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土井秋恵

創業をサポートする金融機関出身の経営コンサルタント

土井秋恵(どいあきえ) / 中小企業診断士

経営コンサルティング事務所Plus Colors

コラム

創業計画書を策定する際の5つのポイント

2019年10月1日 公開 / 2019年10月2日更新

テーマ:創業

コラムカテゴリ:ビジネス

こんにちは、中小企業診断士の土井です。
コラム「 創業を決意したら~創業計画策定の重要な5つの考え方」で、創業時の重要な分析ポイントをご紹介させていただきました。
今回は、実際に「創業計画書」を作り込むためのポイントをご紹介していきたいと思います。
「 創業を決意したら~創業計画策定の重要な5つの考え方」も併せてお読みいただけますと幸いです。

ちなみに、今回の「創業計画書」は小規模事業者の方や個人事業主の方を対象としたものを指します。ベンチャー企業などで投資家を募る、などの創業の場合は状況が異なりますので、ご注意下さい。

また、創業計画書は必ず策定しなければならないのか?と聞かれることが多いのですが、銀行や信用金庫などの金融機関からお金を借りる場合には、必ず策定する必要があります。
それ以外の場合でも、地方自治体から事業の認定を受けたり、補助金を利用したりする場合にも策定は必須となる場合が多いです(各種認定・補助金の詳細は主体事業者様へ別途お問い合わせ下さい)。
完全に自己資金で、認定なども受けない、という場合には必ずしも必要ではありませんが、策定しておいたほうが良いと思います。
事業はPDCAが基本であり、P(計画)を簡単にでも作ることで、次の行動に繋がります。
事業の優先順位付け、取捨選択などの判断基準にもなりますので、創業計画書の策定をおすすめします。

1.創業計画書の構成

では、実際に創業計画書を作り込んでいきましょう。
まずは創業計画書がどのような構成になっているかを理解していきます。
創業計画書の提出先によってフォーマットが異なりますが、A3サイズ1~2枚のフォーマットで、①事業者情報、②事業概要、③運転・設備資金計画、④資金調達計画、⑤収支計画(3カ年分)となっていることが多いです(記載の順番は前後している場合もあります)。
具体的にそれぞれポイントを抑えていきましょう。

2.①事業者情報の記載ポイント

①の事業者情報では、開業場所の住所、電話番号、会社名(屋号)、開業(予定)日などの基本情報と開業動機、開業する業種の知識・経験、法律上の許可取得状況などを記載します。
開業動機は特に難しく考える必要はありませんので、素直に書いていただければ大丈夫です。
開業する業種の知識・経験は、専門学校への通学や、開業業種への勤務経験(飲食店開業であれば、飲食店での勤務経験)、得意分野などを盛り込むと良いです。自身の能力のPRの場ですので、積極的に記載します。
また、経営知識として商工会や民間企業で行われている創業セミナーへ参加した場合には、記載しておくと好印象になりやすいです。まだ時間がある場合には、お近くの創業セミナーにぜひ参加してみて下さい。
法律上の許可に関しては、業種毎に許可が必要な場合がありますので、調べて許可漏れがないようにして下さい。飲食店など、店舗が完成してからでないと許可が降りない場合もありますので、管轄の機関との密な連絡が必要となります。必ず事前に確認しておくようにしましょう。

3.②事業概要の記載ポイント

②の事業概要では、事業内容、仕入先・販売先、支払・回収方法などを記載します。
事業内容は、どのような商品(製品)・サービスを誰に向けて販売するのか、ということを記載します。例えば飲食店であっても、コンセプトや取り扱う商品は様々です。コーヒーなどの飲み物を主とするのか、軽食なのか、定食なのか。それを若い女性に販売するのか、サラリーマンの男性なのか、など、具体的に記載します。記載する枠が足りない場合には、別紙でA4サイズ1枚程度にまとめると分かりやすいと思います。
コラム「創業を決意したら~創業計画策定の重要な5つの考え方」も参考にしてみて下さい。
仕入先・販売先は、どこから何を仕入れるのか、具体的な仕入先の事業者名称と原材料の記載と、販売先は誰に販売するのか、一般個人の場合はそのまま「一般個人」で良いですが、事業者の場合には事業者名称を記載します。
支払・回収方法は、仕入先にどのように仕入代金を支払い、販売先からどのように売上代金を回収するか、ということです。仕入代金は、初めての場合は現金支払いで即時払いの事が多いです。売上代金は相手が一般個人か事業者かによって異なりますが、一般個人の場合には現金・即時回収、事業者の場合には月末締め翌月末払いなど、事業者によって回収サイトが異なりますので、取引先に確認を行ってくださいね。

4.③運転資金・設備資金計画の記載ポイント

③は創業に必要な資金の整理をし、それを記載します。
運転資金とは、原材料・商品を仕入れるためのお金や、従業員のお給料、水道光熱費といった、事業を行うにあたり必要なお金のことを指します。多くの場合、当初3ヶ月分の費用を計上します。これは、はじめ3ヶ月間は売上がほとんどない場合が多いので、予め3ヶ月分の費用を見積もって用意しておくことが望ましいと考えられているためです(業種によっては半年など、もっと長い可能性もあります)。
また、設備資金は事業に使用する土地や建物購入・建設、車両、設備(冷蔵庫や電化製品、備品など)のことを指します。業種によって必要なものは様々ですが、必ず購入先から見積もりを取るようにしましょう。インターネット通販の場合でも、価格を調べて印刷しておくようにします。価格を正確に把握することで、どの程度の資金が必要か、また予算オーバーの場合にはどの部分を削減するか(もしくは中古品での対応など)を検討することが可能です。「なんとなくこれくらいだろう」と、全部揃えるために必要な金額を正確に把握せずに手当り次第購入を始めると、本当にほしいものが資金不足で購入できない、というケースが発生します。事業をスムーズに始めるために、手間はかかりますが見積もりを取るのが有用です。

5.④資金調達計画の記載ポイント

④の資金調達計画は、上記③の必要資金の合計と、その資金の調達方法を記載します。
③で必要な資金の全体像が把握できたら、その資金をどのように調達するか(用意するか)を検討します。多くの場合は、自己資金と金融機関からの借入を利用すると思います。必要な資金が1,000万円だった場合、どの程度自己資金が出せるかで金融機関からの借入額が変わります。
また、他には補助金やクラウドファンディングなどで資金調達をする方法もあります。それぞれメリット・デメリットがありますので、活用する際にはよく調べてご判断をして下さいね。

6.⑤収支計画

⑤の収支計画は、損益計画とも言われます。決算書でいう損益計算書の、創業後3年間の計画を立てます(計画書のフォーマットによって計画期間が異なりますので、フォーマットに合わせて計画を立てて下さいね)。
売上高、売上原価(仕入高)、売上総利益、販売管理費(役員報酬、人件費、減価償却費、外注加工費、その他諸経費)、営業損益までを記載することが多いと思います。
売上総利益は売上高から売上原価を引いたもの、営業損益は売上総利益から販売管理費を引いたものです。営業損益は事業活動で発生した損益です。1年間の事業活動で儲かったのか、それとも赤字なのか、ということです。
売上高~営業損益までの数字は、できるだけ根拠に基づいて計算していくことが大事です。売上高は、飲食業などであれば「客数×客単価×1日の来店客数」など、計算して導き出します。ポイントは、1年目は少なめに見積もり、2年目、3年目と少しずつ増加させていくことです。
仕入や販管費は実際に事業活動をしなければ分かりませんが、業界平均より少し多めに計上しておくと安心です。特に仕入ははじめのうちは多く仕入れてしまうことが多く、過剰在庫になりがちです。また諸経費に関しても、1年目は特に様々なものを用意しなければなりません。なので、少しずつ多めに見積もっておくと良いと思います。
営業損益ですが、売上高-仕入高-販管費=営業損益ですので、売上より仕入高・販管費が多くなれば赤字となり、売上より仕入高・販管費が少なければ黒字です。1年目は上記で記載したように、売上があまり立たず販管費が多くなる傾向がありますので、現実的に多少の赤字となる場合が多いです。早ければ2年目、遅くとも3年目には黒字になる計画を立てるのが現実的です。
1年目から大幅な黒字で計画されると、それは非現実的だと思われ、不信感を持つ方もいらっしゃいます。数字をよく見せる、ということではなく、実態にできるだけ近い計画を立てる、ということを重点に置いて下さい(もちろん、実態にできるだけ近づけた結果、大幅な黒字となるのであれば構いませんよ)。

7.まとめ

創業計画書の記載ポイントをまとめてみましたが、いかがでしたか?
今回はポイントの解説でしたので、少し説明が足りない部分があったかと思います。
創業計画書は非常に重要な書類ですので、分からない部分は気軽にご相談いただけますと嬉しいです。

この記事を書いたプロ

土井秋恵

創業をサポートする金融機関出身の経営コンサルタント

土井秋恵(経営コンサルティング事務所Plus Colors)

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