頼もしさと笑顔、おもてなしを大切にする警備のプロ熊谷武

頼もしさと笑顔、おもてなしを大切にする警備のプロ

熊谷武

AIによる効率的な交通誘導をはじめ、施設やイベント、港湾警備に従事

　「誠実に職務を務め、地域社会に貢献します」と語るのは、秋田市で警備会社「男塾」を経営する熊谷武さん。水道・ガス、電気に関わる道路工事などの交通誘導、ショッピングモールやオフィスといった施設、各種イベントの雑踏警備を手掛けています。

　「業界では少子高齢化に伴う人手不足が課題となっていますが、当社は県内最大規模となる約200人のスタッフを擁しています。安定的にお客さまの要望に応え、2014年の創業以来、東北6県と新潟で数多くの実績を重ねています」

　交通誘導では、いち早くAIを活用したシステム「KB-eye for 交通制御」を導入。従来の人による案内と組み合わせ、事故防止に効果を上げています。

　「片側交互通行の現場では、AIが車両や歩行者の接近を検知し、隊員に知らせます。車両の通行状況を判断して自動的に『止まれ』『進め』の信号を切り替えてくれるため、限られた人員でも正確かつ円滑に往来を導くことができます」

　施設警備では、出入り口の監視や巡回を通じて不審者や不審物を早期に発見し、傷害や盗難など人的・物的リスクを予防。中でも港湾警備は長年の経験があり、不法入国の水際対策に目を光らせます。雑踏警備では、来場者や搬入出車両を的確に誘導し、混乱や事故を未然に防ぎます。

　「東北絆まつりや大曲の花火のような大規模な催しにも携わってきました。雑踏警備では、予想を超える来場者数や主催者の急な予定変更に応じる柔軟性が求められます。当社のスタッフは、混雑によるトラブルや転倒事故を防ぐ知識と行動力を備え、スムーズな手際で現場を保全いたします」

従業員の成長と意欲を支えるため、教育体制や雇用環境の整備に注力

　2019年に開催された「あきた元気祭りin千秋花火」では、人気キャラクターが登場するパレードが行われ、大きな注目を集めました。収容人数2万人の会場に約8万人が集まりましたが、事前の緻密な計画と警察との連携により滞りなくイベントを終えることができました。

「何事もスタッフが力を尽くしてくれるおかげ」と感じ入る熊谷さん。従業員の成長と意欲を支えるため、教育体制の拡充に注力しています。

　「研修は、法律で義務付けられた回数以上に実施し、座学や実技を通して実践的な内容を提供するほか、資格取得もサポートしています。当社の役員には難関試験に突破した『セキュリティコンサルタント』が在籍しており、重機の旋回誘導やダンプの搬入出といった具体的な事例に基づき指導しています」

　また昨今の猛暑に配慮し、空調ファンを装備した機能性に優れる制服を採用。英気を養えるよう従業員が休暇を取りやすい福利厚生も整え、バーベキューをはじめ社内行事で労をねぎらうなど、働きやすい職場づくりにも力を入れています。

　「警備員はサービス業だと考えています。交通誘導中に通行人から工事の期間や迂回路を尋ねられた際には、笑顔で丁寧に対応するよう伝えています。港湾警備では、クルーズ船の乗客が観光のために降り立つことも多いため、おもてなしの心が欠かせません」

　モットーは「人に優しく、感謝を忘れず」。経済的に厳しい中にあって、必死に育ててくれた母の存在が大きな原動力になっていると言います。

独自の工夫で業務を効率化。警備業を魅力的な仕事にするべく独立へ

　熊谷さんは30代で県内の警備会社へ転職。現場勤務から始まり、営業や隊員の配置にも携わります。

　「配置業務は、数百人いるスタッフをいつ・どこに・何人手配するか計画し、各自に連絡する重要な役割でした。現場を行き交う人や車の流れをコントロールしたり、施設や催事に集う人たちの保安活動をしたり、仕組みを構築してきました」

　効率化を図るため、スタッフの連絡先を暗記し、スケジュールを通常よりも早めに組むなど独自に工夫を重ねるうちに、周囲から信頼を寄せられる存在に。

　「仕事の相談だけでなく、人生の悩みを打ち明けてくれる人もいました。幼い頃、母に教えられたように、相手を思いやる気持ちで親身に寄り添い、耳を傾けることを大事にしてきました」

　誰もがやりがいをもって楽しく働ける環境をかなえ、警備業を魅力的にするため、40代で独立し「男塾」を設立。屋号には、昭和を代表する名優が演じる男らしく頼もしい生きざまや、映画「男はつらいよ」（松竹配給）の主人公・寅さんの人情味を込めました。

　「警備を担当した工事が無事に完成すると、安堵と同時に充実感が得られます。お客さまから『この道路や配線は一緒に作ったようなものだね』と声をかけられることもあり、インフラ整備の一翼を担っていることを誇らしく思います」

　「人は心、人は宝」を社訓に精鋭を育て、質の高いサービスを目指す熊谷さん。「ノウハウを身につけたスタッフが、皆さまの安全を全力で守ります」と熱を込めます。

（取材年月：2025年9月）

インフラ整備の現場や地域のお祭りなど、安全を守る警備サービスを提供

AIによる効率的な交通誘導をはじめ、施設やイベント、港湾警備に従事

従業員の成長と意欲を支えるため、教育体制や雇用環境の整備に注力

独自の工夫で業務を効率化。警備業を魅力的な仕事にするべく独立へ

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