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伝統的な和菓子から洋風菓子まで、アイデア豊かなおいしさで「お福分け」を

地域ならではの味を追求するお菓子のプロ

田中好治

田中好治 たなかこうじ
田中好治 たなかこうじ

#chapter1

誕生から約50年を迎えた銘菓「博多ぶらぶら」は博多っ子おなじみの味

 「おいしいものをみんなで分かち合うことを『お福分け』と言います。当方はお菓子づくりを通して皆さまに幸せなひとときをお届けいたします」

 そう話すのは、福岡県古賀市で博多菓匠「左衛門」を営む、3代目代表の田中好治さん。博多土産として約50年の歴史を誇る銘菓から、洋風テイストを取り入れた和菓子、地元の企業や学生らとコラボした商品まで幅広く手掛け、バラエティーに富んだ味で地域を元気にしています。

 左衛門の看板商品「博多ぶらぶら」は、上質なあんこを柔らかい求肥でくるんだ餅菓子。1975年に山陽新幹線博多駅が開業するのに先駆け、土産物として発売されました。

 「『ぶらぶら』という名称は、博多の街を歩いて観光を楽しんでいただき、思い出と一緒にお菓子を持ち帰ってほしいという思いで名付けられました。パッケージにはオリジナルキャラクターが描かれているのですが、これは福岡のお祭り『博多どんたく』の笠鉾(かさぼこ)と、当時代表を務めていた私の父の顔がモデルになっています」

 「博多ぶらぶら」は1977年に全国菓子大博覧会で内閣総理大臣賞を受賞。八の字の眉毛でゆるい表情のキャラクターが歌って踊るユニークなテレビCMも話題を呼び、博多っ子にとってなじみ深い一品となっています。

 「当店では、『博多ぶらぶら』と地域の特産品を組み合わせた季節商品も展開しています。初夏には、お茶の産地・八女市の玉露を使用した抹茶味、秋は南九州産のサツマイモを用いた紫芋味、冬は福岡県が育成したイチゴのあまおう味と、四季折々の味覚をご賞味いただけます」

#chapter2

品質へのこだわりを守りながら「博多好いと~パイ」など新商品を開発

 「こだわりは厳選した素材を用いること。特にあんこは北海道産の小豆のみを使用し、お客さまから『風味が良い』と褒めていただくことが多いです」と田中さん。味のバランスも重視し、「博多ぶらぶら」に使うあんこには塩を加え、ほんのりとした塩気をプラス。絶妙な甘みに仕上げています。

 同店は、浪曲師だった田中さんの祖父が興行で全国を回る中で富山の温泉まんじゅうにヒントを得て1929年に創業。菓子に囲まれて育った田中さんは幼少期から「お菓子屋になりたい」と考え、家業を手伝ってきました。

 「接客をしたり、北海道の催事に1人で赴いて販売したこともあります。早いうちにいろいろな経験をさせてもらい、商品や販売のノウハウを身に付けることができました」

 都内の会計専門学校を卒業後、銀座の和菓子店で修業し、百貨店の商品事業本部を経て1989年にUターン。「祖父の代から大切にしてきた品質を守りつつ、時代に合ったものも提供したい」と最初に開発したのが、くるみあんをバター香るパイで包んだ「博多好いと~パイ」。和と洋が調和した品となっています。

 「『好いとう』は博多弁で『好きだ』という意味です。福岡に帰郷する際に地元の海が見えた瞬間、『ああ博多に戻ってきたな。やっぱり博多が好いとう』と感じた熱い思いをネーミングに込めました」

 ほかにもチョコレートクリームを入れた丸形のソフトクッキー「博多のへそ」などアイデア豊かな商品を生み出し、伝統に新風を吹き込んでいます。

田中好治 たなかこうじ

#chapter3

菓子で地域活性化や課題解決に尽力。日本の伝統を残すため若者にもアピール

 「当方はお菓子を通じて地域の活性化にも力を入れています。地元の酒蔵の純米大吟醸を生地に加え、あまおうの果汁や果肉をゼリー状にしたジュレとクリームチーズを入れた生大福を時期限定で販売しています。地元ラジオ局との企画では、はちみつバターなど新しい味わいの博多ぶらぶらやどら焼きを考案しました」

 被災地の支援や地域の課題解決にも取り組む田中さん。東日本大震災の復興支援として東北名産のずんだを使用した「博多ぶらぶら」を作り、収益を寄付しました。また全国で増加が問題となっている竹林の対策として、タケノコを使った新商品も検討しています。

 日本の伝統の味を後世に残すため、若者に和菓子の魅力を伝える活動にも注力。地元の高校生と、「好いと~パイ」をベースに、あんにさつまいもを用いた「好いも~パイ」を開発したり、近隣で毎年開催される野外音楽フェスにブースを出展したりしています。

 SNSを積極的に活用し、インスタグラムなどを通じて新商品やイベントの情報を発信。「博多ぶらぶら」のキャラクターをモチーフにしたグッズも発売し、菓子の枠を超えて世界を広げています。

 「お菓子は、いただいたり人に分けてあげたりすることで幸せを共有できるツールです。お菓子を囲むと自然にコミュニケーションが生まれるように、人と人をつなぐ存在でもあります。お菓子で育ってきた自分だからこそ、お菓子で貢献したいですね。これからも皆さまのためにおいしい商品を届けていきます」

(取材年月:2024年11月)

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田中好治

地域ならではの味を追求するお菓子のプロ

田中好治プロ

菓子職人

有限会社左衛門

誕生から50年を迎えた餅菓子「博多ぶらぶら」は、博多土産として定番の商品です。和菓子だけでなく洋風の菓子や地元の特産品を使ったもの、酒蔵や高校生とコラボした商品など、地域ならではの味を追求しています。

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