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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし)

寺田淳行政書士事務所

コラム

改正相続法~居住権と所有権 どちらが得か?

終活~相続に関する問題

2018年12月7日 / 2018年12月14日更新


【今日のポイント】

 
 今回の相続法の改正で注目を集めている「配偶者の居住権」の新設ですが、全てのケースでメリットがあるのでしょうか? 今回は従来からの「生前贈与」と「遺言書」との対比を中心に紹介したいと思います。

【配偶者居住権】

 配偶者居住権の内容については既に紹介済みなので、ここでは省きますが、この制度の適用を単純なパターンで説明しますと、相続が発生した時に、自宅の評価額の1/2を配偶者の居住権で、残りの1/2を子供が所有権として均等に相続することとして、残りの金融財産等の1/2を配偶者が、1/2を子が均等に相続することになります。 

 こうすることで、従来は自宅は全て遺された配偶者(ほぼ妻の想定になりますが)が相続(所有)するものの、その為に金融資産などは全て(あるいは大半を)子が相続することになり、家はあるものの生活費がまるで無くなるという事態を回避出来るとされています。
 
 別に親子間の関係が非常に良好で、同居、あるいは近隣で暮らしているのであれば、親の金融資産の相続が些少な場合でも、子が親の面倒をみることで生活面での不安は解消するのですが、そういうケースは残念ながら最近ではレアケースなようで、親子間が疎遠、遠隔地に永住を決めた子しかいない、子の生活も正直いっぱいいっぱいというようなケースですと、全ての金融資産を子が相続したとしても親の生活を支援することが困難になります。

 この制度によって、親は住む場所と、一定の資産を相続し、子もそれなりの資産を相続出来るので、双方にとってメリットの多い法改正と言えるでしょう。

 とはいうものの、まるでいい面ばかりの新制度、という訳でもないようです。

 例えば50代前後で夫に先立たれ、未亡人となった場合の居住権は相対的に「高い評価額」になります、居住権の発生している期間が長ければ長いほどその評価額は高くなるのは当然のことですね。

 そうなりますと、相続の際に「高評価額の居住権」の反比例する形で、手に出来る金融資産(金銭等)の類は大幅に減額されるのです。

 法の下に平等な遺産相続にはなりますが、今後の実生活では遺された配偶者は早々に金銭面の不安を抱えることになるのです。

 この逆に、80代、90代で未亡人になった場合は、当然ながら配偶者居住権は「低い評価額」になりなすから、手許に残る金融資産(金銭)は多くなるのです。 相続する金額が配偶者が今後の生活で必要とする額を大きく上回る場合でも、平等な遺産相続という名目上仕方のないことなのです。

 仮にごく短期間のうちに遺された未亡人も亡くなった場合には、あまり手を付けていなかった相当額の金融資産を遺すことになり、二次相続の際に遺された子供は高い相続税を課税されることにもなります。

 この様に、配偶者が何歳の時点で相続発生となるかは配偶者居住権の評価額に大きく影響します。 どういう形での相続が最も自分の家族に適した形になるかを事前に考えておく必要があるのです。


※補足としての注意点
 配偶者居住権は、当然ながら相続時に発生する権利です。 多くの場合、自宅の所有は夫名義であることが多く、夫が妻に先立った場合に(自宅を含めた)相続が発生します。

 この逆に妻が先に亡くなった場合には、その時点では(自宅の)相続が発生しません。 なので、夫には配偶者居住権は発生しません。 元々が夫の所有財産ですから、当然のことですね。

 配偶者居住権という言葉だけを見ると、夫婦共に持つ権利と思われるかもしれませんが、自宅が妻の名義でなければ、基本的には夫に先立たれた妻に対する救済制度という理解で十分かと思います。

 このケースのように妻が先立ち、後に夫が死亡した時に自宅を含めた遺産の全ては子への相続対象の財産となります。 また無論、配偶者控除も対象外になりますので、この点にも注意して下さい!

【生前贈与】

 
 婚姻期間が20年以上であれば、「配偶者への自宅の生前贈与」は遺産分割の対象外になります。

 この場合は居住権でなく、「所有権」を配偶者が得ることになり、遺産分割は自宅を除いた遺産だけで行われます。

 配偶者には自宅全ての所有権と、一定額の金融資産が保証される訳です。 配偶者から見た場合には、最も生活面の不安を軽減してくれる制度ではないでしょうか?

 但し、いい面ばかりではありません、「所有」となりますから「不動産取得税と登録免許税」が課税されます。 前者は一般的に固定資産評価額の4%、後者は固定資産評価額の2%の課税となります。

 一般の相続時における課税は、登録免許税の0,4%だけなので、これに比べますと「格段に割高」になるのです。


 無論、この場合、自宅は100%配偶者(=妻)の所有ですから、後の子への二次相続時には相続財産の対象になり、相応の額の相続税課税を覚悟することになります。

 配偶者の生活面の安定と、二次相続時の節税、このどちらを選択するかは親子間、家族間の決断に委ねることにします。 

【遺言書】

 配偶者控除は上限1億6千万円まで、又は遺産総額の1/2までは非課税になります。 仮に自宅の評価額がどちらかの非課税枠の枠内であれば、遺言書による配偶者への自宅の相続はメリットが大きいといえます。

 但しこの場合も、続く二次相続時にはまるまる相続財産の対象となりますから、子に対しては高額の課税になることは避けられないでしょう。

【懸念材料】

 さて、別の視点から見た場合の懸念材料としては、肝心の不動産価格の推移があります。

 雑誌やメディアなどで囁かれるオリンピック特需が終わると言われる2020年以降に不動産の評価額が大幅に下落する場合、財産としての価値も大きく見直す必要に迫られます。 遺言書を作成していた場合であっても、財産価値が大幅に変動(下落)していたら、公平な財産分与にならなくなる可能性も出てきます。

 この事態を見越して自宅の価値が高い今のうちに売却を目指した場合でも、居住権が存在する物件であれば容易に「買い手」は現れないと言われています。または希望価格での売却が難しくなるとも。

 せっかく好条件での購入希望者が現れても、居住権の存在によって絶好機を逃してしまうケースも出てくることも想定しておく必要があると思います。

この記事を書いたプロ

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2018-12-14
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