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コラム

Z世代の新入社員の定着率を上げるには

2022年10月3日

テーマ:新入社員

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 人材育成 研修企業研修

新しい雇用制度と人事部長

 今、Z世代など世代ごとの世代格差が生まれて来ております。この世代格差は、人事を担当する「人事部長」には、頭の痛いことです。終身雇用制が崩壊し、時代が求める「新しい雇用制度」を考えなければならなくなりました。
 新しい雇用制度は、国に頼るのではなく、自社で考え仕組みとして確立し、実行していかなければなりません。この新しい雇用制度を、如何に早く作り上げるかが、厳しい雇用環境の中で、安定した雇用に繋がる最大の力となります。
 今までの経験から言えることは、新人が就職先に求めるものは「明るい働き易い職場」です。この「扉」を開けるのが「人事部長」の役割です。
 しかし、往々にて「お前を雇ってやる」という威圧的な態度が見受けられます。この威圧的な態度が、雇用の妨げになり、雇用してからも退職者が増加する、大きな要因になっています。この面からの人事部長の意識改革も求められています。

パワハラは裸の王様

 「パワーハラスメント」が大きな社会問題にもなっています。職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。
 振り返れば28歳の時、地元の金融機関で、本店の預金・渉外・為替業務の統括管理をする係長をしていました。この頃は部下に対し、毎日がパワーハラスメントであったと反省しております。「何でこんな簡単なことができないのか?」「もっと頭を使え!」「仕事が遅い」などと、部下を傷つけるような言葉を吐いていました。その結果、部下からは日に日に信頼を無くしていきました。
 この時は課長を兼務する形での係長でしたので、若気の至りから、有頂天になって周りが全く見えない状態でした。正に自分を過信し自画自賛していたのです。そんな時、理事長から呼ばれました。理事長から言われた言葉が 『下裏君!君は今、裸の王様だよ』でした。しかし、当時の私はその意味が全く理解出来ませんでした。すると理事長が『仕事は一人で出来るものではない。皆の力を借りなければ出来ない。お前さんが一人でどれだけ頑張っても、一人は一人の仕事しか出来ない。人には其々出来ることと出来ないことがある。どんな仕事でも有難うと言い、ここをこうすれば、もっとよくなるのではないとアドバイスをするのだ。そうすれば、必ず部下は付いて来るから。』と言われました。
 上に立って物事を見ると遠くまで見えますが、その場は、足が震えるような崖っぷちであったり、余りの絶景に酔いしびれたりします。当時の私は余りの絶景に酔いしびれてしまいました。そして、理事長の教えで、その場が足が震えるような危険な場であったことを初めて知ったのです。この理事長の教えのお陰で、今日があると感謝しております。

Z世代への指導

 組織に於いても、係長・課長・部長・担当役員とそれぞれの段階で、部下を指導することが大切です。それを一人でも怠ると時には、取り返しのつかないことになります。これは人事部に限ったことではありません。
 「臨時特別給付金過剰支払の件」や「住民データ紛失の件」などは、其々の役職のチェックが甘かったことも大きな要因の一つです。
 若手社員に「理想の上司・先輩はどんな人ですか?」と質問しますと「丁重に仕事を教えてくれる人」と回答する人が、Z世代の6割を占めるというデータがあります。
 この若手社員の想いの背景には、現在上司である30代以上の方が、若手時代に教わった仕事の教わり方との、大きなギャップがあるのではないかと思います。
 今「背中で見せる時代」から「理論的に説明する時代」へと大きく変化して来ております。あなたは部下に仕事を教えるとき、「まぁ、とにかく一度やってみて!」と言ってしまうことはありませんか?この教え方をされた若手社員は「私はどうでもよい扱いをされてしまっている」と誤解してしまったり、「必要とされていないから、そういう教え方をするんだ」と思い込んでしまうなど、仕事への意欲が低下したり、会社には居場所がないと塞ぎ込んでしまうといったことがあります。
 この状態が続くことにより、若手社員が定着せず、人財流出に繋がり、組織の課題へと発展していきます。

Z世代のヤル気を継続させるには

 Z世代を含めた若手世代を、どうヤル気を持って定着させるのか?中々難しい課題ですが、それを乗り越えていかなければ、将来の発展は見込めません。
 新入社員が入社後に理想と現実のギャップを感じ、そこから会社に対する不信感が生まれ、辞めてしまうということが多々あります。社員の辞めた理由を収集、分析されたことはありますでしょうか?そこにはたくさんのカイゼンのヒントがあります。
 新入社員のヤル気を継続させるためには、組織内の問題から目を背けてはなりません。今回、そんな問題点を拾い出す手法についてお話したいと思います。人事部長はそれをどの様に実現出来るかについて検討していただければと思います。
 その方法の一つとして「社内の問題点の抽出」があります。最初にお話しすることは「皆さんで社内の問題点の抽出を行っていただきます。これを解消するために、仕組みとして作り上げていきます。結果的に働きやすい職場にするために問題点の抽出を行うのです。」と説明します。
 この問題点の抽出は、ポストイットを使用し無記名で行います。最初はこの問題点の抽出に抵抗を感じる人もみえますが、問題点が出され始めると、抵抗感は自然に消えていきます。
 出された問題点を方眼紙を使用して、参加者全員で添付し、「意識・組織・仕組み」に分類します。すると「仕組み」の問題点が9割を超えることに驚きの声が上がります。
 この作業を進める内に、参加者の眼の色が輝いてきます。それは「問題点が発生するのは、経営者や上司がしっかりとしていないから」と思っていたことが、「仕組み」が9割と分かり、「問題点は自分達で解決出来る」と自覚し、「ヤル気」に火が付いたのです。
 このように「ヤル気」とは、自らの役割に気づくことで、初めて本当の「ヤル気」が生まれて来るのです。
 問題点の抽出は、社員のヤル気に火を付けると共に、経営者をはじめ、幹部社員の大きな悩みの種であった問題点が解消される糸口となります。
 一つの例として「現場の求める人材が採用されない=採用面接が上層部のみで行われ、実際に働く現場の声が反映されない」という問題点は、どのお客様でも必ず出てきます。すると、これを解消するために「面接管理システム」を構築しようという事になります。
この「面接管理システム」では、まず配置される予定の担当課長と係長が面接を行います。この面接では「面接チェック表」を用いて行います。この面接に於いて、担当課長が採用か、不採用かを決めます。
 採用と決まれば、面接チェック表に採用依頼書を付けて部長に提出します。部長はそれを稟議し、再度面接を行うか否かを判断し、必要であれば改めて面接を行います。
 ここで一番大切なことは「自分達で採用した社員は、自分達で育てて行かなければならない」という責任感が生まれることです。この責任感が生まれることで、新入社員が一番望んでいた親切・丁寧な指導が出来る体制が整います。
 このように、問題点を抽出し、仕組みとして構築して行くことで、社内の風土は大きく変わり、退職者の減少にも繋がります。これこそ多くの人事部長が望む理想の姿です。

働きやすい職場と組織風土診断

 経営者層と社員が見落としがちなのが「組織風土の重要性です。今まで沢山のお客様の活性化に取り組み、「組織風土診断」を行って来ました。その結果を見て唖然とされる経営者の方もあります。「当社はこんな風土とは思ってもみなかった」など驚きの声が上がります。特に「経営者信頼」の点数を見て「馬鹿な!俺は社員からこんなに信頼されていなかったのか」など、顔がひきつり、放心状態になられる経営者の方も見えます。
 しかし、多くの社員からは「社長が知らなかっただけでこれが現実です。」という声も聞こえて来ます。知らないということは本当に恐ろしいことです。人事という面から、組織を統括管理していく人事部長には、この「組織風土」を診断し、現状を把握することは大変重要な業務の一つです。
 「組織風土診断」は、全社員が集まる機会を活用して全社員を対象に行います。その調査項目は「連絡・情報、業務管理、経営信頼、人間関係、業務意欲、職場満足、評価・福利厚生、教育研修」の8項目です。この結果の分析を行い、「組織風土診断結果報告書」として全員に配付します。
何故なら「組織風土診断」の結果は経営者層や幹部社員に限らず、一般社員にとっても新たな気付きや意識の共有を感じ、良い部分は自社を誇りに思えるきっかけになり、悪い部分は問題点を共有できた事で改善に進む原動力となるからです。
 「組織風土診断」を一年間隔など、定期的に行うことで社員の意識の変化と共に、業績の変化も見て取ることが出来ます。活性化研修に取り組んだ様々なお客様に対し、活性化研修開始時と1年後、2年後、3年後に、この「組織風土診断」を行いました。この組織風土診断の総合点が上がることで、業績も相関して上昇していました。
 組織風土の改善が、直接業績に影響を及ぼしたのではありませんが、組織風土とはそこに働く人達の、ヤル気を測る物差しにもなります。正に社員一人ひとりのヤル気が組織風土を良くし、業績向上に繋がったのです。
 ブラック企業のように業績の向上だけを求めても、決して企業風土は良くなることではなく、逆に組織の持続性にも大きな課題を残すことになります。

仕組みの見直しで風土を良くする

 この風土を改善するには、社員一人ひとりのヤル気と共に、「仕組みの見直し」を図り、働きやすい職場にしていかなければなりません。
 活性化に取り組んだ病院の一例ですが、この病院では看護師さんの定着率が悪く、いつも人材不足で、人事も担当する事務局長の悩みの種でした。それを引き起こしている大きな要因の一つが「医療ミスに対する上司の対応」でした。医療ミスが発生すると、原因究明より先に、ミスを犯した看護師さんへのパワハラに近い注意がありました。このことでミスを犯した看護師さんは萎縮してしまい、退職という事態にまで発展していました。
 それを解決するために「何故、医療ミスが発生したのか?」個人を責めるのではなく、仕組みの見直しをするようにしました。このことで、ミスを犯した看護師さんが責められるのではなく、仕組みとして見直されることで、再発防止に大きく貢献する仕組みが出来上がりました。
 このように働き易い「組織風土」の組織は、意識面に於いても好循環が生まれ、それが業績向上にも繋がっていきます。又新入社員が入り易い環境、社員が辞めにくい職場環境が整うことに繋がります。
 人事部長も経営層であるからには会社の業績に対して責任がありますが、それは人事面における人材の安定供給や無駄を省くリストラなどの直接的に業績に寄与することだけでなく「組織風土を良くする」というような間接的なこともその責任であるという事です。経験的に言えば、むしろ直接的な行動よりも業績に対する効果は大きいと考えます。
 改めて「自社の組織風土はどうなのか?」を色々の角度から検証し、改善していくのも、人事部長の大きな役割の一つではないでしょうか。
 もし、自社の風土が気になり、診断をされたい方、自社の雇用制度に問題を感じておられる方、社員・職員の定着率などに興味のある方がいらっしゃいましたら、気軽にご相談ください。

この記事を書いたプロ

下裏祐司

事業と社員の成長を導く企業活性化コンサルティングのプロ

下裏祐司(株式会社飛泉)

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