顧客がいなければ商売は成り立ちません。それは、税理士であっても同じです。顧客獲得のために営業活動をする必要があるでしょう。
しかし、税理士業界には税理士法という特別なルールがあります。何も知らずに営業活動をしていると、一定の規則に抵触するかもしれません。もし抵触すると、罰則を受ける可能性があるので十分考慮したいところです。
この記事では税理士業界の営業禁止ルールや営業方法、営業代行会社を選ぶときのポイントなどをご紹介します。税理士にとって営業力は欠かせないので、ぜひ最後まで読んでみてください。
税理士が守るべき営業禁止ルール
まず、税理士法について解説します。税理士業界には営業禁止ルールがいくつかあるのできちんと把握しておきましょう。規則に抵触して営業停止とならないように気をつけたいことです。
過度な表現をしない
税理士の介入によって税務の改善が著しくおこなえるような印象を持たせる広告は禁止されています。例えば、「相続税をゼロにします」や「税金を8割カットします」といったうたい文句は、キャッチコピーとしても使ってはいけません。
たしかに税理士が介入することによって節税をおこなえる場合があるのは事実ですが、全ての人に大きな節税効果を与えるような印象を持たせる広告をしてはいけないことになっています。これは、景品広告表示法にも違反する恐れがあるので十分に気をつけたいところです。
また、過度に不安をあおる内容の営業をおこなうことも禁止されています。例えば、「税理士に頼まないと違反行為で捕まるかもしれませんよ」といったものは営業禁止ルールに抵触します。過度な期待も過度な不安も税理士法によってNGとされているわけです。
「それだったらどこまでの範囲ならよいのか」という疑問が生じるかもしれませんが、すでに広告を出しているほかの税理士を参考にするとよいでしょう。
国税局での経験を詳細に書かない
少し意外かもしれませんが、国税局の勤務経験がある税理士が、勤めていた税務署の地域名や役職など詳細に記載することは禁じられています。
たしかに、税理士としてはアピールポイントになるかもしれませんが、国税局出身者であるという経歴を利用して税制上の優遇措置を受けられるのではないかと顧客が期待することを防ぐためです。先ほどご紹介した過度な期待と重なる部分かもしれません。
過去のキャリアとして自己紹介に載せたくなる気持ちはあるかもしれませんが、じっと我慢しましょう。
他の税理士との比較をしない
ほかの業界では当然のようにおこなわれていることなので驚かれるかもしれませんが、ほかの税理士と比較するような形で料金やサービスの内容を説明してはいけないことになっています。これは、ついついしがちなので気をつけたいところです。
表を使って料金やサービスを提示し、「〇〇社より5,000円安い」といった宣伝をすることは許されていません。比較する相手の名前を伏せた状態でも好ましくないのでやめましょう。過度な税理士間での価格競争を防ぐ狙いがあります。
営業力を持たずに独立するのはリスク
すでにお気づきかもしれませんが、税理士にとっても営業力は欠かせないものだといえます。せっかく税理士資格を取って独立しても、顧客がいなければビジネスとして行き詰ってしまいます。
開業しただけでは、顧客はやってきません。顧客がなかなか来ないことに気づいてから、知り合いを巡ったり異業種交流会に参加してもすぐには成果が出ません。顧客がいないまま営業コストがかかるのは心にも負担をかけます。
求められる営業力
税理士が営業力を身につけるのにおすすめしているのが、税理士事務所でアルバイトをしてどうやって営業をかけているのか実際に目で見て知るという方法です。営業方法を知って、営業スキルを身につけてから独立することをおすすめします。
どうやって紹介の顧客を増やしているのか、リピート客を増やすためにどのような工夫ができるのか、営業時間のコツはあるのかといった点を研究しましょう。
営業力を身につけないまま独立しても失敗するリスクが大きいです。どうしても税理士事務所でアルバイトをするのが困難な場合は、先輩の税理士に相談すると教えてくれるかもしれませんが、企業秘密のところもあると思うので、全ての営業のコツを知れるわけではないことを知っておきましょう。
税理士の主な営業方法と営業ツール
今の時代、インターネット検索でも多くの情報を知れるので税理士の営業方法と営業ツールの基礎知識をつけておきましょう。知り合いの税理士に聞くのも良いですが、「えっ、そんなことも知らないの?」というようにならないために必要なことです。
知人からの紹介
税理士の顧客獲得方法として最もスタンダードなのが、知人からの紹介です。顧客は、非常に重要な個人情報を税理士に任せるので、やはり信頼できる税理士を選びます。
「誰かいい税理士さん、いない?」という会話が交わされたとき、名前があがるほど信頼を築いておきましょう。
そして、意外とチャンスを逃しているのが、「忙しそうな税理士」です。忙しそうだから紹介するのをやめておこうかと控えるケースも実際にはあるのです。
また、紹介してもらったら嬉しいことを正直に伝えましょう。自分を下げるような表現は好ましくありませんが、「ご縁がつながって嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたします」くらいは伝えてもよいでしょう。
WEBを活用する
もし人脈がそう広くないのなら、幅広い顧客を狙えるWEBを利用してみてはいかがでしょうか。インターネット上で税理士を比較検討している見込み顧客は少なくありません。知り合いに税理士がいない人はごまんといるのでインターネットで探すわけです。
WEBといってもその分野はさまざまあるので今回は特に有効な3つの手法をご紹介しましょう。どれも導入ハードルが比較的低いので、検討してみる余地があります。
税理士マッチングサイト
税理士マッチングサイトは、税理士と仕事を依頼したい相談者をマッチングする仲介サイトです。税理士ポータルサイトや税理士紹介サイトとも呼ばれます。
このサイトに税理士が登録することによって相談者からの依頼を受け付けられるようになるのです。地域や予算、依頼業務などをもとに希望の税理士を選んでもらえるので、今まで全く縁のなかった相談者から依頼をもらえることもあります。
ただし、このサイトに登録するためには手数料がかかります。税理士マッチングサイトが手数料として税理士に求める分は、報酬の30%から70%というのが相場となっています。
継続案件ですと、手数料が高くなる傾向があります。「けっこう手数料を取られるな」と感じられるかもしれません。半年だけ、1年だけと区切りをつけて利用してみてもよいでしょう。
ホームページ
税理士として独立したのなら、ホームページを一つ構えることをおすすめします。ホームページは比較的安価で作成でき、キーワード検索結果で上位に表示されたら、多くの集客を見込めます。
ホームページを作る際に気をつけたい5つのことをご紹介します。
- 常に最新情報を提示する
- 定期的にコンテンツを更新する
- オリジナルで役立つコンテンツを発信する
- 自分でコントロールできるようにする
- ランニングコストが低いものを選ぶ
専門の業者に頼んでもよいのですが、自分でコントロールできないと小まめなメンテナンスができないので、使い方を学んでおきましょう。そこまで難しくないので、仕事の片手間でマスターできます。
あまりにも古くてデザイン性が劣るホームページは信頼に対する逆効果を与えてしまうので気をつけてください。
SNSやブログ
最も手軽で安価で始められるのが、SNSやブログです。基本的にはホームページと同じで、定期的に発信するのが好ましいです。
ある分野に絞って発信を続けていると興味を持った人がフォローしてファンになってくれることがあります。そのフォロワー数は他者からも見えるので、「多くの人から支持を受けているから信頼できる」と思われることもあるでしょう。
SNSやブログの特徴は、コンテンツが蓄積していくところです。過去の投稿内容を見て、仕事依頼のきっかけにつながることもあります。今の時代、バズればテレビや雑誌などのメディアで取り上げられることもざらにあるので、影響力の大きな営業ツールです。
セミナーを開く
従来からおこなわれている税理士の集客方法として、セミナー開催が挙げられます。ほとんどの人は税理士に依頼するためにどんな人柄なのかどのようなスキルを持っているのか知りたいと思っています。やはり直接会って接することで初めて見えてくるものもあります。
見込み顧客と直接会ってアプローチできるといった点で、セミナー開催は有効です。ただし、セミナーの目的とゴールを定める必要性とセミナー開催のための集客をしなければいけないことについて触れておきます。
やはりセミナー開催も一度だけでは十分な成果を得られないでしょう。回数を重ねるごとに話す力が身につくということもあると思うので、継続力が大事です。
税理士の営業代行会社
「営業がどうしても苦手だ…」という税理士は営業代行会社を利用するとよいでしょう。営業代行会社に関する詳しいことをご紹介します。
営業代行会社を選ぶときのポイント
営業代行会社を選ぶときは2つの点に注目しましょう。「料金体系」と「委託できる業務内容」です。営業代行会社選びに失敗して損することのないようにしましょう。
営業代行の料金体系
営業代行会社の料金体系は主に3つあります。
- アポイントや成約の獲得で料金が発生する「成果報酬型」
- 一定の期間で固定の料金が発生する「固定報酬型」
- 「固定費用+成果報酬の複合型」
営業代行会社によって料金はさまざまなのですが、成果報酬型で1アポイントメント1.5~2万円、固定報酬型で日当2.5~3万円が目安です。
委託できる業務内容
委託できる業務内容は、電話やメールでの営業でアポイントメントを得て仕事の依頼を受けるというものです。「とにかくアポ取りに重点を置きたい」といった希望も叶えてくれるでしょう。リソースが足りていないのなら、営業代行会社の活躍に期待しましょう。
税理士にとって営業力は欠かせない
税理士にとって営業力は欠かせないことに気づかれたかと思います。どれだけ腕のいい税理士であっても、“ここにいる”ということを知ってもらわないと仕事を依頼してもらえません。
何よりも大切なのは、顧客開拓をおこなっていく強い意志です。どういった顧客獲得を目指すのか、そのためにどういったアプローチ方法をするべきなのか検討してみましょう。