第一次産業と売り場をマッチングさせるプロ森川直子

第一次産業と売り場をマッチングさせるプロ

森川直子

多様な販売チャネルを強みとし、みかん農家を中心に営業を代行

　農作物の生産など、第一次産業に従事する個人や法人の営業代行を担う「ディライトアップ」の専務・森川直子さん。愛媛県松山市を拠点に、主にみかん農家を支援しています。

　「組合から独立した方や新たに就農した方と売り場をマッチングしています。小売業のコンサルティングを得意とする企業ともパートナーシップを結んでおり、多様な販売チャネルを用意できるのが強みです」

　森川さんは、スーパーマーケットや百貨店など全国のバイヤーを紹介。ジュースをはじめ加工品の企画・製造もアドバイスし、ホテルやレストラン、通販会社などにアプローチします。

　サービスを気軽に利用できるよう、利用料は売り上げの5％のみ。連絡や情報伝達には手軽なLINEを活用しています。

　「商品の運送費や資材費は実費となりますが、サポートする農家さんの多くが収入をアップさせています。弊社パートナーのコンサルを受けた小売店も増えて、みかんの需要が高まるという好循環が生まれています。供給が追い付かないほどです」

　生産者の手間を減らすため、「収穫期の人手確保」「出荷時の梱包やラベル貼り」「運送会社の手配や金額交渉」といった実務面もフォローします。

　「農家さんが商品の値段を自分で決められるよう、バイヤーと商談した内容や、納品額を記載した明細書などの事例も開示し“価格設定のノウハウ”も共有しています。データをひも解けば、時期や都市ごとの販売実績が分かり、どこに、いくらで売り出せばいいかが見えてきます。手塩にかけた作物を無駄にしないためにも、売れる仕組みを一緒に作りましょう」

作り手と売り手をつなぎ、全国チェーンのスーパーや大手外食企業とも提携

　実家がみかんの卸売業を営む森川さん。学校卒業後は約10年にわたり家業を支えました。父親から兄へ事業継承したのを機に母親が保険代理店を設立。法人化に合わせて自身も合流します。

　「営業先の農家や店舗から『保険の提案よりも余ったみかんを売りさばいてほしい』『おいしいみかんの仕入れ先を教えてほしい』とよく相談されました。作り手と売り手をつなぐお手伝いをしたことが現在の活動の原点です」

　生産者らの間で口コミが広がり、本業よりも紹介業が多忙に。現パートナー企業からもビジネスの誘いを受けます。

　「育児や病気で思うように働けない時もありましたが、自分の存在意義を改めて知りモチベーションが上がりました。手取りが倍になった農家さんから『もっと早く知っていれば良かった』などと聞くと、思わず心の中で『ほら、言ったでしょう』とつぶやいてしまいます」

　全国チェーンのスーパーから「あの野菜があれば丸ごと買い取る」「こんな食材を探してもらえないか」といった依頼も多く、みかん以外の農家や魚介の養殖業者、畜産業者にもネットワークを広げています。

　「バイヤー側も層が厚くなり、讃岐うどん専門店を主力に国内外で約1,700の飲食店を展開する上場企業も取引先になりました。東京・渋谷の本社に生産者を案内すると、眼下に広がる都会の景色を前に『まさか自分がここにいるなんて』と感動されます。商品のPRで省庁や新聞社を訪ねることもあり、皆さまの世界が広がっていくのが喜びです」

自身と同様に生産者を支えたい人に活躍の場を用意し、農地の継承・活用へ

　多方面で販路を開拓してきた森川さん。今後の目標は国内の農地を広げ、第一次産業に携わる人を増やし意識向上を図ることです。

　「SNSで消費者と直接取引し、売り上げを伸ばす人もいます。しかし労力を確保できず頓挫したり、先祖代々の農地を守りたくても後継者が不在だったり、高齢化で余力がなかったり。作付けができず田畑が荒れることを防ぐためにも、農業に興味のある人、既存の就農者に成功の道筋を示すことが自分の使命だと感じています」

　もう一つの目標は、多様なライフスタイルの人たちにフリーランス営業として活躍の場を提供すること。

　「例えば私は子どもがいて、業務に集中できるのは幼稚園にいる9時から14時まで。限られた時間内に仕事をして収入を得ることも大切なテーマで、効率的な働き方も目指しています。子育て中の方のほか、『家族の介護をしている』『長時間労働は負担が大きい』『副業を探している』という方などで農家さんの力になりたいという方は、ぜひお声がけください」

　フラットな関係を重視し、雇用ではなく業務委託を採用。自身の知識や経験を集約したアプリも開発中で、誰もが定期収入を得られるシステムを構築中です。

　「長く慣習に従ってきた業界ですが、ひと工夫すれば大きな変化を起こせると確信しています。手を貸してくれる仲間とともに、産地から各家庭の食卓まで流通させるルートをコーディネートし、作り手の思いがこもった野菜や果物を多くの方に届けていきたいですね」

（取材年月：2024年7月）

果物や野菜などの生産者の販路を確保・拡大し、売れる仕組みづくりをサポート

多様な販売チャネルを強みとし、みかん農家を中心に営業を代行

作り手と売り手をつなぎ、全国チェーンのスーパーや大手外食企業とも提携

自身と同様に生産者を支えたい人に活躍の場を用意し、農地の継承・活用へ

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