広告を出す際にはさまざまな規制や法律がありますが、税理士が広告を出す際にも「税理士法」が関わってくることをご存知でしょうか。税理士法とは、税理士としての品位を守るために定められている法律です。

この記事では、税理士の広告で注意しなければならない点や税理士法について解説します。

税理士が広告を出す際に係る税理士法

はじめに、税理士が集客のために広告を出すときに気にしなければならない「税理士法」についてご説明します。

従来の税理士法は厳しいものであった

現在もなお税理士法によって税理士が広告を出すことを明確に規制されていますが、従来に比べると緩和されました。ここでは、厳しい決まりだった税理士法の例を3つご紹介します。

例1.すでに顧問契約している企業への営業禁止

まず従来の税理士法では、すでにほかの税理士事務所と顧問契約している企業への営業は禁じられていました。これは、税理士業界の競争を激化させないための策としておこなわれていたものです。

この法律があることによって、すでに企業と顧問契約をしている税理士は安心して業務にあたれる一方、新規顧客獲得への活動に勤しんでいる税理士には不利な状況になっていました。

また、企業からみれば「今の税理士に満足できていないけど契約解除してしまうと、新しい税理士を探さなければならない」などの理由から、満足のいくサービスを受けられていないにもかかわらず契約解除ができないケースも考えられます。こうした営業禁止の法律が大きく改定されることとなりました。

例2.広告には実質的な基本情報のみ掲載する

税理士が出す広告には、実質的な基本情報のみを記載しなければならないという規制もありました。例えば「節税に特化した税理士事務所」や「ご相談は熱心にお聞きします」などの謳い文句が禁止されていたのです。

そのため広告に載せられる情報は、事務所名・電話番号・住所などの基本情報のみでした。広告を出すメリットの1つに「他社との差別化」が考えれらますが、この規制があることによって差別化を図ることはできないため広告を出す意味があまりなかったといえるでしょう。

例3.個人事務所は1箇所までしか設置できない

個人事務所は1箇所までしか設置できない決まりもあったため、個人の税理士が複数の地域で宣伝活動をすることが制限されていました。これに関しては個人事務所の場合には現在の税理士法でも規制されています。

ただし平成13年度の法律緩和に伴い、税理士法人であれば複数の事務所を設置することが認められました。そのため、もしも全国各地に事務所(支店)を持ちたいと考えている人は、個人ではなく法人化する必要があるため覚えておきましょう。

改正後は緩やかな細則になった

税理士法が改定されてからといって、まったく法律がなくなったわけではありません。税理士としての品位を保てるように緩やかな細則になったのです。

例えば先ほどの例2では、広告に載せる情報は税理士事務所の基本情報のみという厳しい規則がありましたが、改定後には過剰表現にせず税理士としての品位を保てる内容であれば謳い文句を載せても良いことになりました。

なお、税理士としての品位が保てない謳い文句とは具体的に「税金の抜け道をうまく利用してお得に税金を納めよう!」などです。こうした「税理士として相応しくない文言」を載せてしまうと、警告を受けることになるため注意しましょう。

税理士の広告をチェックしている税理士会

税理士法自体は緩くなりましたが税理士としての品位を守るために存在している「税理士会」が、所属する税理士に対して指導・監督などをおこなっています。

税理士会とは、全国に15法人あり全員税理士で構成されている組織です。全国の税理士は、所属地域の税理士会に入会しなければなりません。

つまり、出した広告に不備があれば所属地域の税理士会から警告があるというわけです。税理士として広告を出したいならば、この税理士会の存在も留意しておく必要があります。

税理士が絶対にやってはいけない広告表現

続いて、税理士が絶対にやってはいけない広告表現を5つご紹介します。広告を作成する際にはこれらを意識しておきましょう。

過剰に表現する広告

まずは先ほどにもご紹介した通り、過剰に表現している広告は禁止されています。例えば次のような謳い文句です。

・税金を◯割カット!

・あなたが悩んでいる◯◯税をゼロにします!

・税に関する問題はたちどころに解決します など

このように、この謳い文句を見ただけで「税金が◯割カットなんてすごい!」などと過剰な期待を持たせることは禁じられているのです。

また、こうした過剰表現は税理士法だけではなく「景品広告表示法」にも違反する恐れがあります。さらに「◯割カット」などと言い切ってしまい、その結果あまり節税ができなかった場合には顧客からの信頼を一気に失ってしまうでしょう。

顧問先企業名の無断掲載

有名企業と顧問契約を結んでいる税理士事務所は、高い宣伝効果を期待して企業名を広告に載せたいと考えることがあります。しかし、顧問先企業名を無断に掲載することは認められていません。

顧問先企業との話し合いの結果、書面にて掲載の同意を得られれば広告に企業名を掲載しても大丈夫です。これは当たり前のように聞こえるかもしれませんが、大手企業との契約はそれだけで高い宣伝効果が見込まれるため無断掲載してしまうこととも稀にあります。

顧客の不安を煽るような広告

顧客の不安を煽り立てるような謳い文句も、当然ながら禁止されています。具体的には次のような文言です。

  • 税理士がきちんと税務を行わなければ税務調査が入ってしまいますよ!
  • 税理士を雇っていますか?このままでは◯◯税によって苦しめらる運命です
  • このまま放置していると相続税が発生して全財産を持っていかれます など

こうした顧客の不安を煽るような文言は、固く禁じられています。確かに「あれ?税理士にやってもらった方がいいのかな?」と思ってもらうための広告ですが、不安を煽るのはよくありません。

上手いキャッチコピーを考えたつもりでも、見る人によってはマイナスに捉えられてしまうこともあるため注意してくださいね。

国税OBの肩書を地域名とともに記載

国税OBの肩書きを持っている人は、それを武器として使いたい気持ちもあります。しかし、勤めていた地域と役職をセットで広告に載せることは禁止されています。

具体的には「東京都の税務署長として20年勤務していた私が、個人税理士事務所を立ち上げました!」などの広告が挙げられます。この場合、広告を見た人や企業が「東京都の税務署長だったのなら、OBだから節税の優遇措置を受けられるかもしれない」と期待してしまうためNGです。

ただし、勤めていた地域名を出さなければ問題ありません。例えば「ある税務署長として20年間勤務していた私にだからできる節税アドバイス!」などは、勤めていた地域名が書かれていないためセーフと判断してもらえるわけです。

ライバルとの比較表現

ほかの税理士事務所と差別化を図らなければ広告の意味がないわけですが、具体的にライバルと比較する表現は禁止されています。

・A税理士事務所の顧問料は◯◯万円だが、うちはそれよりも10万円安くします
・A税理士事務所の総額よりも20%カットします! など

これは、税理士業界の競争を激化しないための法律です。自分の事務所をよく見せたいあまりにやってしまう人が多いため注意しておきましょう。

税理士法を正しく守った広告で集客しよう

この記事では、税理士が広告を出す際に係る税理士法や税理士会、また絶対にやってはいけない広告表現についてご紹介しました。

広告を作成する際には、「過剰表現」「顧問先企業名の無断掲載」「不安を煽る内容」「国税OBなどの肩書き+地域名の記載」「ライバルを蹴落とすような比較表現」、この5つに注意しておきましょう。

しっかりと法律を守って広告を作成すれば、大きな宣伝効果が期待できるはずです。正しく集客して事業を拡大していきましょう。