「大人かわいい」「散らからない家」を設計する無添加住宅のプロ中上均

「大人かわいい」「散らからない家」を設計する無添加住宅のプロ

中上均

住宅の新築、リフォームを手掛け、「大人かわいい」「散らからない」住まいをデザイン

　「当方は、外壁や内壁、天井には、サンゴが化石化した石灰石を原料としたしっくいを施し、床や建具には丸太から切り出した無垢材、屋根材は天然石を使います。断熱材には炭化コルクや、飲料ボトルに多用されるポリエステル繊維の製品を採用。塗料は柿しぶ、接着剤は米のりやニカワを使用しているのが特長です」

　そう力強く話すのは、香川県丸亀市で、住宅の新築やリフォーム、リノベーションを手掛ける「無添加デザイン工房」の代表、中上均さん。兵庫県に本社を置く「無添加住宅」の代理店として、体に優しい住まいを提案しています。

　「実は私自身が、合板などの建材が出す化学物質を原因とする、シックハウス症候群に苦しんできました。喉の痛みや頭痛、吐き気などの体調不良を引き起こしますが、体にやさしい自然素材を取り入れることで症状がおさまりました。現在、自宅をモデルハウスとして公開しており、訪れた方も『空気がきれい』と違いを実感してくださいます」

　設計・施工の専門性を備えた一級建築士のほか、空間を彩るインテリアコーディネーターの資格も持つ中上さん。住む人の健康に配慮しながら、二つのコンセプトに基づいて家づくりをしています。

　「一つは『大人かわいい家』です。メルヘンチックなわけではなくて、また奇をてらうわけでもなく、本当に良いものだけをそろえ、おしゃれに仕上げるイメージです」

　もう一つが、「散らからない家」。引っ越しを19回もしてきたという自らの経験も生かし、顧客の生活スタイルに合った、自身が実践している片付けがしやすい間取りや収納をプランニングしています。

大工の家に生まれ、インテリア商社、住宅会社を経て無添加住宅へ

　1960年に大工一家の3代目として生まれた中上さん。幼い頃から父親が働く現場に足を運んでは、仕事の手伝いをよくしていたそうです。

　父の姿を見て育ち、職人を志しますが、1973年に起きたオイルショックにより大型公共事情などが凍結・縮小し、建設業界は冬の時代を迎えていました。「先行きが不透明だったため、父から『就職率が高い商業高校へ行ってはどうか』とアドバイスがあり、それに従うことにしました」

　地元の高校を卒業後は、当時の防衛庁の職員になりますが、徐々に、かつて抱いた建築関係の道に進みたいという思いを強くします。景気が上向いてきたこともあって退庁。インテリア商社を経て、住宅事業を展開する「高杉建設（現・創建エース）」に入社します。

　「会社が『無添加住宅』の代理店となった際、私が営業担当を任されました。シックハウスによる不調に悩まされることもなくなり、理想の家だと感じましたね」

　その後、「千年の杜」（旧・高杉建設）がリフォーム事業からの撤退するのを機に50歳で退職。「無添加住宅」の本部に就職し、横浜展示場の初代店長を務めるなど、13年にわたって自然素材の家を普及するべく尽力します。

　ノウハウを養い、2022年10月に実家の「中上建設」を継いで「無添加デザイン工房」をスタートさせました。「人に恵まれたおかげで、多くのことを学ばせてもらったと感謝しています。私は勉強が好きでしたから、業務に必要な資格をその都度取得してきたことも、現職で大いに生きています」

気密性や断熱性、耐震性を備え、夏は涼しく、冬は暖かく、地震に強い家を

　建築の世界でキャリアを積んできた中上さん。豊富な知見をもとに、夏は涼しく、冬は暖かい高気密・高断熱の室内環境を目指すほか、頻発する地震に備えて耐震性を強化するなど、性能面についても考慮しています。

　「素材にもこだわるので、初期費用が高くなる印象を持つかもしれませんが、長い目で見れば、維持・管理にかかるランニングコストは低く抑えられると考えています。外気温の影響を受けにくく、調湿作用のある小さな空気胞を持つしっくいや無垢材を用いることで快適な住空間を保ち、冷暖房費を抑えることができます」

　また、ビニールクロスなどと違い、年月を経るごとに味わいを増していくため、壁や床を何度も張り替える必要がないと言います。「省エネや、温室効果ガスのCO₂削減に貢献する住宅に用意されている補助金や、減税措置についても親身に相談に乗ります。資金面の負担を軽減できるので、申請することをおすすめしますが、なにぶん手続きが煩雑です。私は慣れていますので、各種制度の利用も含め、お客さまの家づくりを全力でサポートします」

　今後は、住まいに関するセミナーも検討。「住宅ローンをはじめ、知っておくべきことはたくさんありますから、ご好評いただければ、定期的に開催していきたいですね」と意欲を見せます。

　中上さんは、近年、増加している空き家にも着目。「地域活性化のためにも古い家屋を再生し、賃貸や販売の仲介も手掛けていくつもりです」と展望を語ります。

（取材年月：2023年9月）

「無添加住宅」の代理店として、自然素材を用いた体に優しい住まいを提案

住宅の新築、リフォームを手掛け、「大人かわいい」「散らからない」住まいをデザイン

大工の家に生まれ、インテリア商社、住宅会社を経て無添加住宅へ

気密性や断熱性、耐震性を備え、夏は涼しく、冬は暖かく、地震に強い家を

専門家プロフィール

Other Interview