岩手のブランド米「銀河のしずく」を栽培する稲作のプロ
平賀正彦
Mybestpro Interview
岩手のブランド米「銀河のしずく」を栽培する稲作のプロ
平賀正彦
#chapter1
岩手県が誇るブランド米「銀河のしずく」。「炊きあがりが真っ白で、粒が大きいのが特徴。もっちりと粘りがあるお米です」と紹介するのは、古くから米づくりが盛んな盛岡市猪去地域で稲作を営む「平賀ファーム」代表の平賀正彦さん。
同品種は、2016年に県産オリジナル米としてデビューし、6年連続で食味評価の最上位「特A」を獲得しています(日本穀物検定協会、米の食味ランキング、2018年~2023年)。平賀さんは、約40ヘクタールの耕作地で、2017年から「銀河のしずく」を栽培しています。
2024年から新たな取り組みとして、化学肥料の使用を抑え、有機肥料の割合を5割に増やしました。きっかけは、例年の約2倍に高騰した化学肥料のコストダウンを図るためだったと言います。
「単に肥料の使用量を減らしたこともありましたが、品質に関わるため、適切に肥料を使うことは必要です。有機肥料は、環境にやさしく土壌微生物の活動を活発化するので、長い目で見ると土壌に良い影響を及ぼし、持続可能な農業に貢献できると考えました。すぐに効果は出ないものの、将来的にお米の味もよくなると期待しています」と平賀さん。
あわせて、業務用米として「つきあかり」も栽培し、市内にある複数の食堂に納入。そのほか、りんごの「ふじ」や白ネギの栽培にも取り組んでいます。
「りんごは、果汁100%のジュースに加工しています。ホームページでは、りんごの加工品のほか、『銀河のしずく』の白米と玄米を販売し、お客さまに直接届ける場も設けています」
#chapter2
平賀さんが農業の道に進んだのは45歳のとき。地域で50年続く家業の米農家を父から引き継ぎました。
「子どもの頃から手伝いを通して農業は身近にありましたが、20歳で家を出て、宮城でトラックドライバーとして働いていました。Uターンして地元に戻ると、近隣農家の高齢化や後継者不足により、使われなくなった農地を引き受けている状況を目の当たりにしました。いずれ父が引退すれば、地域の人が困ると思い、自分がやるしかないと決意しました」
当初はトラック運転手と兼業で始め、岩手大学農学部と県が運営する「いわてアグリフロンティアスクール」で農業経営を学んだといいます。
「今の農業の現状を知りたいと思って入校しました。講師に、県内外で桁違いの大規模農業を営む経営者が数多くおり、財務管理など経営視点を持つ重要性を実感。長く事業を続けたいと2021年に法人化しました」
父の代では約20ヘクタールだった農地が、近隣農家から託されて増え続け、今では約2倍に。「岩手県版農業生産工程管理(GAP)」の認証も取得し、食品安全や環境保全、労働安全など、農業経営のレベル向上に取り組んでいます(現在確認制度は終了)。
平賀さんは、3人の社員(内20代2名)とともに田畑を守っています。
「米作りの担い手が減る中、『農業をやりたい』と若い世代が携わってくれるのは幸運なことです。研修生も受け入れ、トマト農家として独立した人も。引退した農家さんが繁忙期に手伝ってくれたり、畑作のアドバイスをくれたり、地域とのつながりを大事にしています。 また、後継者にも自身の仕事の休日には手伝ってもらい、ファームの一人のスタッフとして汗を流してもらっています」
#chapter3
「作物を育てるやりがいは、何といっても収穫です」と笑顔を見せる平賀さん。
「おいしいお米ができるまでには、害虫や病気から守るために田畑の周辺環境を整えるなど、数々の地道な作業があります。『やっと今年もできたなぁ』と喜びをかみしめながら刈り取り、新米を口にして『今年もうまい!』と。農産物は〝生産する〟と言われますが、私たちは愛情を込めて、手間ひまをかけて育てています。そんな思いを少しでも知ってもらえたらうれしいですね」と話します。
2024年夏の全国的な米不足による値上がりにも触れ、米作りを取り巻く厳しい環境についても話しました。
「これまでどんなに物価が上がっても、20年間、米の値段は下がり続けてきました。農業資材などのコスト増を販売価格に転嫁できず、米農家は収益を出せるか、経営として成り立つのかギリギリの状況にあります。今回、米の価格が上がったことで、『来年もまたがんばって作ろう』と久々に前向きな気持ちが生まれました」
米農家の減少は、主食である米の安定供給が揺らぐ事態にもつながります。
「米に限らず、JAグループが提唱している、日本で消費する食べ物はできるだけ自国で生産するという〝国消国産〟を広めたいですね。毎年、新しい栽培技術も取り入れながら、そして失敗を重ねながらこれからもおいしいお米をお届けします。ぜひ日本のお米を食べてください」と呼び掛ける平賀さん。白ごはんの向こうにいる作り手に思いをはせることも、米作りの未来を支える一歩になるはずです。
(取材年月:2024年12月)
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Profile
岩手のブランド米「銀河のしずく」を栽培する稲作のプロ
平賀正彦プロ
農業
株式会社平賀ファーム
岩手のブランド米「銀河のしずく」を主軸に、盛岡市で50年続く米農家を経営。環境にやさしい有機肥料を取り入れ、持続可能な稲作の実現を目指しています。農業経営スクールで学び、「岩手県版GAP」認証も取得。
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