キズやへこみを美しく修復する自動車鈑金塗装のプロ井澤真

キズやへこみを美しく修復する自動車鈑金塗装のプロ

井澤真

キズやへこみの修復やオールペイント、事故車両の修理や車検などに対応

　「ぶつけたり、こすったり、ダメージを受けた際は当方にお任せください。大事なマイカーを、真心を込めてお手入れします」と話すのは、「オートボディテクノ富山」の井澤真さん。

　鈑金塗装部隊を率いるリーダーとして、部分補修から外観を一新するオールペイントまで幅広く手掛け、個人のユーザーをはじめ、ディーラーや整備工場、損害保険会社などから引き合いがあります。

　「基本的に普通乗用車であれば、国産車・輸入車を問わず承ります。他にも、トラックのような大型車両についてもお力になれる場合がありますので、お気軽にご相談ください」

　約1000㎡の広さを誇る自社工場には、車体の寸法に生じた狂いを直すフレーム修正機や、母材を強固に接合する高張力鋼板対応溶接機、色を精密に再現するコンピューター調色機などを完備。へこみは専用の工具を使って裏からたたいたり、外側から引き出したりして元の状態に戻し、パテを埋め、磨きを施してなめらかなフォルムを復元。必要に応じてボディーのゆがみを修正します。キズが付いた場合は下地を整え、塗りの工程を重ねて塗膜を形成。新車のような仕上がりを目指します。

　「損害保険会社とも密に連携を図り、『事故車両入庫指定工場』として認定を受けています。損傷したお車の美観と機能を回復するため厳格な基準をクリアしており、経験知を蓄えた職人が適切に修復し、年間で200件以上の実績があります」

　さらに、国土交通省に属する地方運輸局長から自動車分解整備事業の認証も取得。整備や車検、パーツ分解を伴うコーティングも請け負う体制を整えています。

整備士を経て鈑金塗装の技術を習得。顧客に寄り添う姿勢がモットー

　1977年に富山市で生まれた井澤さん。幼い頃から車が好きで、小学校の卒業文集に「将来は整備士になりたい」と書き記すような子どもでした。

　地元の高校から自動車整備の専門学校に進学。国家資格の二級整備士（ガソリン・ジーゼル）を取り、エンジンやブレーキをメンテナンスして安全性を期すなど職務に励みますが、1年程度で勤務先を退職します。

　「当時はバブル景気が崩壊して間もない時期で、新車の国内需要が減少するなど業界の先行きは不透明でした。このままでいいのだろうかと自問自答する日々が続き、知見を広げるため転職することにしました」

　新たな職場で車の外装を美化するノウハウを習得した後、鈑金塗装の専門会社へ就職。工場長として現場作業に当たりつつ、顧客対応も担当するようになりました。

　「『オートボディテクノ富山』に入社したのは2015年です。それまで県外の会社に勤めていましたが、父親が他界したのを機に帰郷を決意。地元で働き口を探していたところ、付き合いのあった損害保険会社の担当者に紹介してもらいました」

　長きにわたり傷んだ箇所を繕い、美しさを取り戻すべく力を尽くしてきた井澤さん。大切にしているのは顧客に寄り添う姿勢です。

　「例えば事故に遭い、修理に出されるケースではショックも大きく、オーナーさまは気が沈んでいます。お気持ちを察し、理解することに努め、『愛車がきれいになり、心も軽くなった』といった感謝の言葉をいただけるのがうれしく、何よりのやりがいです」

板金塗装の面白さや奥深さを次の世代に伝え、ものづくりの技術を継承

　耐候性や遮熱性を備えた塗料が開発されるなど、鈑金塗装の世界は日進月歩で進化。性能だけでなく、淡いブルーやピンク、ベージュといったパステル調、グラデーション、マットな質感やキラキラと輝く光沢感など、各社が個性的なカラーや複雑な色合いを打ち出しています。

　「新色に挑戦できることも醍醐味です。メーカーが提供する色番号を参照しながら塗料を調合しても、製造工場によって微妙な違いが生じているため、職人が細やかに調整していくのですが、狙った通りの色味が表現できたときの達成感は格別です」

　オーナーの愛車を彩り「お気に入りのデザインでドライブするのが楽しみ」など、心豊かなカーライフをサポートする井澤さん。運転する喜びを届ける一方で、「最近では自動車に興味を持たない世代が増えている」と危機感をもっています。また業界では経営者層の高齢化が進み、先進的なテクノロジーや設備機器への投資が後回しにされがちだと言います。

　「きついなど『3K』のイメージが根強く、特に若い層から敬遠されているのが残念でなりません。熟練の職人がいても、受け継ぐ人がいなければ優れた技術はいずれ消えうせてしまいます。日本のものづくりを支えていくためにも、鈑金塗装の面白さや奥深さを若い世代に伝えていきたいと考えています」

　一人の職人として技を継承し、次世代を育てる使命感を抱く井澤さん。「目が曇らないうちはこの仕事を続け、より多くのお客さまに満足ししていただける仕事をしたい」と熱い思いを語ります。

（取材年月：2025年6月）

国産車・輸入車を問わず鈑金塗装を手掛け、傷みを直して新車のような仕上がりに

キズやへこみの修復やオールペイント、事故車両の修理や車検などに対応

整備士を経て鈑金塗装の技術を習得。顧客に寄り添う姿勢がモットー

板金塗装の面白さや奥深さを次の世代に伝え、ものづくりの技術を継承

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