
コラム
相続登記、いよいよ義務化へ
2019年12月3日
【今日のポイント】
以前から話題になっていた相続登記の義務化の問題でしたが、いよいよ具体的な案が公表されました。今回はこの原案について、身近な問題の部分を紹介したいと思います。
所有者の確認をしていない土地を相続する可能性のある方は必見です!
【手続の簡素化】
法制審議会が取り纏めた「所有者不明の土地対策」の原案が公表されました。
これによりますと、現時点では相続登記をする場合には全ての相続人を挙げて申請する必要があり、さらに被相続人の出生から死亡までの戸籍の提出も必要とされています。
この煩雑な手続きを敬遠して、相続登記をしないまま何代も経てしまい現在の所有者が誰なのかが把握出来なくなっているのです。
この為、今後は被相続人の死亡を証明する書類と、登記する人物が法定相続人であることを証明出来れば相続登記が出来るような手続の簡素化を進めるとのことです。
これによって、土地の所有者は明確になり、当該の土地の売買の取引もスムースに進められることにも繋がります。
相続登記を行わない(名義人の変更)理由の一つには、親からもその事実を知らされていなかった等不可抗力な一面もありますが、その多くは先に触れた手続きの煩雑さや、登記費用の負担を嫌う点にあります。特に、利用価値の少ない地方の土地などは確信犯で名義人の変更をしないケースも見受けられるようです。
【その他の改正】
この為、対策としては飴と鞭、ではないでしょうが、一定期間内に登記をしなかった場合に罰則を設けるとしています。
現時点では登記を怠った相続人に対して万円単位での罰金刑を検討中です。~5万円から10万円前後?
また遺産分割の協議に関しても期限を設け、相続開始から10年経過しても協議や申立が無い場合は法定相続分に従って分割を可能とするとしています。従来、遺産分割協議には期限はなく、その為土地の所有者が決まらないまま何年、何十年と経過しているケースもあり、今回の10年という期限設定で分割協議の迅速化にもつながるのではと考えられます。
さらに、これまで土地の所有権の放棄は民法上では認められていませんが、今回の原案では「所有権が確定しており、管理も容易な土地」であれば所有権放棄を認めるとしています。但し、個人の放棄の場合のみで法人による所有権放棄は従来通り認めない方針です。
所有権には土地の適正な管理、納税といった義務が付帯するので安易な所有権放棄を認可してしまうと課税逃れ、管理費用の国への転嫁といったを不法行為を助長してしまう恐れがあるからです。
これらの条件を満たした個人の土地を放棄した場合、先ずは国に帰属させるとし、希望があれば自治体が容易に取得出来るようなシステムを設定して、再開発といった地域活性化に繋がる土地の有効活用を促進させるものとするようです。
あくまでも現時点での案ですから、今後の軌道修正や見直しが無いとは言えません。個人的には「所有権が確定して、管理が容易な故人の土地の所有権放棄」の項目にある「管理が容易」の解釈が気になります。 現地までのアクセスが不便、周囲が山林等々、管理困難と判断される要素との兼ね合いが明確にならなければ、実効性に疑問符が付くのではと考えます。
今後の推移については、随時この場で紹介していきたいと思います。
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