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障がいや年齢などに関係なく、誰もが利用しやすいWEBサイトづくりをお手伝い

WEBアクセシビリティ診断と障がい者支援のプロ

猪子和幸

テレワークを活用した障がい者の自立支援に取り組んでいます。
IT講習会の実施や講師派遣などの実績も多数

#chapter1

障がい者が当事者の目線でWEBアクセシビリティに取り組みサイトを診断

 生活必需品を購入したり、病院に予約を入れたり、数多くの人が使用するWEBサイト。インターネット上にはあまたのサイトが存在しますが、中には、障がい者や高齢者などへの配慮が行き届かず、必要な情報にたどり着けていないケースがあります。

 「身体的条件や年齢などに関係なく、全ての人が使えるように適切に整備する『WEBアクセシビリティ』という品質基準があります。製品などの国家規格『JIS規格』も定められ、公的機関や企業のサイトには、誰もがアクセスしやすい仕組みづくりが求められています」

 そう話すのは、徳島県鳴門市の「JCIアクセシビリティ協会」の代表理事・猪子和幸さん。JIS規格に即したWEBサイトの診断と改善策を提案しています。

 「当方は、テレワークを通じて障がい者の自立をサポートし、雇用の場を広げる目的で2022年に一般社団法人として誕生しました。障がいがある当事者の目線で検査を行えるのが、私たちの強みです」

 実務を担うのは、1999年に発足したNPO法人「JCIテレワーカーズネットワーク」の会員たちです。

 「当方では、作業内容を細かく分け、会員の特性に合わせて振り分けています。例えば、集中力に秀でた知的障がい者には、ひたすらキーボードをたたいてページ内の移動がスムーズかどうかを確認してもらいます。多様性に富んだメンバーをそろえることで、どんなに難しい案件も、チームプレーでやり遂げることができます」

 現在、約50人の会員が登録。おのおのが得意のスキルを生かし、地方自治体や民間企業のサイト診断などを行っています。

#chapter2

アクセシビリティ検査について学び、重度障がい者の自立支援も視野に活動

 「アクセシビリティの検査項目は多岐にわたります。アクセシビリティの知識を持つ会員が一つ一つ目視で検証し、JIS規格の適合レベル『A』『AA』『AAA』で評価されます」と猪子さん。

 高齢者や弱視の人が文字を判別できるよう、文字の色と背景の色にコントラストが付けられているか。視覚障がい者が画像の内容を理解できるように、音声読み上げができる代替テキストが設けられているか。聴覚障がい者に向け、動画音声に字幕が付与されているか。マウス操作が難しい人が、キーボードだけでクリックしたい場所の選択や実行ができるように設計されているかなどを確認します。

 「実務は、IT大手『日本IBM』の子会社『インフォ・クリエイツ』の元社長で、アクセシビリティ検査の第一人者・加藤均さんから習いました。膨大なページ数からなる総務省のWEBサイトの診断を任された時は大変でしたが、みんな達成感がありましたね」

 実は、協会の立ち上げは2度目。2018年に加藤さんらと共に設立しましたが、翌年に加藤さんが急死し、やむなく解散することに。再度のチャレンジには、猪子さんの並々ならぬ思いが込められています。

 「今後は重度障がい者の支援に力を入れたいと考えています。パソコンをはじめ各種機器の開発も進んでいますが、使いこなして仕事ができるようになるまでには、技術指導、機器の購入や無償貸与など、クリアしなければならない課題がたくさんあります。彼らの自立を実現させて初めて、真の障がい者支援と言えるのではないでしょうか」

ITスキルを習得して生き生きと働いています

#chapter3

ITスキルを身に付けるeラーニングを展開し、テレワークをサポート

 「就労を希望する人には、表計算といったビジネスソフトウエアの使い方や、在宅勤務をする上での心構えを学べるオンラインツール・e-ラーニングを準備しています。学習を進め、アクセシビリティ検査やアプリケーション開発、WEBコンテンツ制作、データ入力などの専門スキルを身に付けることも可能です」

 元高校教員で、在職時代に全国の商業科や工業科などにパソコンを導入し、教材や指導マニュアルを作った経験もある猪子さん。NPO 創設後は、e-ラーニングによる職業訓練を継続受注し運営するなど、ICTを活用した教育には定評があります。

 会員の中には、徳島に住みながら、東京の企業に雇用されている人も。先天性の脳性まひがある障がい者は、割りばしをくわえてパソコンのキーボードを打ち、業務をこなす傍ら、障がい者を対象にしたIT講習会の講師も務めているそうです。

 「WEBサイトの利便性を高めるアクセシビリティ検査は、障がい者にとっても自信と誇りを持って取り組める仕事。しかもテレワークなので、通勤の負担がなく、自分のペースで作業を進められるので、体力に不安があったり外出が困難だったり、就労を諦めていた人にも挑戦してほしいですね」

 また、公的機関や企業に向けてもメッセージを送ります。「障がいや年齢、国籍など、いかなるボーダーも超えて利用できるIT環境を整えて、等しく社会の恩恵を享受できる基盤をつくっていきましょう。私たちがお手伝いさせていただきます」

(取材年月:2024年3月)

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猪子和幸

WEBアクセシビリティ診断と障がい者支援のプロ

猪子和幸プロ

WEBアクセシビリティ診断

一般社団法人JCIアクセシビリティ協会

JIS規格(JIS X8341-3:2016)に対応したWEBサイトを診断し、改善を提案。IT講習会の企画・運営実績も豊富。e-ラーニングなど充実したシステムで、就労困難な障がい者らの自立を支援します

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