PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

秋田から「パリ・コレクション(パリコレ)」へ

価値の高いものづくりに少数精鋭で挑む縫製のプロ

小林秀充

小林秀充 こばやしひでみつ
小林秀充 こばやしひでみつ

#chapter1

カットソーや布帛、合皮などを縫製し、大手ブランドからも受託

 「衣服などのアパレル製品において、品質に優れた日本製への関心や需要は年々高まっているのに、縫製工場は減少の一途をたどっています。日本の卓越した技を継承するため、業界に対する『きつい・安い』という固定観念を変えたいと思っています」

 そう語るのは、秋田県大館市の縫製工場「三友工房」の2代目社長・小林秀充さん。大手ブランドからの信頼も厚く、世界最高峰のファッションイベント「パリ・コレクション(パリコレ)」常連ブランドの商品も手掛けています。

 「ステッチミシンで装飾を施したり、伸縮性のある生地をかがり縫いしたり、ミシンの機種は40以上と国内屈指の設備を整えています。Tシャツなどで使われるカットソー、サテン地や布帛(ふはく)、合皮と、さまざまな縫製が可能で、難易度の高い案件が全国から寄せられます。美しい仕上がりで、ユーザーの満足を得る価値あるものづくりに取り組んでいます」

 計画的な受注管理で、季節などの繁閑に左右されない安定した生産体制と、残業や休日出勤に頼らない勤務体系を築き、業界有数の高賃金も実現。夏にはアイスコーヒーやお茶、冬はスープなどを無料で提供する休憩室を完備するなど福利厚生面も充実させています。

 「社員は現在12人で、平均年齢が30代半ばと高齢化が進む業界の中では若いのが特長。手厚い人材育成により、いずれも未経験から意欲も技術も高い少数精鋭に育っています。労働環境の整備が求められるいま、業界紙の近代縫製新聞に『魅力のある職場』として紹介され月刊マスターズにも『経営主案が認められ』掲載、従来のイメージを払しょくする企業として知っていただきたいですね」

#chapter2

祖父から受け継いだ経営者のマインドで、利益を生み出すシステムを構築

 小林さんの親族は経営者が多く、特に祖父から事業運営の心得などを教えられたと言います。例えば、親族や知人との付き合いを通じて相手の気持ちを考える大切さを、祖父の手伝いを通じて仕事でお金をもらう厳しさを学びました。

 大学では経営学を専攻。2年次にイギリス留学、4年次から中国・上海へ留学し、現地の日系企業に勤めますが、26歳の時、祖父の創設した不動産管理業の会社を継ぐために帰国。2020年、父が創業した「三友工房」の代表にも就任。他の縫製工場同様、現場の高齢化と業績不振が深刻化し、当時経理担当をしていた母から「3年で業績を回復させなければ廃業」と告げられました。

 「人員の補強については子育て中の女性に着目しました。結婚・出産後の再就職の難しさを耳にしていたので、子育てと仕事を両立する上での課題をヒアリングし、働き手と会社がwin-winになるよう職場環境を改善。大館市から『働くパパ・ママ応援企業』にも認定され子育ての両立を可能にする働き方をPRしました」

 小林さんは「仕事は恋愛に似ている」と持論。相手を知ろうとする努力と、相手が喜ぶことの実践を惜しまず。恋人と良好な関係を保つごとく、困難なサンプル作りの依頼も「まずはやってみます。気に入ったら発注してください」と断らずに引き受け、技術やサービスを向上させることで、クライアントに選ばれる企業を目指してきました。
 
 「社内外の改革を進め、就任3年目で黒字を達成しました。縫製業がもうからないのではありません。どの業界でも言えることですが、利益を生み出すシステムをいかに構築するかが重要なのです」

#chapter3

自ら考え、行動する主体性のある組織づくりで業界や社会の活性化に貢献

 「仕事をすることは、知識やスキルを習得して能力を上げるなど自己成長を促します。しかし近年は、働く意義を理解していない人が多いように感じます」

 高い志で職務に励む人材を育てることに力を注ぐ小林さん。新入社員の研修では、働くマインドについて1週間じっくりと説いています。また、会社の理念や方針をまとめたフィロソフィー(哲学)を冊子にし、社員と共有。自身もうまくいかないことがあれば、足りないことに気づくため読み返しています。

 「経営者は、社員を守り成長に導く親だと思っています。社員もまた、責任をもって仕事ができる親になることを願っています。人は責務を担うと自ら走りだすようになり、大きく飛躍します」

 難しい案件が舞い込んでも、「できない」ではなく社員一人一人が自分の課題として捉え、できる方法を模索。自ら考え、行動する主体性のある組織をかなえています。

 「当方は給与や福利厚生を拡充していますが、働く義務を果たしてこそ権利が得られる方針を立てています。利益は最大限、社員に還元する一方で、自分の務めをきちんと果たしているか否かで報酬が異なる厳しい面もあります」

「物事を前向きに捉えて果敢に挑戦し、仲間と力を合わせて目標を成し遂げていく。強固なチームワークで、縫製業界や社会の活性化に貢献していきたいですね」

(取材年月:2025年8月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

小林秀充

価値の高いものづくりに少数精鋭で挑む縫製のプロ

小林秀充プロ

婦人服・メンズ 衣類製造

有限会社三友工房

平均年齢35.6歳の日本人スタッフが40種類以上のミシンを駆使し、カットソーと布帛・合皮と全く扱いの違った素材にも同メンバーで対応可能にし、世界最高峰のファッションイベント向けの商品も手掛けています。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ秋田に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または秋田テレビが取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO