困り事の早期解決を信条とする井戸工事のプロ八尋信行

困り事の早期解決を信条とする井戸工事のプロ

八尋信行

井戸掘りや改修工事、ポンプ交換など新設からメンテナンスまでサポート

　福岡市を拠点に、さく井業を営む「ウェルサポート」の代表・八尋信行さん。井戸掘りや井水設備の改修、ポンプの交換・取り付けを請け負っています。

　「長い年月をかけてろ過された地下深層水をくみ上げる井戸水は、カルキ（塩素）を含んでいない天然水です。家庭用水として料理や飲料水、洗濯、お風呂、ガーデニングなどに使用され、災害時に水道供給が途絶えた際も水を賄うことができます」

　新設にあたっては、深層部まで掘り進めるロータリー工法や、硬い岩盤層を打ち砕くエアーハンマー工法を駆使して水脈にアプローチし、井戸を仕上げます。最終的には公的機関による水質検査まで実施します。

　「福岡にあるホテルや銭湯、老人ホーム、病院の多くは、コスト削減のために井戸水を利用しています。施設のほか、工場用の冷却水、洗車用水、農業、畜産業、食品工場など、大量の水を必要とする事業所では幅広く活用されています」

　八尋さんのもとでは年に約15件のボーリング工事を手掛け、ポンプのメンテナンスも同時に請けているほど修理の要請も多く、水が出なくなった、砂が混じって濁っている、臭いが気になる、水圧が弱いなど、さまざまな声に応えています。

　「井戸は昔、先代が井戸を掘っていて代替わりして20～30年と年数がたってから何かトラブルがあっても、どこに相談していいか分からないという方は少なくありません。当方は、不具合が生じた時に気軽に頼ってもらえる会社でありたいと思っています。メールで質問をもらい、アドバイスを返信しただけで『助かった』と喜ばれたこともあります」

自然が相手の井戸掘り。突き詰めても答えがでないからこそ面白い仕事

　2020年12月に創業した八尋さん。以前は自動車関連の接客販売や、鋼材や管材の営業に従事していました。

　「私の祖父と父が井戸関係の事業に携わっていたのですが、若い頃は絶対にやりたくないと考えていました。案件数に波があるし、体力的にもキツイし、サラリーマンが一番だと思っていました」

　10年ほど会社勤めをしていましたが、父親に「後を継がないか」と声をかけられたのを機にさく井業の道へ。大学生の頃にアルバイトで手伝ったものの、本格的に取り組むのは初めてでした。

　「実務を積むほどに、井戸の仕事の奥深さにひかれるようになりました。井戸掘りは、知識や経験がモノをいうプロフェッショナルの世界です。どこを掘ればどんな水質の水がどれくらい出るか。砂の状態や地層などからある程度の予測はできても、実際には掘ってみないと分かりません。突き詰めても答えが出ない面白さが魅力ですね」

　過去には、予想していたよりも質の良い水が出たため飲料水として使えたことや、想定以上の水量が出たことで、クライアントが開業する店舗数を増やすなど事業規模を拡大したこともあるそう。

　「お客さまのお役に立てることがやりがいで、水が出た時に皆さんが笑顔になるのもうれしく原動力になっています」

　屋号の「ウェルサポート」は、英語で井戸を示す「well」と、支える・支援するという表現の「support」を合わせた言葉で、「井戸に関する困りごとを解決したい」との願いを込めています。

高齢化が進むさく井業界を盛り上げるため、同業者の連携強化が目標

　現在、福岡市内のさく井業者は7～8社程度。福岡県内で見ても10数社程度。経験に基づいた高度な技能が求められるがゆえ高齢化が進み、従事者は65歳以上がほとんどだとか。設備投資で資金を要するため新規参入のハードルが高く、仕事の難しさから人材確保も困難な状況だと言います。

　「私は40代ですが、まだまだ若手の部類。実践で得たノウハウとスピード感のある対応が強みです。現在は一人で調査や打ち合わせ、施工、アフターフォローまで行っていますが、今後は従業員を増やして多くのニーズに応えることが目標です。井戸屋がいなくなるとお客さまに迷惑がかかるので、若い方に技術を継承していきたいですね」

　生活や事業に欠かせない水資源を提供していくには、同業者同士が連携していくことが大切だと八尋さんは話します。

　「ウェルサポートには、実はもう一つ意味があるんです。同業者さんに対して『力を合わせて支え合いましょう』という互助の精神です。例えばお客さまから問い合わせがあった時に、自分より距離的に近い業者を紹介できれば移動コストを削減でき、お客さまの負担が軽くなり満足度が高まると考えています」

　水を必要とする顧客のため、また業界の未来を見据え、ネットワークを盤石化していきたいと意欲を見せます。

　「井戸業界は今、自分一人だけがもうけるのではなくて、お互いに補い合って、みんなで盛り上げていかないといけないフェーズに来ていると思います。お客さまと仲間から慕われる存在になり、信頼関係を築いていきたいですね」

（取材年月：2024年11月）

井戸のプロフェッショナルとして、家庭用水や事業用水へ井戸水の活用を提案

井戸掘りや改修工事、ポンプ交換など新設からメンテナンスまでサポート

自然が相手の井戸掘り。突き詰めても答えがでないからこそ面白い仕事

高齢化が進むさく井業界を盛り上げるため、同業者の連携強化が目標

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