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Mybestpro Interview

歌い、踊り、演出も手掛ける若き代表。沖縄芸能の価値を高め、演者も裏方も憧れの職業にするのが使命

伝統芸能を受け継ぎ琉球エンターテインメントに昇華させるプロ

宮里さくら

宮里さくら みやざとさくら
宮里さくら みやざとさくら

#chapter1

公演実績は約7000回。民謡や舞踊に現代のアレンジを加えた一期一会の参加型ステージを提供

 沖縄の伝統芸能を現代の解釈で琉球エンターテインメントに仕立て、人々をもてなす「ONEVEX production.(ワンベックス プロダクション)」の代表・宮里さくらさん。エイサーや琉球舞踊、三線(さんしん)、獅子舞、空手の演舞などを組み合わせ、オリジナルのステージを創り出します。

 「沖縄県や各市町村、リゾートホテル、インバウンド関連企業などから依頼を受け、累計約7000公演を行ってきました。単に演者を派遣するのではなく、ご覧になる方々の年齢層や会の趣旨、国籍などを丁寧に伺いゼロから構成を練ります。またとないひとときを提供できるのが誇りですね」

 深く思い出に残るよう、観客も一緒になって太鼓をたたいたり、両手を上げて踊るカチャーシーの輪に加わったりと、体験・参加型にするのも特長。子どもや若者が多い時はポップスを増やし、民謡をロック調にして演奏するなど柔軟な対応も喜ばれると言います。

 また、「修学旅行の生徒向けに歴史や文化の解説を加えてほしい」「社員研修の一環でチームビルディングの要素を取り入れたい」「結婚式なので両家の距離が近づくサプライズを考えてほしい」といった相談にも応じます。

 「演者だけでなく音響や衣装も専門家が担当するなど全体のクオリティーが高く、何より私たちは『芸能一本で食べていく』と決めたプロ集団です。社名にも業界ナンバーワン(ONE)を目指す、困難(ENEMY)に立ち向かう、無限(X)の可能性を追求するとの思いを込めており『ワンベックスなら感動させてくれる』と、ぜひ期待してほしいです」

#chapter2

高校で郷土芸能を学びプロへの道を決意。先人たちが受け継いできた技や心を“借りて”観客の前に立つ

 物心ついた頃から地元の祭りや音楽への興味が湧き、県内唯一の郷土文化コースのある高校に進んだ宮里さん。郷土芸能部に所属し、放課後も歌や踊りの腕を磨きます。

 「文化的な活動とは縁遠い環境で育ちましたが、私の中に流れる沖縄人としての血が今の世界に進ませたのでしょう。授業では主に教科書や先生の知識を通じ琉球の文化と歴史を学び、実技では古武術の基礎を学びました」

 武芸に励む折、先輩に誘われて「ONEVEX production. 」の稽古を見学。毎日のように鍛錬している空手もエイサーも舞踊も、本質的な理解や体の使い方に及んでいないと衝撃を受けます。

 「さらに、当団体の前代表の圧倒的な技術や『私たちは先人たちが受け継いできた芸能を“借りて”お客さまの前に立っている』という哲学にも感銘し入団を決意しました」

 他の進路も検討するよう高校から勧められますが、意志を貫いて就職。下積みを重ね、現在は演者、MC、舞台監督、組織のまとめ役と多彩に活躍しています。

 前代表にも「芸で食べていくには自分で道を切り開くしかない」と諭された宮里さん。「沖縄芸能の地位を高め、この道一本で生計を立てたい」という一念で芸道にまい進してきました。

 「現状では、師範でなければ十分な収入を得るのが難しく、多くは観光居酒屋でアルバイトをしながら三線を演奏する程度にとどまっています。全ての歌い手、踊り手、ステージの裏方、そして沖縄芸能を担う同世代、次世代の若者たちが夢を持てるための前例を作ることが私たちの役目だと思っています」

宮里さくら みやざとさくら

#chapter3

エイサーは自己肯定感やリーダーシップを高める。子どもから大人まで踊れるスクールを開業へ

 宮里さんがもう一つ注力しているのがエイサーのスクール事業。これまでも就学前の子どもに指導してきましたが、誰でも日常的に踊れる場を提供したいと話します。

 「沖縄人のアイデンティティーを形成する踊りであり、末永く上達や成長を見届けたいと立ち上げました。褒められたのがうれしくて練習に集中する子、新たに覚えた動きを友だちに教える子などを目の当たりにし、自己肯定感や協調性、リーダーシップなどを育む支援になると確信しました。いずれの世代の方が受講しても同じような効果が得られると思っています」

 自身は芸歴10年を迎え、最近は若手の指導も任されるように。ゆくゆくはこの規模を拡大し、県外海外でも沖縄発のエイサースクールの開業を目指しています。

 「例えば我々のエイサーの動きは太鼓を打つ動作に空手の腰の回し方を取り入れたり、琉球舞踊と獅子舞の足運びを使用したりしています。プロとして場数を踏んだからこそ分かる理にかなった動きであり、若いうちに技術を習得することで沖縄芸能を背負って立つ人材が増えると期待しています」

 前代表からは今も「仕事をもらうために芸を曲げてはいけない」「美しい所作は自分、顧客、観客のために磨くもの」といったアドバイスがあるとか。

 「研さんを怠っては芸を“借りる”に値せず、まして業界をリードするのは不可能でしょう。他県と同じく沖縄でも伝統的な楽器や衣装、小道具を作る職人が減っています。改めて郷土芸能に関する仕事が副業やアルバイトではなく、本業となる仕組みを作るのが私の使命だと感じています」

(取材年月:2025年4月)

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宮里さくら

伝統芸能を受け継ぎ琉球エンターテインメントに昇華させるプロ

宮里さくらプロ

琉球芸能プランナー

ONEVEX production.

伝統的な沖縄芸能に現代の解釈を加え、客席参加型の琉球エンターテインメントを提供。観客の年齢層やイベントの主旨を把握し、エイサーや琉球大獅子舞、沖縄民謡などを組み合わせたオリジナルのステージを創作する。

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