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土井秋恵

創業をサポートする金融機関出身の経営コンサルタント

土井秋恵(どいあきえ) / 中小企業診断士

経営コンサルティング事務所Plus Colors

コラム

創業を決意したら~創業計画策定の重要な5つの考え方

2019年8月2日 公開 / 2019年10月2日更新

テーマ:創業

コラムカテゴリ:ビジネス

こんにちは、中小企業診断士の土井です。
女性や若い方で「創業したい!事業を始めたい!」という方のご相談が多くなっています。
カフェやレストランといった飲食店や、美容室、ネイルサロン、またプログラマーやデザナーなど、フリーランスとして独立される方も多いですね。

今回は、創業計画を策定するにあたり、重要となる考え方・分析のポイントを解説していきます。細かい書き方のポイントではなく、大きな、絶対に外せない「考え方・分析」のポイントを、できるだけ平易な言葉で解説しますね。

創業計画のポイント① ビジネスモデルの構築・整理

創業するにあたって考えなければならないことは、「やろうと思っていることが事業として成り立つのか」ということです。
自身で考えているビジネスが、事業として収益を生み、継続できるかどうか、ということが重要となります。
もちろん、事業をやろう!と考えているので、ある程度の収益を見込んでいるはずです。
そして1年で事業を終わろう、と考えて事業を始める方もいらっしゃらないですよね。
なので、ご自身の中で「事業として成り立つ」ということは明確となっていると思います。
原材料をどこから仕入れて、どのような付加価値をつけて、どの程度の値段で販売する。これがビジネスモデルです。

飲食店であれば、場所はどこか。仕入先はどこか。
どのような店舗で、どのような付加価値を提供するのか。
販売先は誰か(誰が顧客となるのか)。

製造業であれば、どのような製品を製作し、誰に販売するのか。
その製品を製作するにあたり、どこから仕入れるのか。

このように、自身が行いたいビジネスの流れを仕入れ~販売まで整理していきます。
製造業の場合は以下のような図にまとめることができます。
(とても簡易的な図です。一例です)

製造業ビジネスモデル図

他の業種でも応用できますので、一度図を作ってみると良いと思います。

創業計画のポイント② マーケット分析

2つ目のポイントは、マーケット分析です。商圏分析ともいいますね。
自身が販売する商品・製品・サービスに、どれくらいの需要があるか?ということです。
飲食店や小売店であれば、店舗周辺の人口、年齢構成、商業集積地なのか住宅街なのか、などを調査します。場合によっては立地を再検討する必要があるかもしれません。
たとえば、ラーメン屋を開業しようとした場合、住宅街よりもオフィス街でサラリーマンのランチ需要を取り込んだ方が良いかもしれません。もちろん、コンセプトやターゲット層によっても需要がある地域は異なりますので、一概には言えませんが…。
このように、自身の商品・製品・サービスはどの程度の需要があり、商売として成り立つだけの販売量を見込めるか、を調査する必要があります。
業種はもちろん、商品・製品・サービスの内容によっても調査方法は異なりますが、マーケット分析を行い、どの程度の販売を見込めるかを計算するのが重要となります。
せっかく作ったのに売れなかったら悲しいですからね。

飲食店や小売店の場合には、商圏分析が有用です。
人口動態・年齢構成・男女比・昼間人口・夜間人口など、総合的に分析することが可能です。
地方の場合には徒歩・自転車・自動車など、都会の場合には電車といった交通手段も考慮し、どの程度のお客様がいらしてくれるかを検討するのが良いですね。

創業計画のポイント③ 競合分析

3つ目のポイントは、競合分析です。
マーケット分析の一貫ではありますが、競合する会社の調査は必須です。
どの業種でも多くの場合は競合他社がいます。
(全くいない、というのは本当にニッチな市場で、技術やノウハウが保護されていて、参入障壁が高い、というかなり特殊な状況と考えられます。それはそれで、独占禁止法など他のことを考える必要が出てくるかもしれませんね)

飲食店・小売店であれば、周辺の同様な店舗。
製造業・サービス業であれば、同じような製品・サービスを提供している会社。
競合他社がどの程度いて、どのように他社と差別化を図っていくかを考えることが必要です。
よほどの資金力がない限りは他社を真似してもあまり有効ではありませんので、「自社独自のもの」を開発していく必要があります。
会社規模が小さい創業段階では、取引先の確保のためにどのように自社を売り込むか、ということを考えるのが有用だと思います。
競合他社を調査分析し、自社の強みを取引先にPRしていくために、競合分析をしっかり行います。

創業計画のポイント④ SWOT分析

4つ目のポイントは、SWOT分析です。
SWOT分析って、いきなり難しい言葉が出てきましたね。SWOTはスウォットと読みます。
Sが強み(Strengths)、Wが弱み(Weaknesses)、Oが機会 (Opportunities)、Tが脅威 (Threats)という意味です。
SWOT分析は以下のような図で整理されることが多いです。

SWOT

図のように、自社の強みと弱みを整理します。
また自社を取り巻く環境の中で、何が機会(チャンス)で、何が脅威(自社にとってマイナス要因)なのかを分析します。

例えば飲食店を経営する場合、店舗がどうしても必要になります。
この店舗を、例えば相場よりも安く賃貸できた、または家族・親族所有の建物で行う、などコストが安く済みそうであれば、それは「強み」となります。
一方で、立地が悪い、仕入れ値が高い(安く交渉できない)などは「弱み」となります。
商品・製品・サービスそのものはもちろん、コストや資金、また人材や生産効率、顧客サービスなど、自社の「強み」と「弱み」を多角的に整理すると良いでしょう。

機会・脅威は、自社を取り巻く外部環境の分析です。
例えば、最低賃金の引き上げは「脅威」となります。また、規制の緩和・強化なども機会・脅威に整理されます。
オリンピックなどの大規模イベントなどは、多くの業界にとっては「機会(チャンス)」となります。
このように、外部環境(政治・経済・技術革新など)を整理し、自社は今どのような環境の中にいるのか、を把握します。
これは機会を逃さず、また脅威にいかに対策するか、という経営判断に繋がります。

創業計画のポイント⑤ 収益・資金繰り

ポイントの5つ目は、収益と資金繰りの管理です。
ビジネスとして継続していくためには、収益を生み出していかなければなりません。
自分でビジネスしたい!と思っているからには、収益(儲け)が出ないと意味ないですよね。
収益は、売上から材料費、人件費、その他のコストを引いたものです。
損益計算書上は営業利益となります(この後、他に計算するものがありますが、ここでは営業利益までの計算を行います)。
この収益の計算を、3年分行います。毎月どの程度売れて、どの程度経費がかかるかを1年目、2年目、3年目と計算していきます(細かい計算方法に関しては、今回は省きます)。

また、このときに同時に資金繰り表も作成すると良いです。
資金繰り表とは、月初の現預金に現金収入(現金売上)を足し、現金支出(と借入金の増減(借りた場合は現金が増えるのでプラス、返済した場合はマイナス)を毎月計算するものです。つまり、現金の出入りを計算するものです。
なんでこんな計算をするのか?と疑問に思うかもしれません。1年目、2年目、3年目と黒字になって行けば、現金の出入りなんて気にしなくてもいいような気がしますよね。

でもそんなことないのです。計算する必要があるのは、「現金が手元にないと、材料も買えない、人も雇えない、借金も返せない」からです。
例えば製造業などで、販売したのに「代金の支払いは翌月末となります」と、取引先から言われたら、今月の人件費などの支払いはどうしましょうか。翌月分の製品を作るための材料費、銀行への借入金返済のお金をどう捻出しましょうか。翌月末まで待ってくれ、というわけにはいきません。
このように、「売上代金の入金と現金支出の時期がズレる」というのは普通のことです。
このズレを理解し、月次で現金の出入りを計算しておくことで、”現金がない”という最悪の自体を避けることができます。
(実際に計算して、足りなくなるケースも出てきます。この場合は、削れる経費がないか精査した上で、それでも足りなければ運転資金借入を行うなどの対応が考えられます)

ちょっと難しいかもしれませんが、大事なことですので書かせていただきました。

まとめ

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ポイント①~⑤をご紹介しましたが、これらのポイントはお互いに非常に関連しています。例えばポイント②のマーケット分析や③の競合分析を行ったら、もっと違う製品を開発した方がいいことが分かり、仕入先や販売先も再検討する、など。
事業は自社のみで行うことができず、必ず他社や社会に左右されます。
今回は創業時のポイントとして5つのポイントをご紹介しましたが、このポイントは創業後も常に分析していくことが必要です。
社会や市場はどんどん変化していきますし、強力な競合他社もいつ出てくるか分かりません。
創業時からこの5つのポイントを分析できていれば、それは御社の大きな「強み」となるはずです。
そのお手伝いができましたら、これ以上なく嬉しいです。
どうぞお気軽にお問い合わせ下さい!

この記事を書いたプロ

土井秋恵

創業をサポートする金融機関出身の経営コンサルタント

土井秋恵(経営コンサルティング事務所Plus Colors)

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