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長野の風土と生産者の愛情で育てた、色つやと粒立ちが良く甘いブドウを提供

ブドウの新しい可能性を追求するプロ

岡木由行

岡木由行 おかきよしゆき

#chapter1

シャインマスカットやクイーンルージュ®など、定番から流通が少ない各種品種を栽培

 長野県北部の北信州は昼夜の寒暖差が大きく、日本有数のブドウの産地です。気温が高い昼間に糖度を上げ、夜間に気温が下がって活動量が落ちることで糖分をしっかり蓄え、芳醇な果実となります。質の高いフルーツは世界でも需要が高く、観光農園には果物狩り目当ての外国人が増えています。

 須坂市で「岡木農園」を営む岡木由行さんはブドウ栽培に特化し、早くから革新的な取り組みを進めてきました。

 「当園では1本の木から採る房の数を最小限にしたことで、土の養分が行き渡り、太陽の光もまんべんなく照射され、色鮮やかで粒立ちが良く、甘みの中に深いコクが感じられるブドウに仕上げています」

 岡木農園で扱っているのは、主にシャインマスカット、ナガノパープル、クイーンルージュ®、巨峰、クイーンニーナ、ピオーネの6種。定番の人気種からまだ市場にほとんど流通していない新品種まで取りそろえ、デパートやホテルなどで重宝されています。

 1998年の長野五輪では、親善巨峰栽培園としてIOC(国際オリンピック委員会)の委員や選手を招いてブドウ狩りを実施したことも。

 「半世紀にわたりブドウ栽培に携わって気付いたのは、近道はないということです。良い環境を整え、病気や日当たりに注意を払い、成長を促すために適切に芽を摘み、基本に忠実がモットー。愛情を持って手と目をかけることが肝要で、小まめに世話をしてあげれば肉厚で濃厚な果実に育ってくれます。『焦らず、丁寧な仕事を積み重ねよう』が当園の合言葉です」

#chapter2

大正初期から続く農園を継ぎ、深い味わいに感銘を受けブドウづくりへ

 岡木農園の創始は大正初期にさかのぼります。養蚕から始まり、昭和20年代にはリンゴに、岡木さんが3代目になってからはブドウづくりにシフトしました。

 「当時、周辺にブドウを手掛ける農園はありませんでしたが、農家研修でお世話になっていた中野市の農家さんで巨峰を栽培していたんです。甘みが強く、深い味わいに感銘を受けたのを覚えています。東京・銀座千疋屋とも取引されていて、『自分もいつか一流店に認められる果物を作りたい』と夢を抱くようになりました」

 木で作るリンゴは脚立の上り下りがあり、体力的に負担が大きいのに対し、棚で作れるブドウは女性でも作業しやすい点にも着目。農園の将来を見据えて一念発起し、ハウスを作りブドウ栽培に乗り出しました。

 「新しいことに挑戦してこそ、自分たちの形が生まれる」と語る岡木さん。その言葉を体現するように、菓子店と協力して低アレルゲンのスイーツを開発するほか、地元企業と太陽光システムを共同開発し、再生可能エネルギーの生産・販売にもチャレンジ。収穫量が落ちる冬季の収入源としても期待されています。

 「農業を取り巻く環境は刻々と変化していますが、いつの時代もおいしいブドウを作るのはブドウが好きな人。成長を心待ちにし、毎日畑に行くのが楽しいという方にとっては天職です。経営者目線で言えば、人材の育成が一番の難所でしょう。ブドウ栽培は経験がものを言う熟練工のような性質があるので、ブドウも人も長い目で見て大切に育ててあげるのが一番だと思います」

#chapter3

オンラインや出張型のブドウ狩りを開き、丹精込めた果実を多くの人に

 岡木さんは天候に左右されない温室栽培や、太陽光発電でCO2を削減する低炭素型農業を実践。老舗の農家としてブランディングにも力を入れ、SNSを活用して日々の様子を発信しています。伝統と革新、両輪の事業展開に注目が集まり、メディアでも数多く取り上げられています。

 「農園にカメラを入れて房を一つ一つ見てもらい、私たちの説明を聞きながら食べたいものを選んでいただくオンラインのブドウ狩りは話題になりました。あとは棚ごと出張するブドウ狩りも好評です。遠方へ出掛けるのが難しい方にも、自分で収穫する機会を提供したいと思って始めました」

 時流やニーズをつかみ、躍進を続ける岡木さん。現状に甘んじることはなく、やりたいことがたくさんあると意欲を見せます。

 「ノウハウを蓄え、懸命にお世話してくれる従業員やパートさんのおかけで品質も安定してきました。私どもが丹精込めて育てた果物を、より多くの方に知ってもらう計画を立てています」

 一つ目は東京進出。都内に同園のブドウを使ったスイーツが堪能できるカフェを出店し、各品種の魅力や特徴を知ってもらう展示も企画しています。二つ目はブドウ狩りの体験施設の設置。近隣住民や観光客が集って交流し、憩いのひとときを過ごせる場を作りたいと言います。

 「ご賞味してくださった方の『おいしい』という言葉が何よりの喜びです。顔が見えるお付き合いで、お客さまの笑顔を励みに長野の味覚を届けていきたいですね」

(取材年月:2025年1月)

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岡木由行

ブドウの新しい可能性を追求するプロ

岡木由行プロ

ブドウ農園経営

合同会社岡木農園

大正初期から続く老舗農園。ブドウ栽培に半世紀以上の歴史を持ち、厳選された品種と丁寧な栽培で高品質なブドウを提供。近年はオンラインブドウ狩りなど革新的な体験事業を提供し、業界外からも高い注目を集める。

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