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味と安全性に妥協せず、おいしさと安心を兼ね備えた農作物を岩手から発信

IT思考で品質を高める農業のプロ

大櫻裕之

大櫻裕之 おおざくらひろゆき
大櫻裕之 おおざくらひろゆき

#chapter1

農薬や化学肥料を控えた特別栽培でりんごやお米を生産し、全国へ直送

 岩手県盛岡市乙部地区。東北地方最大の北上川水系に属する一級河川・乙部川がもたらす清らかな水と、奥羽山脈と北上高地に囲まれた盆地特有の寒暖差などを生かした、りんごの産地として知られています。

 豊かな環境のもと、「大櫻農園」を営む3代目・園主の大櫻裕之さんは、特別栽培で10種類以上のりんごや米を生産し、農産加工品を手掛けています。

 「当園のりんごは、甘みと酸味のバランスが取れた濃厚な味わいが特長です。果肉は締まりがありながらもみずみずしく、芳醇な食味とジューシーな食感を兼ね備えています」

 りんごは収穫時期の見極めが品質を大きく左右します。熟度が進みすぎれば輸送中に実が劣化し、早すぎれば糖度や果汁が不十分になります。大櫻さんは完熟のタイミングを慎重に判断し、温度・湿度ともに適切な冷蔵管理を徹底することで、鮮度を保っています。

 「りんごやお米はオンラインショップで全国へ直送し、定期便も用意しています。飲食店のほか、都内の百貨店やスーパーマーケット、学校給食にも採用されています。県内では空港やホテルなどで加工品を販売し、品種ごとに味比べができるりんごジュースは特に好評です」

 特別栽培は、農薬や化学肥料の使用量を地域の慣行レベルより抑えて生育する方法ですが、大櫻さんは、単に基準を満たすことを目的としていません。

 「自分や家族が、安心して食せるかどうかを指標にしています。手間も時間もかかりますが、味も安全性も妥協せず、お客さまに胸を張ってご案内できる農法により、大地の恵みを受けたおいしさを届けたいと思っています」

#chapter2

草生栽培と特別栽培により環境負荷を低減し、農作物への信頼性を可視化

 大櫻さんは約20年間、都内の医療系IT企業でシステムエンジニア(SE)や営業、管理職に従事。農園を継ぐためにUターンし、農業大学校や農業高校特別専攻科に通い、地域をけん引する先進農家でも研修して、2023年に本格的に就農しました。

 「2年間の学びで知識が深まり、自分で判断できることが増えました。同時に人脈も広がり、自信を持って農業に臨むことができました」

 2024年には2代目の父から事業を継承。園地の下草を除草せず、土に還元する伝統的な草生栽培も引き継ぎ、「JA全農いわて」による特別栽培の認証も取得。自然に近い状態で栽培する先人の知恵を実践するとともに、新たなガイドラインも取り入れ、環境負荷を低減し、農作物に対する信頼性を可視化しています。

 「経営基盤を強化するため、ミニトマトやブルーベリーの栽培、ジャムやジュースといった加工品の販売にも着手しました。扱う野菜や果物、商品の幅を広げ、業容の拡充を図っています」

 枝葉の剪定や、適度に実を間引く摘果など、日々の業務が生長にどう影響するのか。どんな成果を目指すのか。ゴールを想像しつつ、一つ一つ工程を積み重ねる大櫻さん。農作業とプログラミングは「似ている」と話します。

 「プログラムでも“結果を想像しつつ”コードを書き、実際に動かしてエラーがないかを確認します。りんご栽培でも良い物ができる想像をしながら、剪定や施肥等の作業を行い、収穫が1年の仕事の答え合わせです。出来栄えを検証して改善を加えることで、皆さまに喜ばれる良質な品を育てるノウハウを蓄えています」

大櫻裕之 おおざくらひろゆき

#chapter3

若い世代にとって進路の選択肢になるよう、農業を持続可能な仕事へ

 資材や燃料の高騰、価格の低迷、天候による出荷量、就労時間の変動など、農業を取り巻く状況は厳しく、収入や労働量の問題から、後継者不足に悩む農家も少なくありません。

 「早朝から晩まで休みなく、といった昔ながらの働き方では成り手は増えません。今の時代だからこそ、農業を進路の選択肢の一つにすることが使命だと感じています。直販の拡大や加工品の展開に取り組むのは、経営を安定させるため。自分がビジネスとして形にすることで、若い世代に希望を持ってほしいと考えています」

 生産者の裾野は広く、培ったキャリアや人生経験を存分に発揮できると提言。大櫻さん自身、SEや営業職としての知見が、ECサイトによる販路開拓、新規商品の開発に生きていると言います。地域のイベントに出展して自慢の品を発信したり、リモートで来店者とコミュニケーションを取ったり、息子や友人らが農業に関心を示す様子を温かく見守っているそう。

 「私自身が外で得た経験が今につながっているからこそ、まずは広い世界を見てほしい。農業には生物学的な知識だけでなく、農薬(化学)、農機具(機械・電気)、天候(気象・地学)、経営(経済・経理)といったさまざまな知識・経験が役立ってきます。他の業種、職種で身に付けた知識や技術を、現場に反映してくれることを願っています」

 法人化を視野に入れ、就農希望者の受け皿となる体制づくりも構想。耕作放棄地の活用や、家畜のフンを肥料に用い、作物を飼料に使い、農業と畜産を循環させる地域内での耕畜連携も実現したいとのこと。

 「農業を持続可能な仕事へ。つくる人も口にする人も、安心して暮らせる未来を創造したいですね」

(取材年月:2026年2月)

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大櫻農園

IT企業で培った検証と改善の思考を農業に応用。特別栽培と完熟管理を徹底し、味と安全性を両立。百貨店や学校給食にも採用される品質を支えています。

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