保険や住宅ローンの相談、資産運用など人生において大切なマネープランについてアドバイスを行うファイナンシャルプランナーという資格があります。企業に属して仕事をするほか、独立して活動することもできますが、資格を取るにはどのような要件があるのか、また企業した場合どれくらいの収入があるのか。今回はファイナンシャルプランナーの仕事や収入などについてお話しします。

ファイナンシャルプランナーの仕事

人生のなかには就職、結婚、出産、住宅購入、子育て、定年、老後などいくつもの岐路があります。

そこでは出産・教育資金の準備、住宅購入資金準備や住宅ローン設計、定年後の生活設計など必ず「お金」が関わってきます。金融、税制、不動産、ローン、保険、年金制度、相続といったお金に関わる豊富な知識を基に、人生の岐路に立つお客さまに寄り添い、一緒に人生設計をサポートするのがファイナンシャルプランナーです。

具体的な仕事内容としては、例えば老後、安心して暮らしていくにはいくら必要か。一戸建て住宅を購入するうえで、現在の収入であればどのぐらいまで住宅ローンを借りることができるか。
こういった相談に対し、お客さまの資産、収入、負債、保険、不動産、税金などを加味したうえで、最適な選択ができるよう、お金の運用、資産計画のアドバイスをします。

また、人によっては資産運用や税金対策といったことをテーマにセミナーを開催し、その講師としてアドバイスをすることもあります。

ファイナンシャルプランナーとしての働き方

ひと口にファイナンシャルプランナーといっても、その働き方は大きく2通りあります。

1つは、銀行や証券、保険会社などの金融機関に勤め、社員としてお客さまに資産計画のアドバイスをする方法。そしてもう1つは、個人で独立して行う方法です。

どちらも仕事内容に大きな差はありませんが、企業に属してファイナンシャルプランナーを行う場合、金融商品をすすめる時は自社の商品が中心となります。そのため、より幅広い商品のなかからお客さまに最適なものをすすめたいといった場合は、独立系がおすすめです。

ファイナンシャルプランナーに資格はある?

お金に関するさまざまな知識を必要とするファイナンシャルプランナー。その力量を測ったり、実績、信頼を示したりするものとしては、NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が認定する「CFP®資格」(上級資格)と「AFP資格」。そして、国家検定であるFP技能士(1~3級)があります。

AFP認定者になるには、FP技能士2級を取得し、AFP認定研修を修了する必要があります。またCFP資格の認定者になるには、AFP認定者がCFP資格審査試験6課目に合格し、CFPエントリー研修と一定の実務経験が必要です。

ちなみに2019年10月1日現在、AFP認定者は16万445人。CFP認定者は2万2,325人です。

実際にファイナンシャルプランナーとして仕事をするうえで、これら資格は必須ではありません。仮に資格を持っていなくとも、ファイナンシャルプランナーを名乗って仕事をすることは可能です。しかし、独立してファイナンシャルプランナーとしてお金を稼ぐには、信頼性や実績を示すうえでも、これらの資格取得(最低でもFP技能士2級以上)は必須といえるでしょう。

ファイナンシャルプランナー資格試験の内容は?

ファイナンシャルプランナーの資格を得るための試験内容は、は次の通りです。

【FP技能検定】
<1級>
◇学科試験
A. ライフプランニングと資金計画
B. リスク管理
C. 金融資産運用
D. タックスプランニング
E. 不動産
F. 相続・事業継承

◇実技試験(学科試験の試験範囲について、それぞれの項目を審査)
資産相談業務

  1. 関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャルプラン二ング
  2. 顧客の二―ズ及び問題点の把握
  3. 問題解決策の検討・分析
  4. 顧客の立場に立った対応

資産設計提案業務

  1. 関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャルプラン二ング
  2. 顧客データの収集と目標の明確化
  3. 顧客のファイナンス状況の分析と評価
  4. プランの検討・作成と提示

<2級>
◇学科試験
課目は1級と同じ

◇実技試験
資産設計提案業務(学科試験の試験範囲について、下記の項目を審査)

  1. 関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャル・プランニング
  2. ファイナンシャル・プランニングのプロセス
  3. 顧客のファイナンス状況の分析と評価
  4. プランの検討・作成と提示

<3級>
◇学科試験
課目は1級と同じ

◇実技試験
資産設計提案業務(学科試験の試験範囲について、下記の項目を審査)
1.関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャル・プランニング
2. ファイナンシャル・プランニングのプロセス
3. 顧客のファイナンス状況の分析と評価

【AFP登録審査試験】

  1. FP実務と倫理
  2. 金融資産運用設計
  3. 不動産運用設計
  4. ライフプランニング・リタイアメントプランニング
  5. リスクと保険
  6. タックスプランニング
  7. 相続・事業継承設計

※主に以上の項目から出題

【CFP資格審査試験】

  1. 金融資産運用設計
  2. 不動産運用設計
  3. ライフプランニング・リタイアメントプランニング
  4. リスクと保険
  5. タックスプランニング
  6. 相続・事業継承設計

※試験課目は以上の6課目。出題はFP学習ガイドに準拠。

どうやって稼いでいる?収入源は?

資格を取得し、晴れてファイナンシャルプランナーになったとします。では、ファイナンシャルプランナーはどうやって収入を得ているのでしょう? ここではファイナンシャルプランナーの主な収入源について見ていきます。

前項でファイナンシャルプランナーは、企業に勤めるケースと独立するケースの2通りあるとご説明しました。企業に勤めるケースであれば、収入源は給与です。また、勤務する会社によっては、給与に加え、成約実績に応じた歩合がもらえることもあります。

ほかに、企業に勤める形でも、業務委託契約でファイナンシャルプランナーになるケースもあります。この場合、基本給を低く設定し、成約件数による歩合制をとるケースが多いようです。収入面においては正社員として働くよりもリスクはありますが、勤務時間の自由度が高くなるため、副業としてファイナンシャルプランナーをやるには適した働き方です。

続いて独立系のファイナンシャルプランナーですが、一般的には個人顧客からいただく相談料が主な収入源です。次に大きいのが、顧客に金融商品を紹介し、契約が成立した際にもらえる紹介手数料(コミッション)です。

ただし、紹介手数料をもらう代わりに顧客からは相談料はもらわない。また、相談料をもらって紹介手数料はもらわないなど、それぞれの方針ややり方によって、収入源は異なります。

ほかにも、セミナー講師として得る講師料、自分でセミナーを開催しセミナー売上を得るといった収入源もあります。寄稿による原稿料監修料、ネットを使ったコンテンツ販売なども収入源の1つです。また、実績を重ね信頼を得ることができると、企業から顧問契約という形で顧問料をもらえる場合もあります。

マージンはどれくらい?

ファイナンシャルプランナーの収入面において一番のメリットは利益率が高い点です。

個人差はあるものの、基本的に在庫を持つ必要がないため、仕入れや倉庫代がかかりません。その分、利益率が高くなり、受け取る額も多くなります。では、実際にファイナンシャルプランナーはどのぐらいのマージンを得られるのでしょう。

まず相談料ですが、基本的には時間制で、1時間単位で料金を設定しているケースがほとんどです。

日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が認定しているCFP、AFP認定者が設定している1時間当たりの相談料の調査結果(2011年)を見てみましょう。

もっとも多いのは5,000~1万円で41%。次に多いのが1万~2万円で28%。そして、5,000円未満が25%となっています。この調査結果は少し古いもののため、現在とは異なるかもしれませんが、この調査結果からは5,000~1万万円が相場と考えられます。

また、簡単な相談から、より実務的な税金対策や設計の提案になると、マージンも変わってきます。

例えば相続相談で、相続税や贈与税対策、税軽減プランニングなどのサポートでは、全体で10万円以上になることも珍しくありません。また、資産税評価額によってもマージンは大きく異なり、税理士と連携して行うようになると、資産税評価額が5,000万円で約40万円、5億円ともなると200万円を超えることもあります。

次に紹介手数料ですが、これも紹介先の商品によって大きく異なります。ただし、形としては契約成立した初年度がもっとも高く、その後は同じ割合といったケースが多いようです。例えばある生命保険への加入が成立した際、ファイナンシャルプランナーが受け取る手数料は、初年度は年間保険料の約65%、2年目から契約終了まで毎年10%前後といった形です。

セミナーや原稿料、コンテンツ販売のマージンは、依頼してきた会社や開催規模、売上によっても変わりますし、ファイナンシャルプランナーの知名度によっても異なります。そのため、具体的な数字を挙げることは難しいのですが、有名になればなるほど、マージンは高くなる可能性があります。でも、それはごく一部で、ほとんどの場合は数をこなすことで少しずつ増やしていく形になるでしょう。

稼ぐために専門分野と確立されたマーケティング施策をつくる

企業にいながらファイナンシャルプランナーの資格を取得し、それを生かして働く分には、給与のほかに歩合がつくこともあり、やり方によっては安定を得ながら高給をつかむことも可能です。しかし、独立系の場合、仕事がなければ収入はゼロになってしまうため、ほかの同業者にはないオリジナリティーや営業努力が必須となります。資格があるからといって、簡単に稼げるわけではありません。

では、独立系のファイナンシャルプランナーは稼げない職業なのかといえば、もちろんそんなことはありません。稼げるファイナンシャルプランナーになるポイントは、誰にも負けない専門分野をつくること。そして、実際に成果を挙げているメンター(指導者・助言者)を持ち、確立されたマーケティング施策を徹底的に学ぶことです。

ファイナンシャルプランナーとして、必要な知識を身につけたうえで、これだけは誰にも負けないという分野を作り、自分の強みとして明確に打ち出すことが大切です

「相続・事業継承ならおまかせください」「誰よりも住宅ローンの軽減化を実現します」など、自分のキャッチコピーができれば、お客さまから選んでもらうことができます。

そして、もう1つのポイントである「確立されたマーケティング施策をつくること」ですが、これは実績のあるメンターから学び、実践していくことがもっとも効果的です。独学だけでやろうとすると、失敗したときのダメージが大きくなってしまいます。最初はメンターのまねでも構わないので、成功法則を徹底的に学ぶことで、寄り道が減り、最短距離で成果をつかむことができるようになります。

確立された収益を得られるために必要なこと

ここまで、ファイナンシャルプランナーとはどういった職業なのか、どうすればなれるのか、収入源、成功するために必要なことなどをご紹介してきました。

ファイナンシャルプランナーとして、もっとも必要なことは、お客さまの人生に寄り添い、お客さま目線でアドバイスを行うことであり、そのうえで信頼を得ることです。

ファイナンシャルプランナーは、人が生きていくうえで欠かせない「お金」に関するプロです。お客さまはそのプロに自分の資産をある意味託すわけですから、信頼関係が構築できなければうまくいきません。仕事である以上、収益を上げることは当然ですが、それはお客さまとの信頼関係のうえに成り立つものです。

まずは、しっかりとしたコミュニケーションを取ること。そして、自分の持つ知識、経験をフルに生かし、お客さまの人生を豊かにしていくために努めることが、結果として収益につながっていくのです。

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