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ある会社の倒産前夜 社長の心境

2014年6月29日 公開 / 2014年7月31日更新

コラムカテゴリ:住宅・建物


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晴天のある日、北の大地に降立つと爽やかな風が私を出迎えてくれた。

空港には私のホームページを見られ1年半程前に知り合った社長さんが迎えに来てくれました。あくまでも続く直線道路をひた走り工場に向うが、私の心は爽やかな風とは裏腹に重かった。

今回の訪問は決断しない、決断できない社長さんの背中を押すことが一番の目的であったからです。つまり倒産までの段取り作り&アドバイスです。

先代の社長から引継ぎ、設立来四十数期を迎える地元に根付いた老舗会社、社長は親父の代からこの名(商号)に誇りを持ち、この名前のお陰で商売ができているとおっしゃる。得意先の商売に必要不可欠な帳票・チラシ・名刺等々、多品種少ロットを得意とする印刷会社です。

しかし市場はPCプリンターやデジタル化によるオンデマンドに市場の一部を取って替わられ、売上は毎々年減少傾向、内実は毎年赤字経営で社長ら一族が過去に貸付けた金を放棄、その債務免除益で決算上帳尻合わせをしているだけでした。

社長ら一族のお金は枯渇し、資金のやり繰りを友人知人&一部の従業員等からの借入れや保証に頼ったり、高利のお金にも手を出すといった状態。本来「絶対にやってはいけない」ことが止むに止まれぬ手段として恒常的に行われている。当然のことながら地銀等の金融機関からも見離なされようとしている。

会社さえ生き延びていれば何時か良い仕事に出会い返せるという気持が社長の判断を遅らせている最大の原因です。心境は良く分ります。しかし債務は毎年確実に増えているのだ!

前回、具体的な再建策のない「赤字会社が友人知人に貸付をお願いをすることは、金をくれと言ってることと同じことである」と諭したことがあったが、営業を拡充すれば、設備をなおしたら、・・・・タラレバの話に一途の望みを託し、一日延ばしをして今日に至っている。

職場の少ない地方で、中高年者の従業員にとって会社倒産は死活問題です。前回、私は主要な従業員をも含めた会合で、事業譲渡又は企業分割の手法で従業員ら主導の新第二会社を設立し、過去の債務を切り離し事業だけを残すことを提案したが、これに対し「・・・の理由でできない」「・・・公共団体との取引には実績がなければ」「・・・機械設備の老朽化で難しい」否定的発言ばかりで「ならばどうしよう!」という積極的、且つ主体的意見を述べる者もなく、現状維持?のみを望む残念な場面を踏んだ後での今回の行動でした。

正に、切羽詰まった正念場、重い気持での打合せでした。

(コメント)私は過去に2度に亘り会社を倒産させました。社長が孤立した状況下、夜も眠れぬあの長い長い悶々とした倒産前夜のことを思い出します。頼れる相手は自分一人、孤独です。当時の自分の心境を思い起こすとき、私自身も同様な心境でした。従業員のこと、仕入先、得意先に対する迷惑、そして一夜にして崩壊する今日まで築いた自分の信用と実績、将来への不安等を考えると、誰もが倒産は避けたい、一日でも先延ばししたいと思うものです。私もそうであったように誰もこの社長を責めることはできないと思いました。

是非、会社の最後の幕引きに真正面から立ち向い頑張って頂きたい。その姿勢に私は真に応援したいと思っています。

今回は、高利のお金に手を出したとき&個人からお金を借りたときが、判断のし所であったと考えます。

「社長の早い決断が如何に大切か」を痛切に感じます。早ければ再生の選択肢も色々あった筈です。

                                記:大森孝成

この記事を書いたプロ

大森孝成

債務者を救う事業再生・任意売却アドバイザー

大森孝成(合資会社大誠企画)

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