地域や個人の魅力を発信する映像制作のプロ小川賢

地域や個人の魅力を発信する映像制作のプロ

小川賢

作品の品質を一段と高めるモーショングラフィックスと音へのこだわり

　「自治体や企業、個人のご要望に応じた映像を制作いたします」と話すのは、「EMAZO（エマゾー）」代表の小川賢さん。秋田県大仙市を拠点に、地域のイベントや観光地のPR動画などを手掛けているほか、行事やセミナーなどのライブ配信、写真などの素材を活用した映像編集など幅広く手掛けています。

　企画立案からシナリオ作成、映像制作・編集までワンストップで対応できるのが大きな強み。映像制作においては、アニメーション制作に特化したソフト「Adobe After Effects」を駆使し、図形やテキストなどの静止画素材に動きを与えるモーショングラフィックスを取り入れることで、映像表現の幅を広げています。

　「著名なプロ棋士の祝賀会で上映した動画では、和室のふすまが次々と開いていく中を進む演出を盛り込みました。将棋盤や駒を3Dで制作し、時間をかけて丁寧に仕上げた自信作です」

　ポストプロダクション企業でMA（マルチオーディオ）エンジニアとして培った経験を生かし、映像だけでなく音のクオリティーにも徹底的にこだわります。ノイズを抑え、効果的にナレーションを加えることで、映像と音が響き合う完成度の高い作品を生み出しています。

　「私が最も大切にしているのは、お客さまとのコミュニケーションです。打ち合わせでは可能な限り直接伺い、ヒアリングや提案を通して、文面だけでは伝わらないニュアンスや熱量を感じ取るよう努めています。加えて、要望に素早く応える姿勢こそが、プロとアマチュアを分ける決定的な違いだと考えています」

自治体のPR動画やブライダルムービーなどを幅広く制作し、イベントのライブ配信も対応

　自治体などの公共機関から仕事を受けることが多いという小川さん。イベントや観光、施策などを紹介する映像を制作し、地域の魅力アップや情報発信に貢献しています。大仙市選挙管理委員会からは、知事選や市議会議員選の投票率向上を目的とした啓発動画の制作を任されました。

　「動画投稿サイト・YouTubeの広告として流す動画でした。地元らしさを出してほしいという依頼者さまの要望を受け、黄金色の稲穂の中を秋田新幹線・こまちが走る田園風景や、ドローン撮影した町並みの俯瞰映像など、住んでいるからこそ知っているさまざまな景色を盛り込みました」

　また、企業や広告代理店からの依頼に応じてプロモーションビデオを制作するほか、個人からの依頼にも対応。写真データを活用し、結婚披露宴で上映するブライダルムービーを作ることもあります。

　「写真だけでは単調になりがちなので、アルバムをめくるような演出や、写真がスライドしていくアニメーションを取り入れています。あるご依頼では、当日にスチールカメラマンとしても立ち会ったのですが、『とても感動した、お願いして本当によかった』と直接お言葉をいただき、大変うれしく思いました」

　さらに、成人式や花火大会といった式典、企業主催のセミナーやトークセッションなどのライブ配信にも対応。秋田県内各地に出向き、YouTubeなどでイベントの様子をリアルタイムに届けています。「生配信は即時性がある分、制作や編集とはまた違う緊張感があり、それが心地よい刺激になっています」と語ります。

地域おこし協力隊として移住した秋田県の魅力を、映像を通じて伝えていきたい

　小川さんは2018年に大仙市の地域おこし協力隊に着任。地域外から人材を受け入れ、定住・定着を促進する制度で、3年間の任期中、SNSなどを使った地元の魅力や情報を発信する役割を担いました。

　「幼児期に秋田から引っ越して東京で育ち、都内の企業で就職しました。しかし30歳という節目の年齢を迎える中で起業をしたいと思い、地域おこし協力隊として移住することを決めました」

　協力隊の任務としてYouTubeチャンネルの運営に携わり、地域の美しい自然や人々の営みを収めていくうちに、映像制作の魅力に惹き込まれていったと語ります。地域のイベントの運営などを通じて同世代とのつながりもでき、「お世話になったこの場所を盛り上げたい」との思いが強くなり、2020年に大仙市でEMAZOを設立しました。

　任期を終えた後も地域活性化への関わりを続け、全国的にも有名な「大曲の花火」に合わせて開催するマルシェと音楽のイベント「丸子川ナイトマーケット」には初期の頃から参画。企画準備から当日の運営まで携わり、SNSでの発信にも力を注いできました。特にInstagramでの情報発信は反響が大きく、閲覧数は133万回を記録しました。

　「これからは秋田県内全域に業務範囲を広げていき、映像を通じて秋田の魅力を発信していきたいです。若者の働く場の不足といった地域の課題はありますが、『地方でもクリエイティブな仕事はできる』ということを広めるため、雇用の促進につながる学びの場なども開けるようになればと考えています」

（取材年月：2025年9月）

イベント、観光地などのPR動画制作を通じて地域の魅力を発信

作品の品質を一段と高めるモーショングラフィックスと音へのこだわり

自治体のPR動画やブライダルムービーなどを幅広く制作し、イベントのライブ配信も対応

地域おこし協力隊として移住した秋田県の魅力を、映像を通じて伝えていきたい

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