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木組みの美しさを保ち、オリジナルの仕口inner金具「アフタイト」の製造・販売

木組みの美しさを維持させ耐久性を高めるinner金具のプロ

石田徳弘

石田徳弘 いしだとくひろ
石田徳弘 いしだとくひろ

#chapter1

変形したり、ひびが入ったりしやすい無垢木材にも負担を与えず接合部を固定

 「当方は無垢材を用いた家づくりやリフォームを手掛けるとともに、仕口用inner金具『アフタイト』の製造・販売しています」と話すのは、群馬県高崎市の「石田工務店」代表の石田徳弘さん。

 仕口とは柱や梁が交差する部分を指し、アフタイトは木材の中に埋め込んで使用し軸ボルトがステンレス製の金具です。仕口を補強すれば耐震性の向上が期待できる上、古民家や社寺仏閣のように柱や梁を見せる木造建築でも意匠性を損なわずにすみます。

 「アフタイトは、締め付ける摩擦抵抗の技術を応用してクギ・ビスを使わない画期的な接合方法で、変形したりひびが入ったりしやすい無垢材にも負担を与えず接合部を固定できます。既定寸法以外にも、現場に応じて仕様を柔軟に調整できます」

 アフタイトは決して安価ではありませんが、「木組みを愛し、拘りを持って美しい空間に仕上げようとする方に適切な金具を届けたい」という石田さんの思いに共感した設計事務所や工務店から根強い人気があります。これまでに、靖国神社や福井城の御廊下橋、草津温泉の御座乃湯、湯治広場で採用された実績があります。

 「『意匠性より安い方がいい』『慣れていないから使いたくない』という声もありますが、性能には自信を持っていますので一度お使いいただければ良さを理解してもらえるはずです。ある現場技術者から、『アフタイトは施工性に優れ、部品一つ一つが良く考えられている製品です』とお褒めの言葉をいただいたこともあります」

#chapter2

木材を大切にする父の会社を継ぎ、無垢材に適した仕口金具を構想・開発へ

 1956年旧箕郷町に生まれた石田さん。昔から手先が器用で、ゼンマイで動く自動車のおもちゃをモーターで動くように改造して楽しむような子供だったと言います。

 普通高校卒業後、父が設立した石田工務店に入社。父親から木と木を組み上げる日本の伝統的構法・木組みを教わりつつ独学で建築設計の勉強に励み、程なくして二級建築士の資格を取得しました。「鉛筆の持ち方、線の書き方からこつこつと学びを重ね、裏紙が真っ黒になるまで基本を繰り返しきたからこそ成長できたのです」

 1994年に父の後を継いで代表取締役に就任。自らも現場の先頭に立つなかで、無垢材に適した仕口金具の構想を練るようになります。

 「当初、建物金物は、施主さまのためというより、現場作業者が取り付けやすいように作られた物が、まちにあふれていました。木組使用には、非常に目立ってしまう上、無垢材への過剰の穴開けは木材の強度を低下させる断面欠損を起こしています。父は木材をとても大切に扱う人でしたから、天然木が持つ威風堂々とした風格を保つためにも、何とか金物を隠す事ができないかと試行錯誤していました」

 石田さんは、1998年アフタイトの試作品を完成させ、翌1999年に商品化をはたしました。「無垢材用に開発しましたが、『集成材にも取り入れたい』との声に応え、いずれでも活用いただけます。これまでに、グットデザイン賞、群馬県創意くふう作品展で文部科学大臣奨励賞・特許庁長官奨励賞など、数多くの賞をいただきました」

石田徳弘 いしだとくひろ

#chapter3

木組みの完成度を高めるアフタイトをより良い製品にするため、軽量化と顧客の要望に応えて

 木材を巧みにあやつり、建物を形づくる木組みの完成度を高めるため、試行錯誤して生み出したアフタイト。より優れた商品にすべく、石田さんが現在挑戦しているのが軽量化と顧客の要望に出来るだけ応える事です。

 「以前、遠方のお客さまにお見積もりを出した際、『やはり近場で用意しようと思います。送料分を引いてもらえれば決められるのですが』と言われた経験があります。これは断り言葉でした。特許製品ですので、他社では製作出来ないはずです。この経験から、輸送費を低減させるためにも軽量化は重要だと再認識しました」

 そこで、石田さんが考えたのがバー形状からパイプ状にすることでした。強度を計測してみたところ、ほとんど変わらない値がでました。その変更は成功を収め、軽量化が実現しました。この形状変更により、穴隠しのカモフラージュ機能も更に向上しました。

 「お客さまが求めていたのは、リフォームの工作物修理に使用する、自由に曲げられる金具でした。『当社の方法でよろしければ、ご協力させていただきます』とお伝えしたところ、『現場の工作物の取り付け角度が不明なのです』とご相談をいただきました。しかし、当社は長年培ってきた自社金属加工技術とアイデアで、そのご要望に応えられるという確信がありました。0°から40°まで自在に角度を調整し、固定できる特殊な金具の実現は、もう目前に迫っていたのです」

 「今後の方針として、コストをできるだけ抑えつつ、軽量でありながら高い強度を持つ新たな金属材料の研究に注力します。課題も多いですが、多大な可能性を秘めています。中学校2年のとき、『将来の夢は普通の工務店とは一味違った工務店を経営すること』と作文に書きました。今、私はまさに夢の途中にいます」

(取材年月 :2024年8月)

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石田徳弘

木組みの美しさを維持させ耐久性を高めるinner金具のプロ

石田徳弘プロ

建設業

有限会社石田工務店 木組inner金具 アフタイト工房

木造建築で柱や梁が交差する部分「仕口」用のinner金具「アフタイト」の開発販売。木材の内部に埋め込むので、外観を損なわず木材の持つ美しさや温かみも失わず耐久性を高められ、自由な寸法調整が可能です。

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