国境を越え、学びの場を求める人びとを結びつけるプロ安達照二

国境を越え、学びの場を求める人びとを結びつけるプロ

安達照二

オンライン上で英語での文化・言語交流ができるエデュケーション事業をスタート

　2002年の設立以来、旅行代理店として数々の国外ツアーを提案してきた「SQUARE」。代表取締役の安達照二さんが「メジャーな観光スポットを巡る、いわゆるパッケージツアーはほとんど扱っていません」と話す通り、同社ではこれまで、少人数制で現地の魅力を味わう国外ツアーを強みに事業を拡大してきました。業界40年以上の安達さん自らが厳選した、ローカルなスポットを訪れる旅が人気です。

　さらに大学生を対象としたフィリピンへの語学留学支援、日本企業に向けた東南アジアの外国人労働者の受け入れサポートにも力を入れてきました。視察を重ね、現地に暮らす人たちの人柄や暮らしに寄り添ってきた安達さん。「知れば知るほど、日本の学生や企業と彼らをつなげたいという気持ちが強くなる」と語ります。

　そして2020年より、グローバル力を求める学生を対象としたオンラインエデュケーション事業を発足。1000人以上を留学に送り出してきた知見と旅行業界とのパイプを基盤に、新たな取り組みをスタートさせました。

　「学生たちがWeb会議アプリを活用して、オンラインでインターンシップを経験したり語学研修を受けたり、海外の人と交流できるプラットフォームを作りました。フィリピンの語学学校へ協力をあおぎ、学生のレベルに合わせたマンツーマンの英会話レッスンも実施しています」。

　「貧しい子どもたちにも学びの機会を」と、学生が現地の子どもたちにオンライン上で日本語を教える相互学習プログラムも用意。このサービスは、九州エリアの大学の授業にも採用されています。

新規事業立ち上げは「制約の多い今の大学生に学びの機会を作りたい」という思いから

　大手旅行代理店に8年勤務したのち独立し、会社を興した安達さん。「さまざまな国を訪問できたこと、航空業界や観光局とのつながりを構築できたことが今の仕事に生きている」といいます。安達さんがこだわるのは、少ない人数だからこそ実現できるニッチな旅。口コミが口コミを呼ぶリピート率の高さが自慢です。

　しかしコロナ禍で海外渡航が困難となり、国外ツアーはもちろん語学留学や就職支援事業も一時停止に。そんな中で頭をよぎったのは、毎年関わっていた大学生たちのことでした。「貴重な学生時代に学習環境が制限されるのは気の毒だ」との思いから、オンラインエデュケーション事業を立ち上げました。

　「特に好評だったのが、客室乗務員（CA）を志す大学生を対象にしたオンラインインターンシップです。航空会社の採用中止が相次ぎ、目標を失いかけた学生たちに向けて、CAを目指しつつ、他の仕事にも目を向けられるようプログラムを練りました」。付き合いがある政府観光局員や航空会社社員、ツアーガイドなど現役で活躍する専門家を招き、旅行業界の構造から学べるよう工夫したそうです。

　「国際的な視野を持つには、自ら考え、自分の言葉で相手に伝える術を身につける必要があるので、参加者のアウトプットも大事にしています。国外ツアーの企画と資料作成を課題とし、インターン最終日に英語でプレゼンテーションをしてもらいました。就職活動時、少しでもアピール要素になるように、受講後には修了証を授与しています」。

「地域活性化」をキーワードに、オンラインの学び充実と国内外ツアーの企画力強化を図る

　コロナ禍は同社に予想外の副産物をもたらしました。国内ツアー企画で農家と関わったことをきっかけに、身近な地域課題にも気がついたそうです。九州には名産品が多くあるものの、農家の発信力をサポートする仕組みが構築できていないのが現状。「今後は農業や日本食材を通したインバウンド事業にも力を入れ、地元九州の活性化に貢献していきたい」と、安達さんは力強く語ります。

　すでにオンラインエデュケーション事業では日本が抱える課題を取り上げ、学生同士の意見交換の場を設けています。日本の学生が香港の学生に向けて、日本特有の魚の調理法について英語で表現し、言語交流と文化交流を同時にかなえる試みも行われました。

　学生たちのために、既存講習のブラッシュアップにも意欲的です。現在は九州エリアの大学生の参加が中心ですが、全国に輪を広げることを目指し、より大々的に広報に乗り出す見通しです。

　旅行業一筋で歩んできた安達さん。「これまで一緒に旅をしたお客さまの顔が目に浮かびます」と、海外旅行再開を願い、思い出を振り返ります。「参加者の心に残るオリジナルツアーを企画したい」という信念は今もなお揺らぐことはありません。

　「海外の人には日本の主要都市だけでなく、九州の美しい田舎の風景を見てほしいという思いが強くなりました。農作業など、昔ながらの手しごとを体験する国内ツアーも構想中です」。日本と世界の架け橋となるために、安達さんの挑戦はまだまだ続きます。

（取材年月：2021年10月）

旅行業と留学支援のノウハウを礎に、世界を見据える学生たちへ学びの機会を創出

オンライン上で英語での文化・言語交流ができるエデュケーション事業をスタート

新規事業立ち上げは「制約の多い今の大学生に学びの機会を作りたい」という思いから

「地域活性化」をキーワードに、オンラインの学び充実と国内外ツアーの企画力強化を図る

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