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不安を抱える外国人患者の理解者、医療チームの一員として双方の意思疎通をサポート

医師と外国人患者の意思疎通を助ける医療通訳のプロ

髙橋麻希

髙橋麻希 たかはしまき
髙橋麻希 たかはしまき

#chapter1

医療通訳者が症状や痛みなどを的確に医師に伝え、適切な診察・治療へ

 「言語や文化、習慣などが異なる異国で体調を崩したり、ケガをしたときの不安は相当なものでしょう。日本語に不自由な外国の方と医療関係者が円滑に意思疎通できるよう橋渡しをするのが、医療通訳者の役目。治療に専念していただけるよう全力でお手伝いいたします」

 熱意を見せるのは、沖縄県宜野湾市で英語通訳・翻訳会社「No.(ナンバー)」を営む髙橋麻希さん。既往歴や現在の症状など、問診表に記入する内容のヒアリングをはじめ、診察室にも同行。手術に立ち会ったり、術後に家族と医師との間で行われるカンファレンスに同席したり、診療におけるさまざまな場面に対応しています。

 「患者さんが今、何を伝えたいのか、痛みの度合いはどれぐらいなのかを把握し、忠実に医師や看護師に伝えます。例えば、ずんずんなのか、ずきずきなのか、きりきりなのか。医師は、患者さんが発する擬態語を基に容体を見極め、手だてを講じます。不調などを的確に伝えられなかったために、本来施すべき処置ができず、症状が進行することがないよう、患者さんの言葉は一言一句メモを取ります」

 通訳者も医療チームの一員と心得る髙橋さん。疾患に関する基礎知識も備え、本人の表情から医師の説明を理解していないと察すると、すかさずフォローします。

 「日本人と外国人では、体質や生活習慣の違いなどから、かかりやすい病気が異なります。日本でよく知られた病気も、外国人は知らないことがあるんです。どんな症状が現れ、悪化するとどのようになるのか、服薬の方法や控えるべき食べ物なども併せて補足します」

#chapter2

不安が大きい手術。患者や家族に寄り添った言葉掛けと経過報告を細やかに

 髙橋さんは、手術などを目的に来沖する渡航者の通訳もしています。常に心掛けてきたのは、自分の感情をコントロールすることでした。実は、大の注射嫌いで、現場に立つだけで感情が高ぶるのだとか。

 「医療通訳を始めた頃、医師に『私に人の命を預かる仕事が務まるのだろうか』と打ち明けたことがあるんです。返ってきた答えは自分たちも同じ思いだと。『怖さもあり、重責を担うからこそ、日々研さんするのだ』と話されたのを聞き、医療従事者の心情や、発する言葉の意味が分かるようになりたいと、医師や看護師を目指す人たちの入門書を読みあさりました」

 患者にも親身に寄り添い、外科手術を受けるために欧州からやってきた小学生には母親のように案ずる心持ちで、同伴した母親には回復をともに願う同士の気持ちで接しました。

 「子どもには、母親の言葉が大きな励みになります。『ママが外で待っているから、心配しないでいいよ』と声を掛けて付き添いました。通訳者は万一に備え、手術室で待機しなければなりません。ただこの時は、不安な思いをしているお母さんを支えたくて、医師の許可を得て、オペが順調に進んでいることを控室まで伝えに行きましたね」

 母親は手術を終えた子どもを「よく頑張ったね」と笑顔で迎え、子どもも母親を喜ばせたい一心でリハビリに励んだそうです。後日、医師からは「髙橋さんの経過報告が母親を安心させ、ママが見守ってくれる心強さが子どものモチベーションを引き出したのだ」と言われたそうです。

髙橋麻希 たかはしまき

#chapter3

医療通訳の知識や経験を共有し、沖縄県の医療ツーリズムに貢献したい

 国のインバウンド戦略の一つとして、健康診断や治療のために日本を訪れてもらうべく医療ツーリズムが推進される中、沖縄県はいち早く外国人患者を受け入れてきました。

 ニーズはあるものの、医療知識や海外の医療事情に精通し、専門性を要する医療通訳者は不足しているのが実情。髙橋さんは、培ってきた知見や経験を共有し、互いに切磋琢磨することで、ケアサービスの質の向上につなげたいと考えています。

 「残念ながら、私ども通訳者の存在自体があまり知られていません。経済発展の中核となるリーディング産業として観光に力を入れている県にとっても、医療通訳は今後重要な地域資源になるはずです」

 中学生の時に現職を志して以来、語学に励み、短大卒業後は、英語のみを使用する職場に就職。商談や会議、観光ガイドの通訳をする他、戸籍などの公的文書や映画字幕の翻訳、企業のマニュアル作成など、多岐にわたる業務を担ってきました。

 2016年に開業した事務所には30人ほどの通訳・翻訳士が登録。クライアントの要望に適した人材をマッチングしています。

 「通訳のゴールは、物事がスムーズに進み、両者が笑顔になること。日本と海外の文化的背景も踏まえ、適切な言葉を選んで時間内にクライアントさまが目的を達成できるよう全力でサポートいたします。また、一人一人の状況や心境をくみ取るため、丁寧なコミュニケーションを大切にしています。英語が話せる“ご近所さん”ぐらいの身近な存在として、皆さんのお役に立ちたいですね」

(取材年月:2024年8月)

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髙橋麻希

医師と外国人患者の意思疎通を助ける医療通訳のプロ

髙橋麻希プロ

通訳・翻訳士

No.

短大卒業以来、通訳・翻訳業に従事し、20年以上のキャリアを持つ。県内でいち早く医療通訳にも従事。クライアントの表情や雰囲気を即座に理解し、的確な言葉で表現します。翻訳もお任せください。

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