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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし)

寺田淳行政書士事務所

コラム

改正相続法~配偶者の居住権への懸念

終活~相続に関する問題

2018年7月10日 / 2018年9月19日更新


 【今日のポイント】

 いよいよこれまでこのコラムでも紹介してきた相続法改正が決定しました。 その中で、注目を集めていた配偶者の生活保護を前面に押し立てた「居住権」に関する実際の問い合わせを紹介すると共に、その課題を考えたいと思います。



【ある問い合わせ】

 発端は、永年交流のある知人からの相談でした。

 彼は前妻と死別し、子供が一人前になるまではと独り身を通してきましたが、子も皆独立した昨年、知り合った女性との再婚を真剣に考えているとのことでした。
 
 しかしながら、その相手というのが二回り以上歳が離れている点から、子供たちは最初から身構えモードで、その結果女性と子供の間には早くから不信感と相性の悪さが生じたとのことでした。

 彼女は身寄りがなく、長年親の介護にかかりきりで婚期を逸し、今も狭い借家に一人暮らしをしているようで非常に不安定な日々を過ごしているとのことでした。 もし、このまま籍を入れ、結婚生活を始めても、たぶん自分が先に逝くだろうから彼女のその後の生活の安定の為にも遺言に今回の改正によって新設された居住権を彼女に与えると書きたいのだが、子供たちは血のつながらない、仲も良くない赤の他人(子供談)にむざむざと実家を「占拠」されるのは絶対に認めない! お父さんは騙されている!の一点張りで結論が出せないまま堂々巡りになっているということでした。

 
 厄介な問題は、彼には自宅と土地以外にこれといった財産が無く、預貯金等では到底法定相続分を満たすことは無理、という経済的背景が存在するという点です。


 そして、土地・家屋の場合は当然ながら固定資産税が発生します。 これまでのように単純に相続イコール所有権の移転だけでしたら、固定資産税の納付も納得出来るものでしょう。 ですが、今回の「居住権」を行使した場合、この固定資産税の負担者は「所有者」なのか「居住者」なのかは明示されていません。 

 当初想定した夫婦・親子関係では税負担について深刻な問題にはならないと考えたのかもしれませんが、彼の様なケースでは仮に所有権を有した子供に従来通り納付の義務がありとなれば、なんで赤の他人に家を占拠された挙げ句、固定資産税だけはこちらが払わされるのか!?  全く納得出来ない!! となるは必至でしょう。

 ここまでの説明で彼も事態の深刻さを痛感したようでした。 可能であればまずは3者そろっての協議でお互いの真意を確認すべきであり、必要であれば私も立ち会う旨を伝えてその日は終了しました。



【それぞれの立場から】

 今回のケースでは、私はその女性とはまだ面識がないので何とも言えませんが、この問題には再婚相手側に変な意図はなくても子ども側に悪意がある場合もあれば、子供の懸念通りに意図的な再婚という対極にあるケースが普通に存在しているのです。

1)長年事実上夫婦関係にあったものの、先妻の子供の強い要望で籍を入れられない関係。
2)所謂「婚活」で出会って一目ぼれ的に電撃結婚に至ったような関係。

 1)の場合はまさに子供がその女性に対し、どういう感情を持っているかで変わります。 子供とも交流のある関係(両親の友人、幼馴染等)であれば、このような問題になることはごく僅かです。 問題になり易いのは、早くから親と別居しており、あまり交流のなかった子供が知らない間に(あるいは故意に知らせないで)交際を始めており、その後も正式に子にはその存在を知らせなかった場合などです。 これは、父親側に原因があるケースと言えます。 なかにはそれ(結婚)はそれ、これ(遺産相続)はこれとシビアに割り切って事に臨む子もいます。 この場合は子の考えにもある種の思惑が潜んでいると言えます。

 2)の場合は、世間的には再婚女性に別の思惑があるのではと邪推される場合です。 特に年齢が離れている場合には余計財産目当てと露骨に疑い、籍を入れることには絶対的に反対するというケースです。 実際そういった意図を隠そうとしない女性もいますし、子の側からしても場合によっては自分たちの兄弟と言えそうな年齢の女性を母親とすることに拒否感をします場合や、露骨に今更遺産相続に新参者を加えることが我慢できない、というこれまた露骨な感情をむき出しにするケースも少なくありません。

 なんとも厄介な問題ですが、基本の筋論で言えば、今実家を所有しているのは父親である彼ですから、所有者が自由にその扱いを決めるのは何ら問題ありませんし、子供と言えど、または配偶者と言えどもその決定に従わざるを得ないのです。 ボトムアップでの事態の収拾が無理ならば、最後は(彼の)トップダウンで収拾を図るしかないのです。

 この問題は何も実家の居住権に限ったものではありません。

 後妻に入った女性から言えば、今まで親を放置してきたくせに、子供だからといってそこまで遺産相続に口をはさむ権利などあるか! となりますし 子ども側から見れば、色仕掛けで老境に入った父親をたぶらかす極悪人に一円たりとも財産を渡すものか!となるのです。

 今回の改正は、配偶者としての立場を尊重し、配偶者と死別後の生活の安定を図るための改正でした。
ですが、上記してきたようにそれだけでは割り切れない現実は、まだまだ残されたのです。



【遺留分減殺請求との類似点】

 これと似たような一面を持つ制度に、遺留分減殺請求があります。 被相続人の遺言書にある遺産相続の配分が特定の相続人に著しく偏ったものの場合、その他の相続人には法定相続分の1/2は侵されないという遺留分減殺請求権というものがあります。

 例えば、ある被相続人に3人の子供がいたとして、3人共に全く落ち度のないにもかかわらず、なぜか次男を溺愛しており、全額遺産相続させると遺言書に書き残してあった場合、更にその遺言書の書式に不備がなかったとしたら、何の落ち度もない残りの2人の子供はそのまま唯々諾々と遺言書の内容通りの遺産相続を飲まなくてはいけないのでしょうか?

 そのような偏った遺産相続を排除するものが、遺留分であり、遺留分減殺請求によって長男や末っ子は最低でも法定相続分の1/2までは遺産相続が成されるのです。 このケースでは相続人が子供3人ですから各1/3の法定相続が約束されていますから、その1/2にあたる1/6は法的に確保される相続分になるのです。

 ですが、この反対のケースもあります。 どうしようもない放蕩息子で家族親族に度重なる迷惑をかけ続けている子供であっても、この権利は有していますから、被相続人が 彼には相続させないといった旨の遺言を遺していても、先に書いたように法定相続分の1/2は手に出来るのです。 (相続人の廃除、相続欠格制度該当者等を除く)

 配偶者の生活保護という名目で今回改正された「配偶者の居住権」ですが、ここでも遺留分と似た問題を抱えていることは否定出来ないでしょう。 全てにおいて公明正大な法律制度というものは、なかなか至難の業と言えるでしょう。

この記事を書いたプロ

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2018-09-19
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