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光や風を取り入れ、地球のリズムに寄り添った、人にも環境にも優しい建築を提案

環境保全を重視し、地球のリズムに寄り添う建築設計のプロ

桑原大樹

桑原大樹 くわはらだいじゅ

#chapter1

住宅やオフィス、店舗などを手掛け、その土地に調和した心地よい空間を創出

 「奇をてらったデザインではなく、場所や気候風土、人になじむ建築を意識しています。お客さまの価値観やライフスタイルを丁寧に聞き取る中で、おのずと浮かび上がるテーマを具現化しています」

 そう話すのは、北九州市の一級建築士事務所「GREEN ROOM DESIGN」の代表・桑原大樹さん。住宅やオフィス、店舗、施設などの新築やリノベーションを手掛け、生活やビジネスの場として住みやすく、働きやすく、その土地に調和した建物づくりを大切にしています。

 「土地を地球の一部と捉えると、地面を掘ったり、くいを打ったりすることは、少なからず地球にダメージを与えていると感じます。できるだけ負担をかけないよう、例えば仕上げには土にかえり再利用できる素材を採用しています」

 調湿性があり、木目や塗りが表情豊かな無垢材や土壁、耐久性に優れ、時間の経過で色味が変化する銅板などを用いて機能性と意匠性を兼ね備え、光や風を取り込むことで心地よい空間を実現。工務店出身で、現場を理解した現実的な提案やコスト感覚を持ち合わせているのも特長です。

 「例えばオフィスでは、温度差によって空気が上昇・下降する性質を利用した重力換気システムや、風量を調整する独自の建具を取り入れ、エアコンに頼らず適温を保つ仕組みをつくりました。空気の流れによって風を生み出すことで電力などの消費量を減らし、省エネで持続可能な空調設備になり得ます」

 登山や釣り、サーフィンが趣味だという桑原さん。プランニングには、悠久の営みを重ねる山や川、海と触れ合う中で育んだ「地球のリズムに寄り添う」という理念が反映されています。

#chapter2

祖父が立ち上げた工務店を継ぎ、現場を通じて施工についても知識を習得

 大学では航空宇宙工学科に進んだ桑原さん。宇宙関係の分野は狭き門で希望の職種への就職が難しいため、設計事務所に勤めるいとこの誘いで、模型制作のアルバイトを始めたことが現職への第一歩になりました。

 「詳細に作り込み、奥行きや立体感を出すのが面白くて。本気でやるなら専門性を身につける必要があると言われ、同大学の建築学科に再入学しました」

 設計事務所を経て、祖父の代から続く工務店に入社。父に代わり住宅の設計と現場監督を担当することに。

 「現場では、大工さんたちと一緒に創作する喜びや達成感がありました。施工についても知識を養い、視野が広がりました」

 家業を継ぐ決意を固め、2014年に代表取締役に就任。2019年には社名を「GREEN ROOM DESIGN」に変更し、建築設計に注力。案件に取り組むうえで、顧客や協力者への心配りにも徹していると言います。

 「工程を進める中で変更点があったとき、メール1通で済ませるのではなく、時間が許す限り顔を合わせて説明するようにしています。20代の頃に、人への敬意の示し方を教えてくれた人がいて、皆さまに礼を尽くすことを心掛けています」

 コミュニケーションを重ねながら、相手が何を求めているのかをくみ取り、桑原さんは必要な要素を整理していきます。

 「ものづくりは作り手の自己満足になりがちですが、建築は芸術作品ではありません。あくまで使う人が基準です。ご要望などを見誤らないように、ヒアリングは特に大事にしています」

#chapter3

次世代へ建築の魅力を伝え、環境に配慮することで美しい地球を未来へ

 現在、桑原さんが力を入れているのは、インドネシア・バリ島のヴィラ設計プロジェクト。観光地として開発が進む一方で、懸念点もあるとか。

 「多くの旅行者を迎え入れるため、島が無造作に開拓されているような気がします。緑が茂るジャングルや、のどかな田園風景などを損なうことなく発展させる方法を探りたいのですが、まだ正解は見えていません」

 20代の頃からバリ島へ通い、波乗りに興じていた桑原さん。大海原に身を投じる中で壮大な自然を体感し、畏敬の念を抱きます。

 「山登りや釣りもしかり、私は地球に遊ばせてもらっているのだと気づきました。環境に優しい建築を通じて、あまたの恵みをもたらす大地や海に少しでも恩返しがしたいんです」

 地域に根ざした活動として、子ども向けのワークショップも構想。創造性に富んだ建築の魅力を伝えたいと考えています。

 「図面を引いてイメージを形にする仕事は楽しく、やりがいがあります。子どもたちにも建築の魅力を知ってもらい、興味を持ってくれる人が増えたらうれしいですね」

 「美しい地球を未来に残したい」と願い、次世代の育成に目を向けるとともに、現場では常に創意工夫。樹木を植えて日差しを和らげたり、採光や通風を入念に計画したり、自然との共存を目指します。

 「産業化の進展に伴い、人間は地球に大きな負荷をかけてきました。唯一無二である地球を守るため、これからも自分にできることを模索したいと思います」

(取材年月:2025年9月)

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専門家プロフィール

桑原大樹

環境保全を重視し、地球のリズムに寄り添う建築設計のプロ

桑原大樹プロ

一級建築士

有限会社GREENROOMDESIGN

「地球のリズムに寄り添う」という理念のもと、その土地に調和した素材を活用し、環境に配慮した建築設計を行う。工務店と設計事務所の経験を持ち合わせ、顧客に寄り添った丁寧なヒアリングも強み。

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