R4年2月28日判決言渡しで㈱シレオ(代表宮上元伸)らの「詐欺が確実に認定された!」
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今回のキーワードは、「無剰余」「仮差押え」「偏頗(へんぱ)弁済」です。
解説1)無剰余:価額(評価額)を越える(根)抵当権等が設定されていて物件価値から見て余りがない権利状態をいう。つまり他の一般債権者が後順位に仮差押え登記を設定しても意味がない状況を言います。反対に価値内にある場合を「剰余」という。
解説2)仮差押え:金銭債権において「その財産を差押える用意があるので、勝手に処分してはならない」とする裁判所からの財産保全命令です。つまり債務者が売却したり隠したりして財産が失われないように暫定的に抑えておく債権者の手続きのことです。また任意売却ならば無剰余であっても、仮差押権者が抹消に応じなければ債務者は売却できないため、抹消料(通称:ハン付き料)名目の弁済を得ようとする一手法として使われることがある。
つまり「嫌がらせ」で他の一般債権者を出し抜いて少しでも多くの回収を図ろうとする余り宜しくない手法です。但し破産開始決定後においては無益な仮差押えとして裁判所許可のもと取消され失効します。
解説3)偏頗弁済:債権者間の平等弁済の原則に反する行為。つまり複数の一般債権者の中で特定な債権者だけに厚く弁済され、他の一般債権者と比べ著しく不公平である弁済を言います。
では本論に移ります。
任意売却で次のような色々なことがありました。
=経緯=◆弁護士紹介の任意売却を開始⇒◆買主Aと売買契約締結⇒◆仮差押権者と「抹消料」で決着付かず売主理由特約で白紙解除、振出しへ⇒◆抵当権者債権譲渡⇒◆新買主Bが付いたが仮差押権者の要求額が偏頗弁済に当るとして弁護士は破産申立て⇒◆破産管管財人のもとで任意売却再開⇒◆待ってくれた買主Bと売買契約⇒◆決済&引渡し完了
元々この案件は、破産申立て前、債務者(所有者)が委任した弁護士紹介で任意売却を進めたが、国道面でのマイナス要素のため反響が少なく、その上に貴重な買主が付いても仮差押解除が遅々として進まない状況に不安を抱き壊れてしまうという物件でした。一方、抵当権者は決算を控えサービサーに債権譲渡する等の様々な要因が重なり時間だけが経過してしまうという難しい案件でした。
この物件の所有権以外の権利は、銀行の抵当権の外に某金融機関の仮差押えが駆け込み登記されていました。
この仮差押えが障害でした。
この仮差押えは、抹消料名目でより高い弁済を得ようとする目的です。
本音は金ですが、最初仮差押権者は「債務者に謝罪に来させろ」「金ではない」等、言いたい放題の乱暴な口の言いようでした。
任意売却は競売等と異なり、売買代金の配分は競売とほぼ同じ配分ルールに従い個々の抵当権者との話合いで確定し、その配当額を買主への所有権移転と抵当権抹消等を同時に行ない、買主に完全なる所有権を引渡す仕組みです。
つまり任意売却であっても、一般売買と同じ「売主は引渡しの日までに、本物件に対し抵当権・質権・先取り特権・賃借権・差押えなど、その他所有権を阻害する一切の法律上、あるいは事実上の瑕疵があるときは、これを除去又は抹消し、何ら制限のない安全なる所有権を引渡さなければなりません。」 一つが欠けてもならないのです。
無剰余部分に設定されている債権者の抹消料は、先順位の抵当権者の同意を要しますので一概に申せませんが、一定の暗黙の相場があるようです。しかし無剰余部分の一般債権者の仮差押は偏差弁済に値しないであろう許されるギリギリ金額があるようです。
しかし当金融機関はとても応じることのできない多額な要求で、その後の交渉ても大きな歩み寄りがありませんでした。
結果、弁護士さんは偏頗弁済に当るとして破産を申立てたのです。
では、破産開始決定後「仮差押えの扱い」はどのように変わるのでしょうか?
破産法第42条第2項「破産開始の決定があった場合には、強制執行、仮差押え・・・略・・・の実行の手続きで破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してその効力を失う。」
しかし任意売却を行う場合の別の問題点として実質的に効力がなくても裁判所&法務局の手続きが終るまでは、謄本上に「仮差押え」登記の記載が残るという問題が残ります。
従って弁護士作成の契約書には「仮差押権者の抹消登記については、決済日までに裁判所又は法務局の手続きが完了しないことがあり得ることを買主は了解するものとする。」という特約条項が付け加えられます。
これが何を意味するかと言いますと、仮差押えの権利は既に法律上失効しているが、登記上の記載抹消には時間が掛るので間に合わないときは決済を先にしてくれと言うことなのです。
一般的に我々不動産業者の法的知識は「登記記載事項は第三者に対抗できる」程度ですので、登記記載があっても実質無効だから先に所有権移転をして良いといわれても納得できないのが現実です。
また、新たな融資先金融機関の担当者も、全員が必ずしも法律に長けているとは限りません。私自身も始めてのことで最初戸惑ったように、ほとんどの方にとってこの法律論を理解することは至難なことでありました。この仮差押え登記の記載抹消には、次の2方法があると弁護士から伺いました。
方法1)仮差押権者自身が自主的に取下げる。
方法2)自主的に取下げない場合、管財人が裁判所に対し「裁判所による仮差押権者への効力消滅の通知並びに登記抹消」を上申書という方法で願い出て職権で抹消する。但し、この上申書でも任意売却の売買契約が先になされることが要件となっています。
(※「契約が先の要件」はここでは言及しませんが、任意売却時の要注意事項!)
管財人の法的説明によりやっとのことで買主側の一応の理解を得て契約できましたが、買主側の条件は決済日までの記載抹消でした。このケースでは仮差押権者が管財人の説得に応じ自主的取下したことで抹消期日が読め事なきを得、契約と決済ができました。
このように仮差押え等に振り回された疲れる長い期間でしたが、私としては仮差押権者に感謝したい想いです。
お陰でまた一つ新たな実務上の勉強しちゃいました。
疲れたが収穫もあった一事例です。(本音:いい加減にしろ!)
記:大森孝成