自作絵本を通じて野犬・保護犬問題の周知に取り組むプロ
石倉強志
Mybestpro Interview
自作絵本を通じて野犬・保護犬問題の周知に取り組むプロ
石倉強志
#chapter1
「保護犬や野犬について少しでも関心を寄せてほしい、そんな願いをこの作品に込めました」
自ら手掛けた絵本「やけんとあったかいおうち」を手に語るのは、群馬県桐生市の「medaka親爺」の代表・石倉強志さん。2023年まで会社員として働いていたものの、がんの発覚を機に退職。現在は絵本作家・イラストレーターとして活動するとともに、人間の都合で手放され、処分されてしまう犬たちの現状について周知すべく尽力しています。
「ステージ4で、医者からも『助かると思わないでください』と言われましたが、妻と障害を持つ愛犬たちを残して先に死ぬわけにはいかないと気持ちを強く持ち、抗がん剤治療を行っていたところ、奇跡的に復調しました。せっかく生かしてもらった命ですから、保護犬や野犬のために何かできないかと考え、ペンを手に取ることにしました」
「やけんとあったかいおうち」は、小学校低学年の子どもに向けた絵本です。厳しい生活を送ってきた野犬たちがボランティアに保護され、人間と幸せに暮らすという心温まるお話。抗がん剤の副作用でいまだまひが残る手に魂を込め、イラストを描き上げました。そこに妻の篤子さんが文章を添えて、作品が完成したのです。
「夫婦で制作した絵本を、文芸社が主催する『第26回えほん大賞』に応募しました。惜しくも受賞は逃しましたが、担当者から『少し手直しして自費出版してみませんか』と打診されました」
石倉さんは、2024年12月にクラウドファンディングで協力を募ったところ、81人から支援を受けることに。販売に向けて動き出しています。
#chapter2
1958年に前橋市で生まれた石倉さん。小さい頃から手先が器用で、機械いじりが好きな子どもでした。
高校卒業後は進学しますが「自動車整備士になりたい」という思いが膨らみ、大学を中退して専門学校へ。技術の習得に励むなか、1年時に兄がスキー中の事故で他界し、家業へ入る決断をします。「実家は家庭用品販売業を営んでいましたが、後継ぎとして期待されていた兄が亡くなったため、私が代わりを務めることになったのです」
しばらく業績は好調でしたがバブル崩壊で経営が傾き、石倉さんが30代半ばの頃、倒産の憂き目に遭います。以降、薬局スタッフや防水工事職人、病院事務、燃料の輸入など多様な仕事を経験します。
「最終的に、伊勢崎市で同級生が営んでいた廃プラスチックのリサイクル工場に就職し、部長職に就きました。環境保全に向けた国関連のプロジェクトもありやりがいを感じていましたが、がんが見つかり、やむなく退社しました」
失意に暮れる石倉さんを親身になって支えてくれたのが、看護師をしている篤子さんでした。「私ががんだと分かったとき、病気について調べ、闘病中はさまざまなサポートをしてくれたのです。関西出身の妻はとにかく笑わせてくれて、本当に気が楽になりました。感謝してもし切れません」
病を乗り越え、野犬の保護に取り組む人たちの姿や、悲しい末路を迎える犬たちについて知ってもらおうと小さなパンフレットを作製したことが、絵本への足掛かりとなりました。
#chapter3
絵画の制作や販売、絵本の出版に当たって用いている屋号「medaka親爺」は、石倉さんが2010年にメダカの飼育と販売を目的として立ち上げたものです。「事業が本格始動する前に撤退を決めて、屋号とホームページが残っていました。もったいないので活用することにしたのです」
自身が保護犬や野犬の世話に心を砕くようになったのは、2014年に篤子さんと結婚してからです。「妻は、右腕奇形のダックスフント3匹と暮らしていました。この子たちは無計画な繁殖を行う業者のもとで劣悪な環境に置かれ、保健所に送られる寸前で妻が引き取ったのです。その後、妊娠していた野良の柴犬を迎え入れ、現在はその子どもを含め8匹まで家族が増えました」
石倉さんはこれまで、日本各地で活動する野犬の保護団体と積極的に交流を重ねてきました。体力面に不安を抱えるため、現場を手伝うのは難しいですが、新規事業を構想しているそうです。
「鹿の肉や骨を使って人間用・動物用の健康食品や、除菌・消臭アイテムを開発したいと考えています。人にも動物にも優しい商品を届けたいという思いがあり、信頼できる仲間と一緒に新たな挑戦を続けていきます」
何よりも大切にしている絵本の創作にも力を注ぎ、次回作も企画。「やけんとあったかいおうち」よりも少し重たい内容にするつもりです。「ペットブームの裏で多くの命が奪われている現実があります。殺処分ゼロを目指し、私にできることをしていきたいですね」
(取材年月:2025年2月)
リンクをコピーしました
Profile
自作絵本を通じて野犬・保護犬問題の周知に取り組むプロ
石倉強志プロ
イラストレーター
medaka親爺
野犬や保護犬の問題に関心を持ってもらうために、小学校低学年向けの絵本「やけんとあったかいおうち」を自作。自費出版に際し、クラウドファンディングで81人から135万円の支援を受ける。
\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /
掲載専門家について
マイベストプロ群馬に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または上毛新聞社が取材しています。[→審査基準]