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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

100%伝えることの難しさ

2024年4月25日

テーマ:新橋事務所日記

コラムカテゴリ:ビジネス


【はじめに】

 「私は間違いなく〇と言いました!」
「いや、私は△と思って返事をしたんです!」
「これはこうとしか解釈出来ないでしょう?」
「こう解釈しても意味が通じるじゃないですか?」 
など等…

 言い間違いを除いても
相手に伝える際の言葉選びひとつで
内容の解釈が一つではないケース、
少なくはありません。
 
 要はお互いの最後の詰めというべき
内容の突合せや言葉の意味の確認を怠ったからで
実際に双方を挟んで仲介役として話を聞くと
この言い方で双方が都合よく解釈したんだろうといった
ポイントが第三者の立場だとよく分かります。

 変な期待を持たせない、
 都合のいい解釈の余地を与えない
 
 私自身も相談者へ何かしらのアドバイスや
注意事項を伝えた際には必ず確認するようにしています。

「何か不明な点はありませんか?」
「ご質問があればどうぞ」
と促して反応があればいいのですが、
要注意なのは、
「よくわかりました」
「質問は何もありません」
で片付けられるケースです。

 本当に言葉通りならいいのですが、
中には自分の解釈で正しいと誤解(曲解)したまま
満足してしまっているケースだと要注意です。

 今日はこのような話し方、伝え方について紹介したいと思います。

【言葉だけで伝えることの難しさ】

 いきなり横道にそれますが、
以前のCMで「それ、先に言ってよ~」というフレーズがありました。
よくある行き違いや内容の理解不十分の原因の一つが、これです。

~営業職に就いて2年目ならこの程度のマナーは知っているだろう。」
~いちいち初級コースから説明しなくても大丈夫だろう。

 という思い込みや勝手な相手のスキルの値踏みから
基礎ながら重要な要件を省略して業務を引き継いでしまい、
その結果、先方に多大な迷惑をかけてしまった!

 一つの事例ですが、
ある営業マンが得意先と現地集合の約束をして当日を迎えたものの
先方が大遅刻をしてしまったというケースがありました。

 この待ち合わせ場所なら誰もが知っている名所の隣だからと
詳しい交通機関の経路の説明を省いて、待ち合わせ場所だけを
連絡しただけでした。

 ですが先方の担当者がまだ地理不案内に加え
名うての方向音痴だったのです。

 実はこの点を前任者はあまり重視せずに
後任の彼には伝えていなかったのです。

 先方の担当者も担当者で、
こんなことは恥ずかしくて聞けない、
何とかなるだろうと新担当者には伝えていませんでした。

 ~念のため、経路説明をしていれば
 ~前任者からもっと詳しい引継ぎを受けていれば

 ~地理不案内を告げて経路を聞いていれば

 お互いが「何とかなるだろう」と思った結果でした。

 このケースはお互いの苦笑いで済んだものでしたが
中には前任者が得意先の部長の食の嗜好の注意点を
伝え忘れた為に、後任者が接待で用意した料理が
全く受け付けられない食材ばかりで、大失敗!

その後しばらくはかなり険悪な関係に
陥ったという実害の出た事例もあるのです。



 ビジネス面だけでなく
レジャーの場面でも似たようなケースが少なくありません。

 例えばよくあるケースにゴルフ名人の会社の上司が
ゴルフ初心者の部下の社員にレッスンをする際の
やりとりに見受けられます。

 詳細は省きますが、
こうやってスイングしなさいと指導した後の
新米君のスイングを見ていきなり頭が動いている、
目が球から離れた、等の指摘を口にします。

 ですが新米君にすれば
頭や目の事なんて「聞いてないよ~」なのです。

 ベテランからすれば
目を最後まで話さないのは当たり前の事、
頭が動いたらまともなスイングになる訳がないだろう
と思うのですが、実際には伝えてはいません。

 中には習うより慣れろ、俺のフォームを見て学べ!
などの昭和そのものの指導に徹する方もいましたが、
これでは指導にはなりません。

 スキーの場合も同様です。

~なんで体を傾けて体重移動するだけでカーブ出来るのに
 彼はそれが、そんなことすら出来なんだろう?

 スキーにしても自転車にしても
出来るようになれば、何で今まで出来なかったんだろうと
不思議に思うことがありますが、出来ないときには
なんであんなに簡単に出来るんだろうと思っています。

 ゴルフにおける正しいスイング
 スキーでの体重移動
 自転車でのバランス感覚

 これらは言葉だけの説明ですぐに出来るものではありません。
言葉で出来るのは、出来るための心構えでを伝えることです。

 何を、どうすればいいのか? 
 これを意識しないと決してうまくいかない。

 この情報が不十分なまま実践させることは
それこそ一歩前進二歩後退の繰り返しとなる恐れがあります。

 あげくは初心者側はその後我流のやり方に奔ったり
間違った解釈のまま重大なミスを招いてしまうこともあるのです。

 双方が不本意な結果を招かない為には何に注意すべきでしょうか?

【無意識に正しい選択が出来るのが経験者?】

 伝えるべき内容に関して
一定の経験や知識を有する相手とのやり取りでは
既にお互い同レベルの知識ありきの前提があります。
 
 その場合には無意識に共有部分についての確認は省き
その先の段階の話から始めても何の問題も生じません。

 ここで陥り易いのがこの前提を無意識に初心者にも
適用してしまう傾向が出てくることです。

 特に自分が得意な分野や自信のある内容の場合、
案外多くの方に無意識に話が前のめりがちになり、
細部を省略して結論を急ぐいう傾向が見受けられます。

 却ってあまり詳しくない事項や今一つ自信がない
といった項目についてはけっこう慎重に話を進めるのです。

 案外本人は気付いていないケースがあるので
話し方やその内容についてチェックすることが必要です。

 いつもの癖で、レベル3からの話を始めても
相手はレベル1の初心者であれば正しい認識で
話を聞き取れるでしょうか?

 経験者同士であれば「阿吽の呼吸」や「行間を読む」
といった技が通用します。

 ですが初心者に対しては一からでもなくゼロから
教える気持ちでのやりとりが求められるのです。

 断じて
「この程度は知っているだろう。」
「これは話さずとも前後の関係でわかるはず。」
といった一段飛ばし、二段飛ばしの話はしないことです。

 いわゆる「教え上手」と言われる方は
相手に合わせて話の内容をより分かりやすく、
間違えようのない言葉に変換して伝えられることが出来るのです。

 専門知識の羅列で説明出来ても、
一般の方に分かるような言葉に変換出来ないのであれば
決して教え上手、伝え上手とは言えないのです。 

 先のレジャー面に関しては笑い話で済まされても
商取引の場面や私のような相談業務の場合には
それこそ致命傷になるリスクを生じさせ兼ねないのです。

【終わりに~業務上の経験から】

 私の主な業務の一つに、セミナー開催があります。
テーマとしては最近は「終活問題」ばかりとなっていますが
これも個々の事情でやるべき項目は変わってきますし、
優先順位に関しても大きく変動する場合があります。

 なので最近は上限3名迄の個別セミナーが主となっています。
3名とは言え殆どが家族3人での受講ですから実質は1組です。

 これだとその都度の解釈の確認が容易ですし、
先方からも質問がし易いのです。

 これが10人単位の中規模以上のセミナーとなると
全員の理解度や解釈の確認は出来なくなってきます。

 法律の条文であれば解釈を間違えるリスクは少ないですが
応用の範囲やその適用の可否などについては場合によっては
自分の都合に合うよう解釈し、納得してしまうリスクがあります。
そしてそのまま質問も確認もせずに帰宅してしまえば
間違った知識を修得しただけの結果になり兼ねません!

 正直な話、セミナー開催の収入の面では
人数が多ければそれだけ収入が増えるのは当たり前のことです。

 ですが、仕事の満足度や安心感という面では
少数の個別セミナーの方が確実に上回ります。

 100人に対し確実に正確に解釈の相違が生じないような
情報提供が出来るようになれればこういった悩みは解消するのですが、
今の私にとっては、なかなかに難しい問題です。

 レジャーでも商取引でも相談業務でも
階段はしっかり一段づつ確実に歩を進めることが
結局は失敗を最小限にする最大の方法だと私は考えます。
 

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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