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オリジナルブランドの「濃厚みるくがき」をはじめ、岩ガキやシングルシードなど多彩な品を展開

川上から川下まで、一貫対応で鮮度と品質を守るカキ流通のプロ

上野慎一郎

上野慎一郎 うえのしんいちろう

#chapter1

自社で養殖から梱包、配送まで一貫対応。検査により品質や安全性をコントロール

 「口に含んだとたん潮の香りが満ち、かんだ瞬間にまろやかな甘みが広がる当社のオリジナルブランド『濃厚みるくがき』をぜひご賞味ください」と話すのは、福岡県糸島市の「アクアグローバルフーズ」の代表・上野慎一郎さん。

 自家養殖により、年間で約100トンのカキを生産。冬に最盛期を迎える濃厚でうまみ豊かな真ガキ「濃厚みるくがき」や、夏が旬で大粒かつクリーミーな岩ガキ「糸島サウンド」などを手掛けています。さらにアメリカやカナダ、オーストラリアといった外国産のカキを直接輸入し、飲食店や市場へ卸しています。

 「糸島の海は、日本三百名山および九州百名山の一つ、脊振山の山々から流れ出る天然のミネラルを栄養にしたプランクトンが豊富で、カキの成長に適した環境が整っています。自然の恵みを受けて育つカキは身がぎっしりと詰まり、豊潤なうまみが楽しめます」

 上野さんは、漁場の水質検査や商品の洗浄・滅菌処理、梱包、配送まで一貫して対応。川上から川下まで自社で完結する体制を築いています。

 「カキは非常にデリケートです。自分たちで流通まで管理することで品質と安全性をコントロールし、手頃な価格で提供したいと考えています」

 養殖方法にもこだわり、「セミシングルシード」という手法を採用。ロープにカキの種をいくつも連ね、房状にして海中につるす「カルチ式」と、1粒ずつ育てる「シングルシード」を掛け合わせた「いいとこ取り」で、房の状態から一度水揚げしてばらし、再び養生します。

 「効率と品質の両立を追求し、おいしいカキづくりに取り組んでいます。通販サイトでも販売し、全国の皆さまに新鮮な品をお届けします」

#chapter2

オーストラリアへ留学して仕入れルートを確立し、養殖にもチャレンジ

上野さんは1983年に現在の糸島市で生まれました。九州産業大学を卒業後、北九州に本社を構えるインテリア関連の商社に就職します

 「入社から半年後には東京勤務となり、約4年間、営業や商品開発、事務まで幅広く経験しました。朝7時に出社し、深夜まで働く目まぐるしい日々でしたが、毎日が充実していて、学び多き時間でしたね」

 ある日、友人と都内のオイスターバーを訪れた上野さん。実家がカキの養殖業を手掛けている話で同僚と盛り上がり、カキの卸売りを始めようと一念発起します。会社勤めの傍ら、2年かけて市場調査や営業活動を行い、2010年に初の大口契約を締結。折しも本社への異動を打診されますが、取引が決定したのを機に退職します。

 「2011年に個人事業主として独立しました。当初は冬に出回る真ガキを扱っていたため、夏場の商品を求めて季節が反対のオーストラリアへ留学しました。4カ月間、語学学校へ通って英語力を養い、現地をくまなく回って仕入れルートを確立しました」

 帰国後、2012年に「アクアグローバルフーズ」を設立。2013年には自社で岩ガキの養殖にもチャレンジします。

 「実家に戻り、父の仕事を手伝いながら自分の販路を開拓していきました。意見の衝突もありましたが、次第に両親も理解を示してくれました。一生懸命に事業を営む姿を見て最終的には応援してくれるようになり、とても感謝しています」

#chapter3

糸島ではカキ小屋「みるくがき豊久丸」、東京でもオイスターバーを展開

 上野さんのもとでは、10月下旬から3月末にかけてカキ小屋の「みるくがき豊久丸」もオープン。手塩にかけた「濃厚みるくがき」をはじめ、エビやイカ、ホタテにサザエ、アワビなどの海の幸や、カキめし、カキのすまし汁が付いた各種コースを用意しています。

 「地元のワイナリーさんがつくる、白やロゼ、スパークリングといったワインとの相性も抜群です。炭火でぬくもりながら、多彩なシーフードを堪能していただきたいですね」

 ガーリックバターやみそ焼き、フライ、パスタやカレー、丼などカキを用いたサイドメニューも充実。家族連れなど、毎年数多くの人が足を運びます。

 「東京都渋谷区の『フィッシュハウス オイスターバー』から事業譲渡の話を受け、2025年の夏からオイスターバーも経営しています。創業当初から15年以上の付き合いがあり、味やシェフの人柄にも信頼を寄せていたので、お店を引き継ぐことにしました」

 現在は恵比寿駅周辺に2店舗を運営。今後は3店、4店と店舗展開を見据えています。子会社化して以降、看板はそのままにメニューを一新。内装にも少しずつ手を加えながらリニューアルを進めています。

 「肉厚で味わい深い粒を実現するため、個別に育成するシングルシードによる養殖にも力を入れていきたいと思っています。現状、同方式による年間生産量は約10万個ですが、漁場を確保して50万個まで増やす計画です。質、量ともに安定した品をかなえ、皆さまに喜んでもらうことが目標です」

(取材年月:2025年9月)

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上野慎一郎

川上から川下まで、一貫対応で鮮度と品質を守るカキ流通のプロ

上野慎一郎プロ

カキ養殖業

株式会社アクアグローバルフーズ

自社で養殖から販売まで一貫して行う体制を構築。海から食卓までの全工程を丁寧に管理し、徹底した衛生・品質管理のもとで育まれた、うまみの凝縮したカキを、手頃な価格で安定的に届けている。

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