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Mybestpro Interview

子どもたちに「人と違っていてもいい、したいことができる」が当たり前の日常を

自由で可能性に満ちた子どもたちの居場所づくりのプロ

髙木聡子

プロフィール
子ども2人

#chapter1

海の香りと豊かな緑に囲まれた旧小学校を、不登校の子どもたちの体験と学びの場に

 長崎県東彼杵郡東彼杵町にある海沿いのレトロな駅舎「千綿駅」から、山に向かって歩くこと約5分、風光明媚な大村湾を一望できる旧千綿小学校の校舎から聞こえる、子どもたちの元気な声。

 海の香りと豊かな緑に囲まれて、不登校の子どもたちの体験と学びの場「オルタナティブスクール にじの木」があります。

 近隣市町や隣県から、おのおののペースで通うのは、20人前後の義務教育世代の子どもたち。
 「学校に行けない、行きづらい」と苦しむ子どもたちの“もう一つの居場所”として、心の安定を保つことを第一に「そのままの自分でいられる」体験を積み重ねています。

 「クラス分け、決まったカリキュラムもありません。広い建物や運動場のどこで何をしても、しなくても自由。絵画や手芸・工作、料理の道具、ボードゲーム、卓球台など、備品の全てが使い放題。疲れたら横になっても大丈夫、長い廊下を全速力で走っても構いません」
 
 子どもたちの様子を笑顔で話すのは、公立小学校や支援学校で19年間の教員経験を持ち、2023年にスクールを開校した髙木聡子さん。

 外遊びや野菜づくりをはじめ、山や川での生き物探しなど四季折々の屋外活動を企画。名人から手ほどきを受けるみそづくり、絵付け体験、工場見学といった課外授業に出かけることも。

 「本人だけでなく、先行きを案じ、子どもとの向き合い方に迷う親御さんの心情に寄り添います。周りの大人も元気になれるように個別相談や情報発信にも力を入れています」

#chapter2

教師、母親としての思い込みから自身を解き放ち、再生するプロセスをスクールの理念に

 何をしたいのか分からず、戸惑う子どもたちとの距離感を大事にしながら、行動するタイミングを待つことに徹し、そっと声を掛け背中を押す髙木さん。自然体で子どもの気持ちに深く寄り添う姿勢は、長年の教員生活で培ったものだけではなく、実体験から生まれた新たな理念も融合しつつ、日々取り組んでいる独自の関わり方と言います。

 登校を渋り、毎晩不安で泣きじゃくる息子を前に親として苦悩する日々は「ただの苦しみだ」と簡単に言えるような、生易しいものではありませんでした。

 「これまで教員として児童や保護者に行ってきたように、カウンセリングや環境整備などあらゆる手を尽くし、懸命に向き合ってもなお、わが子を苦しみから救えない現実。『わが子の幸せ』と重視していたはずが、実は母である自分の思い込みや世の中の基準に倣おうとしただけだったんです」

 長年信じてきた価値観を全てひっくり返すほどの衝撃に、一時は髙木さん自身の心身の健康も脅かされることに。

 罪悪感と自己否定の混沌の中から自問自答を繰り返し、数か月後には「しなければならない」ではなく「したいことをしよう」と考え始めます。

 髙木さんが本当の自分を探して再生しようとする道筋は、まさにスクールの在り方そのものでした。 

 「年齢・性別・成績と当たり前に振り分け、枠組みの中でしか見ていなかったこれまでを顧みて、『人と違ってもいいんだよ』と言ってあげたい。そんな場所づくりこそが、私のしたいことだと確信が持てたんです」

子どもたくさん

#chapter3

自分がやりたいことに取り組んで心を満たし、自由で可能性にあふれる未来へ

 髙木さんは自身の経験から、子どもが不登校や「行き渋り」に至るには、保護者や周りの大人たちの思い込みや理解不足が、要因の一つとなっているケースが多いことにも警鐘を鳴らします。

 「子どもたち以上に、親御さんの方に不安が大きいという傾向が見られます。スクールで子どもたちがのびのびと過ごす様子や、成長の過程を見ていただき、理解と安心につながればと願っています。国や自治体も以前より不登校の問題に力を入れていますが、フリースクールの役割に対する理解が急がれる地域もあるようです。親御さんが育ってきた時代とは異なる状況にも目を向けてほしいですね」

 さまざまな体験を通して子どもの意欲や関心を引き出し、自主性を育む髙木さん。不定期で「お話し会」を開催し、個々の保護者の悩みに向き合うとともに、SNSで子育ての情報などを発信しています。

 「私たちが目指すのは、一人一人が自分の意思で決めて行動し、生きる力を養うこと。必ずしも学校に戻ることをゴールとしていないのは当初から変わらぬスタンスです」

 自分がやりたいことに取り組める環境で、心をエネルギーで満たし、子どもたちの間で「学校に戻る」がちょっとしたブームになっているのは、興味深い現象だと語ります。

 「誰しも自分が生きていく場所や、幸せと感じる時間を見つける力があります。スクールの子どもたちの多くは、繊細で優れた感性の持ち主。自由で可能性にあふれる未来を創造するのは、むしろ彼らのような存在ではないでしょうか」

(取材年月:2025年3月)

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Profile

専門家プロフィール

髙木聡子

自由で可能性に満ちた子どもたちの居場所づくりのプロ

髙木聡子プロ

オルタナティブスクール運営

オルタナティブスクール にじの木

豊かな自然に恵まれた旧小学校の跡地を活用し、課外活動をメインとする自由な体験と学びの機会を用意。不登校の子どもたちが、心の安全を確保しながら自由に過ごし「そのままの自分」でいられる居場所に

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