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車の部品を丁寧に扱い加工することで、リサイクルできる商品として次につなぐ

できるだけ再利用できるように取り外す自動車解体のプロ

頼谷尚之

頼谷尚之 よりやひさゆき

#chapter1

解体作業は車種や装備により異なるため、車に合わせた手順で適切に作業

 自動車を廃棄する際は、自動車リサイクル法に基づき、適正に解体をしてリサイクルすることが義務付けられています。所有者は自治体に登録された引き取り業者に車を渡し、専門業者がフロン類を回収した後、解体業者によりリサイクル可能な部品が取り出されます。残った部分は破砕業者がシュレッダー処理をして、鉄・アルミ・銅などに分別し、できるだけ資源を無駄にしないようにしています。

 「解体はどんな車でも同じと思うかもしれませんが、車種や装備により工程が全く異なります。初めての車は、サービスマニュアルを見ながらネジの位置や分解の流れなどを確認し、順序を間違えないよう慎重に取り組んでいます」

 そう語るのは、自動車の解体や部品販売を手がける「ヨリヤ」の代表代行・頼谷尚之さん。日本車の部品は質が安定しているため評価が高く、状態がよければ国内外で需要があると説明します。

 「アフリカや東南アジアの暑い地域でもエアコンがついていない車が多く、エアコンのファンやコンデンサーは特に人気があります。しかし、適切に扱わなければ再び活用することができなくなり、ゴミとして処分されてしまいます。長く使い続けてもらうためにも、何事も正しく丁寧に行うことを心がけています」

 頼谷さんのこだわりは、パーツの取り外しだけではなく、再利用できるように加工することにあります。例えば、日本車のパーツを海外に輸出する時は、現地でスムーズに取り付けができるように、左ハンドルの自動車に合うように整備しています。

#chapter2

職人気質でとことん追求。周囲から車について頼られることがやりがい

 頼谷さんは高校を卒業後、父親が設立した「ヨリヤ」の前身となる会社で働き始めました。バイクが好きでレースの出場経験もありますが、車に関するノウハウはゼロに等しく右も左もわからない状態からのスタート。作業書を片手に現場に臨み、疑問点や不明点は父親に聞きながら技術を身につけてきました。

 廃車の解体を手がけて25年以上たちますが、いまだに新しい発見の連続。部品を扱う店に行っても知らない部品があり「車は知識の塊」と表現します。

 「メーカーによって部品が違いますし、こんな部品を使い、こんな取り付け方をするのかと驚くことばかりです。これから電気自動車が普及すると、解体方法の講習などを受ける必要も出てくるでしょうね」

 自身について「何でもとことん突き詰める職人気質」と苦笑しますが、解体業務は一歩間違えるとけがをする恐れもあるため、常に学んで情報を得ることが重要だと言います。

 「例えばハイブリッド車は、バッテリーの電気を完全に遮断しないと残った電気で感電することがあります。慣れたからと自己流でやるのは非常に危ないため、従業員にはいつも手順を守るようにと伝えています」

 車種を超え豊富な知見を有する頼谷さんは、知人から相談されることも。「チューニングについて教えてほしいと連絡があったり、調整をお願いされたりするとうれしいですね」。周囲から頼りにされることが、仕事のやりがいや自信につながっているそうです。

#chapter3

部品を再活用し、廃棄物を減らすことで持続可能な社会へ

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、自動車の解体業界にも大きな影響を与えています。

 「部品を買い付ける海外のバイヤーが来日できませんし、部品を輸送する船の減便により運賃が上昇し、輸出ができにくい状況になっています。また半導体の不足や工場休業により新車の納品が遅れ、国内の中古車市場そのものが鈍化しています」

 日本車はだいたい10〜15年で乗り換えられます。日本では「古いから」と手放された車が、他の国でさらに10年以上40万キロ、50万キロと走行することを考えると「まだ乗れる車を廃車にするのはもったいない」と思うこともあります。しかし、廃車数が減少し、部品の輸出もままならない現状では、かつてのような活気ある市場となることを願わずにはいられません。

 「今は、自分の腕を磨く時と言い聞かせています。お客さまとのお付き合いを大切にして、ご依頼に誠実に応えていきたいですね」

 社会情勢が大きく変化する中、父親から受け継いだ会社のあり方を現代に合わせて見直す必要性も感じています。
 「子育てや介護などに専念できるようみんなでサポートしたり、年齢や障害の有無に関わらずスキルがある人材を採用したり、従業員が働きやすい職場づくりにも力を入れていくつもりです」

 自動車を所有する誰もが、自らの責任として「地球や人に優しくありたい」と廃棄物の減少に地道に取り組む業者の存在を知り、選択することが、持続可能な社会に向けた貢献の一つとなりそうです。

(取材年月:2022年1月)

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頼谷尚之

できるだけ再利用できるように取り外す自動車解体のプロ

頼谷尚之プロ

自動車解体

有限会社ヨリヤ

廃車の解体作業において、基準に従い適正な解体をするとともに、再利用しやすいようにパーツを加工するのが特徴。使えるパーツとして取り外すことで、廃棄物削減や資源の有効利用に貢献しています。

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