賃貸住宅用から大ホールまで対応可能な防音工事のプロ藤井裕

賃貸住宅用から大ホールまで対応可能な防音工事のプロ

藤井裕

楽器に合わせた音響環境を整え、賃貸でも設置できる防音ユニットを開発

　「『お隣に迷惑をかけず楽器を練習したい』『自宅で思う存分、音を鳴らしたい』というみなさんのお力になります」と語るのは、福岡県北九州市の「otokura」代表の藤井裕さん。「さうんどるーぷ」という屋号を掲げ、全国で防音工事を請け負っています。

　「音楽は好きだけど、演奏できる場所がないから辞めてしまったという人は大勢いて、あまりにももったいない。生涯にわたり続けてもらえるよう、できるだけ安価に、かつ高いクオリティーを備えた設備をお届けしています」

　藤井さんは二級建築士の資格を保有し、2006年の創業以来、住宅リフォームなどを手掛け、住まいの構造に精通。さらには学生時代からトロンボーンを吹き、現在は楽団を設立して指揮者としても活動。

　設計・施工に関する専門性と豊富な音楽経験をもとに、ピアノやドラム、ギター、バイオリン、トランペット、サックスなど、各種楽器に合わせて音響環境をプランニングしています。

　「音をどのように響かせたいのかは、それぞれ異なりますので、お客さまと綿密な打ち合わせを重ねた上でご提案しています。当社の職人は全員が楽器をたしなんでいますから、奏者の方の感覚的なニーズもくみ取り、妥協のない空間に仕上げます」

　バンドのセッション用に車庫を改装したり、個人のレッスン用にクローゼットを改修したり、数多くの案件に対応。持ち家のほか、賃貸マンションなどにも対応しています。「当方ではオリジナルの防音ユニットを開発しています。1畳タイプから用意していますので、スペースに合わせて設置します」

友人からの相談をきっかけに防音工事を手掛ける会社を設立することに

　1974年、中間市で生まれた藤井さん。中学2年生のときに吹奏楽部に入り、トロンボーンに出会います。高校でも部活に励み音楽大学への進学を希望しますが、家庭の事情で断念。住設機器の商社に就職します。その後、リフォームを中心に手掛ける建設会社に入社し、二級建築士を取得しました。

　「ある時、高校時代の友人から『練習する場所がない』と相談を受けました。当時はまだ知見はなかったのですが、防音室の導入をすすめたところ、友人は『コストがかかるから無理だ』と言うのです。調べてみると確かに高い。そこで、材料費だけもらって私が作ることにしたのです」

　無事に完成し、その出来栄えに友人は大満足。藤井さん自身も、利益を考えても相場よりも安価に実現できるという自信を得られました。

　「ずっと音楽に携わる仕事がしたかったこともあり、会社を辞めて独立することを決めました」
　
　以来、個人宅から大規模な会場までさまざまな現場に赴いてきた藤井さん。「いまだに引き渡しの瞬間は緊張しますが、現在まで音漏れの苦情はありません」と胸を張ります。

　特に印象に残っているのは、北九州市に住む70歳の女性からのオファーだとか。「10階建てマンションを新設するにあたり、3階を300人収容可能なプライベートホールに、4階をレコーディングスタジオにしたいというお話でした。ホールを持つことが長年の夢だったと聞き、全力でご要望にお応えしたところ、とても喜んでもらい、感謝状までいただきました」

新潟や愛知、佐賀、沖縄に事業所を展開し、貸しスタジオも順次スタート

　藤井さんのもとでは、北九州市の本社に加え、新潟県新潟市、愛知県安城市、佐賀県鳥栖市、沖縄県那覇市と、北から南まで国内各地で事業を展開しています。「2023年10月10日にオープンした鳥栖店は、約10畳の広さを持つショールームをスタジオとして貸し出しています。基本的に、アンプを用いないアコースティックが対象で、お一人から1時間単位でご利用いただけ、イスや譜面台もご用意しています」

　今後は、拠点を構える地域に貸しスタジオを順次開設していく方針です。「私には、音大を出たものの音楽から遠ざかっている友人が大勢います。宝の持ち腐れですので、スタジオで教室を開いて、彼らに講師をしてもらおうと考えています」

　また、防音室を完備した物件を自ら建設し、賃貸業にも乗り出したいと意欲を見せます。「私どもは相場より安く防音設備をご提供している自負があるとはいえ、誰もが簡単に手が出せるわけではありません。あらかじめ対策を施した部屋を借りることができれば、プレーヤーの方は自分で遮音カーテンや吸音シートを買う必要がなく、費用負担を抑えることができます」

　周囲に気兼ねすることなく、のびのびと音を奏でてほしいと日々奔走する藤井さん。音楽の魅力について「演奏している自分が楽しいだけではなく、聴きにいらした方を笑顔にできること」と話します。

　「一人でも多くの方が音楽に親しめる世の中にするため、これからも自分にできることを精いっぱい頑張ります」

（取材年月：2023年9月）

「さうんどるーぷ」の屋号を掲げ、全国で防音工事に対応

楽器に合わせた音響環境を整え、賃貸でも設置できる防音ユニットを開発

友人からの相談をきっかけに防音工事を手掛ける会社を設立することに

新潟や愛知、佐賀、沖縄に事業所を展開し、貸しスタジオも順次スタート

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