経済が成長するにつれて、消費者の趣味嗜好は多様化が進んでいます。多様化に伴い、企業としては適切な消費者に適切な商品を提供していかなければ、商品を購入してもらうことは難しいでしょう。

消費者を分類する際に用いられるマーケティング手法として「ターゲットマーケティング」があります。ターゲットマーケティングを正しく理解し設定することによって、商品やサービスが今のままでも売上が2倍3倍となることも不可能ではありません。

この記事を読んでいただければ、そもそもターゲットマーケティングとは何なのか、正しくターゲットマーケティングを行うためにはどのようにすれば良いのかを具体的に理解することができます。

ぜひ最後までご覧ください。

ターゲットマーケティングとは?

ターゲットマーケティングとは、企業が顧客を分類し、想定顧客となる人を絞り込んで販促活動を行うマーケティング手法の1つです。

想定顧客を分類して把握することによって、新商品を顧客に合ったものにすることが可能になったり、現在ある商品を改善する際の起点になる事も考えられるでしょう。

また、ターゲットを絞り込んで商品やサービスをPRすることによって、少ない広告費で想定ターゲットに向けてPRすることが可能になります。

ターゲットマーケティングに必要なSTPとは

先ほども紹介したように、ターゲットマーケティングは自社の想定顧客を絞り込むマーケティング手法です。しかし、実際に絞り込む際、どのようにして想定顧客を見出していくのでしょうか。

一般的に、ターゲットマーケティングを行う際によく用いられるのが、STP分析です。STP分析とは、Segmentation、Targeting、Positioningの頭文字を取ったもので、それぞれの指標を用いて自分達がどの市場で勝負するのかについてを決定していきます。

この章では、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングについてそれぞれ具体的に説明していきます。

セグメンテーション(Segmentation)

セグメンテーションとは、市場を細分化し図で表すことによって、視覚的に市場の構造を分かりやすく理解するために用いるものです。

どのような軸でセグメンテーションを行うかについては商品やサービスの内容によって異なりますが、一般的には、性別や年齢、価値観や嗜好性、国や都市などを縦軸や横軸に用いることよって市場を4分割します。

分割し、視覚的に捉えることによって自分達の商品やサービスがどの領域で勝負することができそうかについてが理解しやすくなります。

ターゲティング(Targeting)

ターゲティングとは、セグメンテーションによって市場を細分化した後に、どの市場で勝負するのかについてを決定することを言います。

市場を細分化したとしても、実際に自社の商品やサービスを販売する際にどの市場で勝負するのかについてを明確にしなければ効率良く販売することは難しいです。

そのため、セグメンテーションを行っただけで満足することなく、ターゲティングについても深く分析する必要がある点は注意していただきたいです。

ポジショニング(Positioning)

ポジショニングとは、セグメンテーションを行い、その後にターゲティングを行うことによって実際に勝負する市場が決まった後に行う手順になります。

正しくターゲティングを行い、適切な市場で勝負することができたとしても、同じ市場に同様かそれ以上の性能を持った商品やサービスが存在していては売れ行きは望めないでしょう。

自社の製品やサービスが競合他社と比べてどのような特徴や強みがあるのかについてをしっかりと理解することに注力してください。

自社の製品やサービスをしっかりと理解することができているのであれば、自分達の立ち位置を理解し、それに応じた販促活動を行なっていくことが可能になります。

STP分析を行う際のフレームワーク「6R」とは

先ほど、ターゲットマーケティングを行うのにSTP分析が用いられるという話をしました。では、実際にどのようにしてSTP分析を行なっていくのでしょうか。

STP分析を行う際に利用する6つの指標として「6R」というものが存在しています。

注意していただきたい点として、6Rの指標は個々の良し悪しで見るのではなく、総合的に基準を満たしているかどうかを見ることがポイントとなっています。

1つの指標だけが優れていたとしても、他のものが劣っている場合、それは良好なターゲットマーケティングを行うことは難しいです。

6つの指標を総合的にチェックすることによって、自社のターゲットマーケティングを適切に行うことに繋がりますのでぜひ抑えておいてください。

市場規模(Realistic Scale)

市場規模とは、市場の大きさがどの程度なのかについての指標です。

一般的に、市場が大きければ大きいほど商品やサービスの売れ行きの最大値は高くなります。しかし、市場が大きい場合には様々な企業が存在しているため、競争も激化しています。

このような背景から、敢えて市場が小さい競合が少ないところ(ニッチ市場)で勝負するという手もあります。

大きければ大きいほど、爆発力は高いですが、一概に大きければ良いというわけではないという事は注意しなければなりません。

競合(Rival)

競合とは、参入する市場に競合がどのくらいいるのかという指標です。

競合ができるだけ少ない「ブルーオーシャン」が理想的な市場ですが、企業も多様化している現在、ブルーオーシャンを見つけることは容易ではありません。

競合を調べる際には、競合の数だけではなく参入障壁も調べる必要があります。

競合が一定数いたとしても、参入障壁が高い場合、市場は安定しており競合の脅威が少ない場合もあります。逆にブルーオーシャンだったとしても、参入障壁が低い場合、これから先たくさんの競合が生まれる事は容易に想像できます。

現在の自分達の商品やサービスが属している市場がどの程度の参入障壁を持っているのかについて明確にしておきましょう。

成長率(Rate of Growth)

成長率とは、市場が今後どのように成長していくのかについての指標です。

例えば、自社の製品やサービスが競合と比べて非常に優れていたとしても、市場が衰退し続けており、需要が無くなっていってしまう可能性がある場合、今後利益を望むことは難しいです。

市場は時代と共に常に変化していくものであるため、自社の勝負する市場がどのように変化していくのかについて正しく理解していく必要があります。

新商品やサービスを考案する際、市場が成長しているのかどうかについての視点を持った上で行うことをおすすめします。

優先順位(Rank)

優先順位とは、ユーザーがどのくらい興味関心を持ち、優先度が高いかという指標です。

ターゲット層にとって関心度が高ければ高いほど、消費者は商品やサービスを見つけ出す機会が多いためです。

また、興味関心があればあるほど、ユーザー自身がSNSなどを通じて拡散してくれるため、波及効果を期待することができます。

SNSの力は年々増加傾向にあり、一度拡散されると急速的に広がっていく傾向にあります。

ユーザーがどのような商品であれば拡散したいと思うのか、周りの人に知ってもらいたいと思うのかについての視点も商品開発や販促活動に組み入れてみてはいかがでしょうか。

到達可能性(Reach)

到達可能性とは、ターゲット層にアプローチできるのかどうかという指標です。

例え商品やサービスが優れていたとしても、実際にターゲット層に届けることができなければ意味がありません。

自社製品のターゲットとなる層にアプローチできるのかどうかについても検討していく必要があります。

測定可能性(Response)

測定可能性とは、実際に商品やサービスを提供した場合に、ユーザーの反応を測定することができるのかどうかという指標です。

初めからターゲット層を正確に理解して正しくアプローチしていくことは非常に難しいです。しかし、反応を測定できる場合、最初の反応が悪かったとしても、PDCAを回して改善していくことが可能です。

そもそも、マーケティング全般に言えることですが、マーケティングは最初から良い結果を出すのが重要というわけではなく、いかにPDCAを効率よく正確に行えるのかについての方が重要です。

反応が分からない中で改善していくことは難しいため、ターゲット層の反応が測定できるのかどうかというのは非常に重要な指標となってきます。

ターゲットマーケティングを行うメリットとは

ここまで、ターゲットマーケティングの概要と、実際に行う際の分析方法などについてご説明してきました。

では、ターゲットマーケティングを用いるメリットは具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

メリットとして大きく分けて3つに分類されますので紹介していきます。

ターゲット層への対応力が向上

ターゲットマーケティングを行うことで、顧客が細分化されてよりニーズが明確化されます。

そのため、ターゲットとなる顧客が求めているものに対しての対応力が向上し、結果的に顧客満足度も向上することが望めます。

商品やサービスの企画〜販売プロセスの一貫性

幅広い市場に向けて商品を販売しようとする場合、どうしても顧客ニーズの多様性から一貫性を生むことが難しくなってくる場合もあるかと思います。

ターゲットマーケティングを行い、ターゲット層を絞り込むことによってより企画段階から販売まで商品の一貫性を持たせることが可能になります。

コストパフォーマンスの向上

ターゲットマーケティングを行うことによって、自社商品やサービスのターゲットとならない顧客に対してコストをかける必要がなくなるというメリットもあります。

ターゲット層を絞り込めば絞り込むほど、売上の最大値は減少するものの、粗利の最大化は目指すことができます。

多くの場合、資金には限りがあると思いますので、限られた資金の中で効率的に顧客を獲得するのにターゲットマーケティングは非常に有効です。

ターゲットとペルソナの違いとは?

マーケティングを学ぶ中で、「ペルソナ」という言葉を耳にしたことは誰しもあるかと思います。

実際に、ターゲットとペルソナの違いについて曖昧な人も多いかと思います。

ペルソナとはどういうものなのか、ペルソナ設定をする際のポイントや注意点などを詳しく解説していきます。

ペルソナとターゲットの違い

まず、ペルソナとは、自社の製品やサービスを購入してくれる可能性がある人物をより具体的にイメージした人のことを言います。

性別・年齢・居住地・収入や特技など、より具体的にペルソナ像をイメージし、それをチームメンバーと共有することによって商品を開発、販売する際に齟齬が生じにくくなるというメリットがあります。

ターゲットとは、ペルソナよりももう少し広い定義となります。

ターゲットとは、自社の商品やサービスを販売する際に、勝負する領域を選定することを言います。個人にまで落とし込むのがペルソナ、想定顧客となる集団の属性を分類するのがターゲットと認識していただければと思います。

ペルソナの作成方法

ペルソナを作成するのにあたり、何も考えずに適当に作成していては、実際にターゲットとなる消費者像を作り出すのは難しいです。

そのため、プロフィール、仕事、ライフスタイル、価値観、ニーズの5つのポイントを押さえて作成することをおすすめします。

より細部まで情報を埋めていくと、頭の中で実在する人物として認識できるようになるので、そこまで具体的に決めてみてください。

また、ペルソナを決定したら、定期的に見直して実際にイメージが異なってくれば修正していくことでより想定となる顧客に近づいていくかと思います。

ペルソナを作成する際の注意点

ペルソナを作成する際、最も注意していただく必要があるのが、「自分達にとって都合の良い消費者像を描かない」ということです。

商品やサービスに自信があればあるほど、どうしても主観的に都合の良いペルソナ像を設定してしまう傾向にあります。

そのようなペルソナ像は実際に役には立ちませんので、あくまで客観的に、より具体的にペルソナ像を作成することをおすすめします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、マーケティングの中でも重要な視点である、ターゲットマーケティングについてご説明していきました。

ターゲットマーケティングは、現在、商品やサービスの販売に行き詰まっている方、これから新しい商品やサービスを生み出そうと考えている方にとって非常に有効的なマーケティング手法の1つです。

正しい市場で正しい顧客に販売し、売上を伸ばしていくことを願っています。