セミナーを開催するにあたって内容の作り方やシナリオについてどうしたらいいか悩むことがあると思います。どんなテーマについて話すのかだけでなく、参加者の満足度、参加後の意識や行動までを設計することがポイントになります。セミナー内容の企画の仕方について事例も合わせてご紹介します。
目次
セミナー内容の作り方
まずは、最も重要なセミナーの内容を考えます。自分が自信を持って他人に解説できるテーマをピックアップし、想定する受講者が聞きたいであろう内容を挙げていきます。セミナー講師未経験者は「自分にできるセミナーテーマが何かわからない…」という方もいると思いますが、受講者が知りたいことを理解して企画すれば、満足度の高いセミナーを構築することができます。
ポイントは、「これを知らないとこんなに損をしますよ」あるいは「知っているとこんな得がありますよ」というように、受講者が参加するメリットをわかりやすく伝えられるようにすると、セミナーに参加する意義が生まれ、見込み顧客の受講を促すことができます。
セミナーの役割
セミナーの役割とは何でしょうか?参加者はなぜセミナーに参加するのでしょうか?参加者にとってセミナーの役割について説明していきます。
- ああなりたい、こうなりたい
- これを手に入れたい
- ああなりたくない、こうなりたくない
上記のように、目標に近付くためのヒント、あるいは発生しうるリスクを回避するためのヒントを得るために参加すると考えられます。つまりセミナーは、目標を達成するために必要な「知識」「ノウハウ」「時間」を補う役割を担っているのです。
タイトル設計はあと
セミナーのタイトルを先に考えて内容をつくってしまう人が多いですが、先に考えてしまうと「やりたいセミナー」になってしまいがちで、参加者が知りたい内容や参加者の役に立つ情報ではなくなってしまい集客に苦しんだり、実際に行うセミナーの内容と齟齬が起きてしまい、参加者の不満を生む結果になってしまいます。
- ターゲット
- 参加者のベネフィット(価値)
- 内容(ノウハウ、情報)
- 話せること・伝えられこと
- 伝えたいこと、知ってもらいたいこと
この5つすべての整合性をとる必要があります。まとめ方をひとつひとつ説明していきます。
ターゲットを設定し、課題を意識する
まずはセミナーを開催するにあたってターゲット(参加者)を設定してみましょう。
どんな課題(悩み)を持っているか
参加者はどんなことで困っている人でしょうか?もしくはどんな風になりたいと思っている人でしょうか?
セミナーは「ああなりたい」「こうなりたい」「これを手に入れたい」、もしくは「ああなりたくない」と、そのニーズはさまざまです。そのため、ターゲットをしぼり、そのターゲットが求める内容にしなければ、セミナーに参加する理由がなくなります。まずはターゲットを設定し、しっかりとニーズの調査を行いましょう。
属性(職業、年齢、男女、地域など)を考える
ターゲットを設定する際にさまざまな属性を考えることも重要です。考え方として以下を参考にしてみてください。
ジオグラフィック
国、地域、人口密度、都市化の進展度、気候、文化、宗教、政策などの要素。
デモグラフィック
職業、学歴、年齢、性別、国籍、所得水準、家族構成などの要素。
サイコグラフィック
社会的階層、性格、ライフスタイル、価値観、購買動機、好みなどの心理的要素。
ペルソナと言われるこの属性設定の要素を参考に、具体的な人物像をイメージしください。セミナーに参加するであろう人がどの属性にある人か?を考えてセミナーの内容、タイトルなども含めて考えていく必要があります。
企画内容のシナリオは頭から考えずゴールから
セミナーを開催する理由は何でしょう?
セミナー自体を商品として有料で販売している場合にはノウハウや知識を共有し、伝えたノウハウを自発的な行動をもってして目標を達成してもらうことになります。これをフロントエンド商品と言います。
一方、マーケティングの一環としてセミナーを開催する場合はセミナー参加者に対し個別相談への誘致、体験会への誘致などを行い、そのイベント等への参加が目的となります。これをバックエンド商品と言います。
どちらもゴールは目標に対して「行動を起こす」ことです。どちらのタイプのセミナー参加者も、セミナー終了後に知識を得ただけではなく、アクションを起こすことをゴール設定にする必要があります。
シナリオは箇条書き、参加者の感情変化を意識する
セミナー内容を考えるときの構成のまとめ方について説明します。起承転結で4つの構成から考え、ストーリーを意識しながら構成を考えることをおすすめします。
課題の再認識
まず序盤はセミナーの簡単な概要を説明するとともに、参加者の問題や意識を再認識させることを盛り込みましょう。課題となっていることを箇条書きで説明したり、チェックシートなどを用いたりして自分の課題(できないこと、知らないこと)を明確にさせることで参加者のマインドセットを促します。
また、「今回のセミナーのテーマはこれですよ!」と先に説明しておくことで、思い描いていたセミナー内容とのギャップを埋めてしまい、不満の抑制にも効果があります。聞いているうちに思っていたセミナーと違うと思うと、後から怒りが募ってくるものです。全体の整合性をとるためにも、この点は押さえておきましょう。
参加者の感情は「ふむふむ」とった状態です。
問題が起こっている背景
参加者の課題や問題に対して、その背景を説明しましょう。この時点で、時代背景や法律、世間事情がかかわっている場合があるのですが、この部分に関しては統計データを用いたり、ニュースリソースを用いるとよいでしょう。
ただ単に「この問題の理由がここにある」と伝えても、講師を信用する理由にはなりません。自分の発する情報や課題に対して、事実として信用してもらえる情報を上手に付加するようにしてください。
参加者の感情は「そうなんだ」もしくは「そうだよね」です。
課題を解決するノウハウ、知識
この章が講師としてのノウハウを最も発揮するところです。課題解決の方法、知識等について存分に盛り込んでください。
参加者の課題を解決する方法としてどんな方法があるのか、解決したどんな事例があるのか、そして課題を解決できる理由はどこにあるのかを証明する必要もあります。
参加者の感情は「なるほどなるほど」「そんな方法があったのか」といった状態です。
ワークショップや交流会なども含めて実践し、そのセミナーの中でも変化が見て取れるような内容であれば参加者の感情は「すごい!」に変わります。
手に入れられるものは何か
課題を解決する知識、ノウハウを得て実践すると参加者はどうなるのでしょうか?その絵を描かせてください。アクションにつながる重要なポイントは欲求です。
- よし、やってみよう!
- 私もああなりたい、やってみたい
- もっと知りたい、知識を得たい
- このままではダメだ
セミナーを通じて、上記のような感情を参加者が抱いている状態を目指しましょう。
以上、4つの章でシナリオを考え企画内容をまとめてみてください。せっかくの機会だからと言って内容を盛り込みすぎたり、早口でしゃべらないといけないような構成にしてしまうと、セミナー終了後「結局のところなんのセミナー?」と思われてしまうので注意してください。
セミナー企画内容の例
実際にコンサルティングを行った整理収納のセミナー事例を紹介します。
ターゲット:50代~60代女性
課題:終活の準備の仕方がわからない
ベネフィット:幸せな老後生活
ゴール:終活を軸とした整理収納に関する仕事の依頼、相談
ストーリー:
- 終活が流行り。終活の必要性を感じている人は60代で8割程度
- しかし実際に行動している人は10%に満たない事実
- 整理収納の現場から依頼される仕事は60代だが娘さんからの依頼がほとんどという現実
- 理由はモノにつまずくという理由などでケガをし、寝たきりになり片付けができないから
- 終活(整理整頓)は元気なうちにしておかないと子どもに迷惑がかかる
- 専門業者に依頼しないといけなくなる前に準備が必要
- 終活で外部へ依頼しないといけないレベルをセルフチェック
- 早めに終活を行うことで不要なものは買わない体質に
- 終活の結果、余暇ができ時間的余裕から新たな趣味を見つけたり、夫婦で旅行に行くようになった
- 幸せな老後のために終活は早めに準備
現場経験から、終活の準備としての家の片づけは60代からでは遅い。家の整頓ができていないことで、ものにつまずいてケガをし、寝たきりになってしまって片づけができないということが多い。整理整頓を早めに実施することで不要なものを買わなくなる。それにより、経済的・時間的余裕が生まれ、幸せな老後につながるという内容です。自身の経験を盛り込むことで説得力を増す内容としています。
このセミナー事例は先に紹介した4つの章から項目洗い出し、不要なものは削除していきまとめたものです。
企画内容に取り入れたい仕掛け
セミナーで上手に内容をまとめ、説得力をもってアクションへつなげるための仕掛けとして、いくつかの要素を組み込むことができると効果的です。
データの引用
講師が、「この事象はこうなっています」「ここに問題があります」「こんな理由が存在しています」とただ伝えても、参加者がその情報を信用するには少しハードルがあります。
講師の意見や話を信用してもらい、納得してもらう動機付けには統計データや調査データを盛り込むことをおすすめします。厚生労働省や総務省といった国の調査データをはじめ、インターネット上には民間会社が調べたさまざまな調査データが存在しています。テーマに合わせた情報を探して引用してみましょう。利用する際は引用元を記載することも忘れないでください。
ギャップのあるトーク
一般的に知られている事実や知識に対して、実はまったく違う実態が存在している。または、まったく知られていない事実が存在しているということを認識させるような内容を盛り込むことです。
例)相続税は人口の数%しかかからない→争族は1/3の確率で起こっている事実
例)京都は寺院で有名→しかし寺院数日本一は滋賀県
など
ワークショップ・交流
参加者同士で行うワークショップも取り入れてみるといいでしょう。ワークショップの種類としてはセルフチェック、意見交換、書き出してみるなどいくつかの種類があります。
ワークショップは参加者同士が交流をするなかで、
・自分とは違う他人の意見を聞ける
・他人の目からの意見をもらえる
・自分自身を知るきっかけになる
など、多くの学びの機会が得られるとともに、自分自身で考えるきっかけを与えることで、気づきを得られる仕掛けにもなっています。
例えば「一生懸命働いているのに、貯蓄できない要因は何か?」をグループ内で話し合ってもらい各グループで発表してもらうと、同年代で似たような悩みを複数拾い上げることができます。受講者は、それらの問題や悩みを少なからず持っていますから「やっぱりみんなも悩んでいるんだ」という意識がインプットされます。
そこに講師が解決の糸口を提供することで、参加者は大きな満足を得ることができます。
【まとめ】内容が充実したセミナーにするために
セミナーの企画内容を考える際に、自分の損得や言いたいこと、伝えたいことを中心に組み立ててしまうことがよくあります。企画の構成については、第三者の意見も取り入れて客観的な目線でまとめるようにしましょう。
また、ゴールの設定をきちんと意識することと、あまり内容を詰め込みすぎないことも重要です。
ゴールを設定し、4つの構成を軸に組み立てていくことで排除すべき内容も見えてきます。成果に結びつく企画内容にまとめてみてください。