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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

視点を変えることで気付く事

2024年5月9日

テーマ:新橋事務所日記

コラムカテゴリ:ビジネス


【はじめに】

 今日はとれたてほやほやの出来事から感じたことを
テーマにして紹介していきたいと思います。

 炎上防止のために先に言っておきますが、
前半部は間違いなく私の自慢話、です。

 将を射んとすれば・・・的な話です。

【旧友からの相談は】

 先日高校以来の友人(他校の生徒ですが)から
久々に飲まないかとお誘いを受けて夜の街に繰り出しました。

 積もる話も一段落した際に、「実は…」と
相談というか悩みを打ち明けられました。

 病床にある義理の父が余命数日と言われ、
葬儀全般の準備を始めたところ、嫁(長女であり長子)から
喪主を懇願されたとのことでした。

 嫁さんは私も知っている方でいわゆる昭和の女性の典型?で
常に旦那の一歩後ろにいるような感じで人前に出るのが苦手という
奥ゆかしい女性でした。

 当然友人は喪主は血縁関係からも嫁がやるべきと
何度か諭したそうです。

 ですが結婚以来初めてと言っていいほどの
頑強な抵抗を示したそうです。

 最後は根負けした友人が喪主を務めることで決着したとのことです。

ですが、最大の課題があったのです。
「実は俺、義父との思い出が何にもないんだよ~」
「転勤族で里帰りの時も何かと理由をつけて嫁と子供だけ帰省させてたし~」
「俺と違って酒飲まない人だったし、趣味も仕事って感じだった。」

 喪主の仕事の最大のものは参列者への挨拶なのは言うまでもないことです。
そこで話す事がない、では参列者以上に嫁と子供からどう思われるかが怖い!

 「おひとり様のお前に聞くのもなんだけど、どうすりゃいいだろう…」

 自業自得だ、悩め悩め~というのが私の偽らざる思いでした。

【おひとり様からのアドバイス】

 とはいえ、腐れ縁の旧友です。
ここで恩を売っておけば今後の繋がりも出てくるかものと思い直しました。

 いろいろと聞き出しても
確かにこれといったエピソードは皆無でした。
とってつけたような想いで話では心がこもりませんし、
参列者は別にしても家族から見れば「嘘八百」はすぐに見破られます。

 で、あるならば
挨拶で採り上げる対象を変えることで乗り切る方法を
考えればいいだけのことです。

 ターゲットを義父の娘、自分の嫁さんの事を語れとアドバイスしました。

【将を射んとすれば】

 以下、友人に伝えた話を簡単にまとめました。
「故人の思い出を話す前に、嫁についてお話しさせて下さい。」
という切り出しから出会いから結婚、夫唱婦随での結婚生活や
子育てや自身が大病を患った際の献身的な看護の思い出を語らせました。

 そして挨拶の最後の段階で
「このような私にとって得難い伴侶を育ててくれた義父には感謝しかありません。」
「私も義父のような子育てを目指して頑張っていますが、足元にも及びません。」
「義父からの最高の贈り物が、この妻でした、ありがとうございます。」

 といった内容の挨拶を作成して友人に全文暗記を命じて特訓を施しました。

 ほどなくして義父は亡くなり、特訓した喪主挨拶を披露したそうです。
その結果は、奥さんも子供も号泣、参列者の中からも嗚咽が聞こえ
変な言い方ですが、喪主挨拶は大成功で大いに株を上げたそうです。

 後日 御礼の宴を開いてくれた際には
「まさか独身のお前からあんな印象的な挨拶を教えてもらうなんて思わなかった。」
「話しているうちに俺迄泣きそうになってしまったよ。」
「それにしても、なんでああいう挨拶を思い付けたんだ?」

 とこちらが気恥ずかしくなるほどの言葉の連射でした。
副次的効果でしょうが、家庭内での評価も爆上がりしたそうです。
無論、本人が自分で考えた言葉という「虚報」が前提ですが…

 疎遠な義父の事を不完全な情報で話すよりは
長年連れ添ってきた嫁(娘)を褒めることで間接的に義父を褒める。

 まさに将を射んとすればまず馬を射よ、の応用でした。

 当然ながら友人とは言え、れっきとした業務相談です、
しっかり割増の相談料を頂戴しました!

【視点を変えられることが大切】

 如何でしたでしょうか?
私の試みは全ての方に感動と満足を与え完結しました。
~これで私の自慢話は終了です、失礼しました!

 この様な事例はビジネス上でも人間関係でも数多くあるはずです。

 取引先から次回からリベート率をアップして欲しいという要望が来た。
ライバル社は既にアップの要望に応える旨の連絡を貰っている。
このままでは取引先のトップシェアはライバル社になるかも?

 こういう事態はサラリーマン時代に何度も経験しました。
最も安易な選択は相手の要望をそのまま上司に伝えてあとは宜しく、
といった単なる使いっ走り、で問題から逃避するケースです。

 次は何とかリベート率のアップが出来ないか、一人で悩む、
または満額回答ではなくとも要求を呑む形での解決を図るケースです。

 これはトップシェアの維持にはリベート率の攻防しかない、
といった一点だけで解決を図ろうとしているのです。

 ですが、冷静にライバル社との実績を比較すれば

・年間の取引額は自社が頭一つ抜け出ている。
・販売店からの評判はさらに大きな差がある
 
 より具体的に現場の評価を挙げてみると

・当社製品は接客して説明しなくてもユーザーが指名買いしている
・店長や担当者以外のスタッフにも声をかけて挨拶をしてくれる
・担当セールスは毎週必ず来店して今のトレンドや業界動向を
 分かりやすく伝えてくれる

 そしてライバル社に対しては
・ここの製品を1台売る間に当社製品なら2台は売れている
・ここの製品は時間をかけて説明しないと売れない
・所詮売り場の担当者には何のメリットもない

 という声が聞き取りの結果、殆どの店舗から挙がっていたのです。
この事実を取引先の責任者に伝え、責任者も自ら調査した結果、
事実に相違ないことを確認したのです。

 結果として、リベート率は現状のまま
取引額は前年アップの契約を結ぶことになったのです。

 仕入れの権限を持つ交渉相手ではなく、
現場のスタッフを味方につけて交渉材料に切替えたのです。

 いくら本部から見れば魅力的な条件提示であっても
肝心の売りの現場から賛意が得られなければ不良在庫が増すだけです。

 無論、そこには定期的な訪問や貴重な情報の提供やスタッフとの
肩ひじ張らない交流を続けた担当セールスの力量あってのことです。

 加えて自社製品の優秀さ、市場での評価を常にアピールすることで
自信を持って販売スタッフが推奨できる環境作りもあってのことでした。

 またまた身近な事例に戻りますが、
結婚の承諾を得る際には両親のどちらがイニシアティブを握っているか?
事前に結婚予定の娘から聞き出しておけば説得の優先順位は明らかでしょう。

 目のまえに高い壁、深い谷があった場合、
正面突破を図るだけではなく、他のルートを探し
単独での突破以外の方策を考える事。

 諺にもあるように、「傍目八目」は一面の真実です。
最初の話題に戻りますと、独身の私だから、義父ではなく娘である嫁を
褒めることで間接的に義父を褒めるという視点が持てたのでしょう。

 近すぎると、却って見えているものが見てなくなっている。
こういった事実を改めて強く認識出来た出来事でした。


 

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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