をプレゼント。貸し切った列車内で披露宴を催しました。その様子はテレビ局から取材も受けるなど、反響を呼びました。

一人一人の思いをかなえるために、行程のすべてに理由と意味を込めてプランニング

　コロナ禍を経て、日常が戻りつつある中、山下さんは完全オーダーメードの旅行にも注力したいと話します。

　「例えば、作家・宮沢賢治の足跡をたどる旅をしたいとのことで東北地方の旅行を手配いたしましたし、中国の歴史書『三国志』好きの年配の方からは、描かれた舞台を安全に回るにはどうすれはいいかというご相談を受けました」

　要望を実現するために、超えるべきハードルは何かを調べるところから始めるのだそう。電話一本で済むこともあれば、複数の書類を作成・提出する必要があることもありますが、長年の経験から適切なプランを描きます。

　「前職で新入社員の研修を担当したとき、みんな最初はお客さまの求めていることがつかめず、どんなコースをご提案したらいいかと悩んでいました。いつも伝えていたのは、あなたのご両親に旅行をプレゼントするつもりで、行程の一つ一つを考えてほしいということ。そうすればお客さまの満足度も高まるはずです」

　そんな山下さんには、駆け出しの頃に経験した、忘れられない出来事があります。

　「修学旅行で添乗したある生徒さんが難病を抱えていたため、安全に旅行できるよう、行程の間ずっと付き添うという役割を担いました。同行していた保護者さんが『限られた時間の中でわが子に何を体験させることができるだろうか』と話していたのが、今も心に残っています」

　旅行には、何にも代えがたい体験をもたらす力があるとの思いを強くしたそうです。

　「定年退職や病気の快気祝いなど、人生の節目にこそ、旅行に出会ってほしいですね。そのお手伝いをするのが、私どもの役目です」

（取材年月：2025年6月）

オーダーメードの旅行とウエディングプランで、思い出に残るひとときを

「ゆふいんの森号」で行く「ゆふ婚」やハワイ挙式、カジュアルウエディングなど予算や要望に応じて提案

大手旅行会社に就職し26年間勤務し独立。「ウエディングトレイン」を企画し反響を呼ぶ

一人一人の思いをかなえるために、行程のすべてに理由と意味を込めてプランニング

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