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原聡彦

医療経営指導の専門家

原聡彦(はらとしひこ) / 医業経営コンサルタント

合同会社 MASパートナーズ

コラム

院長夫人の力を生かすための三つのポイント

2022年1月9日

テーマ:院長夫人コーチング~クリニック経営奮闘記~

コラムカテゴリ:ビジネス

(相談内容)
今年の秋に関西地方で内科クリニックを新規開業する院長夫人より「夫からクリニックを手伝ってほしいと言われました。院長の奥さんの仕事はどこまで携わっていけばいいのでしょうか?」というご相談を頂きました。

(回答)
以前は顧問先に「スタッフとの間でトラブルになりやすいから、院長夫人はできるだけ現場の仕事にかかわらない方がいい」とクライアントの院長に説明してきましたが、「最近は看護師も事務スタッフも、何かあるとすぐに辞めてしまい、クリニックの運営が安定しないケースが目立ちます。以前とは状況が変わってきたので急な欠員が生じてもカバーできるよう院長夫人が普段から業務に就いておいた方がよいと考えるようになりました。
とはいえ院長夫人がクリニックの業務に携わると、スタッフとの人間関係など様々な問題に直面することが少なくありません。医業経営コンサルタントの経験から院長夫人の力を生かすために留意すべき三つのポイントをお伝えします。


ポイント1.職務権限の範囲を明確にする
院長夫人が事務長などの管理職としてクリニックの業務に携わる場合、問題になりやすいのが院長と夫人の職務権限のすみ分けです。勤務シフトの作成など、日々の運営面は院長夫人に任せるとしても、診療や経営方針などに関する意思決定は院長自身が行ったほうがクリニックの運営はうまくいきます。権限を明確にしておかないと、本来であれば院長が意思決定すべき分野に夫人が介入してトラブルになることもあります。
トラブル事例として、10年前、弊社のクライアントで発生したケースでは院長夫人がある日突然、本人の思いつきで人事評価のための個人面談を実施してスタッフの一人に対し、「あなたは常勤スタッフとしての仕事ができていないから、パートになってもらうかも」と通告してしまいました。院長はそもそもパートにする気などなく、面接の事実も後で知らされました。結局、夫人の言葉にショックを受けたスタッフは自ら辞めてしまいました。
院長が意思決定した内容をスタッフに伝える場合に、院長自身の口から説明することも、心がけておきたい点です。夫人を通して伝えると、「本当に院長はそう思っているのか?」とスタッフが疑ったり、反発を招く恐れがあります。『今期のボーナスは弾んでおくわよ』などと、夫人が待遇に関する説明をすると、『私たちは奥さんから給料をもらっているわけではない』と反感を持たれやすいので待遇面についてはいい事も悪い事も院長が同席して、できるだけ院長の口から直接、伝える事をお勧めします。

ポイント2.業務分担し院長夫人は業務を抱えすぎない
一口にクリニックの業務といっても、その内容は多岐にわたります。院長夫人がどこまで担うのかを明確にせず、場当たり的に手伝ってもらっていたのでは、本人も周りのスタッフも混乱しかねません。私どもはクライアントのクリニックにクリニックの全体の業務分担が明確にわかる業務分担表(下記の写メの表)を作成するよう伝えております。院長夫人が多くの業務を抱えすぎると、どうしても細かいところまで目が行き届かなくなってしまいます。スタッフに委ねたり業務委託が可能な部分は外注することも検討したほうがいいでしょう。子育てなどで時間的な制約がある場合は、診療現場に出ずに裏方の仕事だけ担当するのも現実的な選択肢もあります。弊社のクライアント様の関西地方のH内科クリニックでは、子育て中の院長夫人が、取引業者とのやりとりや院内外の清掃などに限定する形で業務に限定的に携わっています。同クリニックでは給与計算などは外部委託しており、外注先の企業やコンサルタントなどのブレーンをうまく活用しながら業務を回しています。



業務分担表


ポイント3.スタッフの悩みなど聞く環境をつくる
職場の人間関係や家庭の問題などスタッフが院長に直接話しにくい悩みを抱えていることはよくあります。そうした悩みを聞き、職員が不安なく働けるように対処することも、院長夫人に求められる役割の一つです。個別面談の場を設ければ、スタッフはより本音を話しやすくなります。関西地方のA整形外科クリニックでは、悩みを抱えているように見えるスタッフに声をかけるなどして、院長夫人が個人面談を適宜実施しています。
職場のいじめの問題が発覚すれば勤務シフトを変更するなど、スピーディーに対処しています。スタッフとの対話の際に重視しているのが、自身の価値観を押しつけないことです。
コーチングや組織マネジメント論などの専門書を読み、最新の面談の技法を学んでいただく事をお勧めしています。

以上をご参考に最初からすべての業務を抱えず外部ブレーンを活用してご自身の守備範囲を決めて頂く事をお勧めします。

この記事を書いたプロ

原聡彦

医療経営指導の専門家

原聡彦(合同会社 MASパートナーズ)

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