騒音計の指示値と測定値は違う
G特性とは、超低周波音の人体感覚を評価する為の周波数特性です。
上図はG特性の周波数特性を表したグラフです。
G特性は、1Hzから 20Hzの範囲における超低周波音に関する感覚閾値の実験結果に基づいて設定された傾斜を持っています。 これは、まるでバンドパスフィルターを適用したかのような特性を示します。 バンドパスフィルターとは、特定の周波数帯域の信号を通過させ、それ以外の信号を遮断するフィルターのことです。
1Hz以下および 20Hz以上の周波数に対しては、-24dB/octの傾斜が設定されており、これにより信号が効果的に遮断されます。 この設定は、G特性音圧レベルが 1Hzから 20Hzまでの超低周波音を主な対象としていることを反映しています。
したがって、G特性を用いて 20Hz以上の低周波音を評価することはできません。
また、超低周波音に関する感覚閾値は、寝室や居間などの静かな環境における実験結果に基づいています。 この為、屋外環境や物理的な苦情の評価には用いる事が出来ません。
G特性以外の周波数特性として、騒音レベルでおなじみの A特性や、オクターブバンド音圧レベルで用いる Z特性があります。 これらの周波数特性は互いにどのような関係にあるのか、一つのグラフで比べてみました。
Z特性は補正を施さないフラットな特性であり、すべての周波数において補正値は 0 です。
A特性は人間の聴覚感度に基づいた補正値を適用します。 適用周波数範囲は人の可聴範囲に合わせて20Hzから20,000Hzまでとしました。
G特性は 1Hzから 20Hzの超低周波音を対象としていますが、補正値を適用する周波数範囲は 1Hzから 80Hzまでとなっています。 この範囲を超える周波数成分はカットオフされます。
A特性と G特性には重複する範囲が存在します。 この範囲では、人間の耳で感じる低周波音と、実際の低周波音の間に差異が生じます。 そして、実際の低周波音が特定の閾値を超えると、人の体への影響が生じることになります。
参考事例
実際の室内環境音を、 Z・A・G特性で同時に評価してみました。
Z特性(FLAT)による音圧レベルは 82dBですが、A特性による補正後の騒音レベルは 43dBAでした。 31.5Hzから 80Hzの可聴域において、心身への苦情に関連する参照値を超えていることから、この環境では低周波音が高いことが明らかです。 一方で、超低周波音は参照値を大きく下回っています。 この状況での G特性音圧レベルは 79dBであり、G特性における参照値(92dB)を下回っています。
以上の事から、G特性音圧レベルが可聴域内の低周波音(20Hz〜80Hz)に影響されにくいことが理解できます。 G特性は超低周波音に対して敏感であり、可聴域内の定常的な低周波音には、基本的に関係しない特性を持っていることが確認できました。
では、どのような状況であれば G特性音圧レベルが参照値を上回るのでしょうか。
ちょっといたずらをして、16Hz のレベルを参照値より 1 ポイントだけ高くしてみました。
16Hz のレベルを参照値より 1ポイント高くした場合、G特性音圧レベルは顕著に上昇し、92dBに達しました。 これは、G特性音圧レベルの参照値と同じ値です。 16Hz以外の周波数でも同様のテストを行ったところ、どのケースでも G特性音圧レベルは参照値を上回る結果となりました。
これに対して、A特性では可聴周波数以下のレベル変化はあっても、その値は変わりませんでした。 Z特性の音圧レベルは約 4dB上昇しましたが、これは 16Hzでのレベル変化(+31dB)と比較してわずかな値です。
これらの結果から、超低周波音が著しく上昇しても、A特性や Z特性ではその変化を確認することができないことが明らかです。 一方で、G特性音圧レベルはこれに敏感に反応し、1/3オクターブバンドに対する参照値と一致する反応を示しました。
まとめ
超低周波音の影響を把握するためには、G特性による評価が非常に有効です。
ただし、G特性のみで全ての低周波音を評価することはできません。 多くの低周波音成分は20Hz以上の可聴域に存在するため、低周波音を総合的に評価するには、Z特性を使用した 1/3オクターブバンド音圧レベルの評価が基本となります。
また、G特性は室内における感覚閾値を基準としているため、屋外での評価には適していません。
これらの理由から、G特性を使用する際にはその特性を十分に理解し、正確な測定を行うことが重要です。