まちの専門家をさがせるWebガイド マイベストプロ東京
寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし)

寺田淳行政書士事務所

コラム

無用になった不動産は相続放棄で解決?!

【今日のポイント】

 ここ数日、夏到来のような暑い日が続いていますが、体調管理は万全でしょうか? 
6月最初の投稿は、手に余るようになった不動産と、相続放棄に関する記事です。



【相続不動産の現状】

 以前は財産と言えば、トップに挙げられることが当たり前だった土地家屋と言った不動産も時代の変遷と共に、その存在価値にも大きな変化が生じてきています。
 
 例えば最近まで親が暮らしていた実家、または現在親が一人暮らししているような家屋のように、まだまだ現役の不動産でも、子供を始めとした相続人全てが今後ここで暮らす可能性が皆無な場合。

 既に長期間にわたって「空家」状態で、相続人も年に1回訪れるかどうかといった状態の場合。

 既に家屋は無く、更地の土地だけが遺された場合。

 少子化によって跡を継ぐ子がいない、または子は全て別の土地に暮らしの拠点を構えているというケースは珍しくありません。

 最近よく雑誌や新聞でも採り上げられる「空き家問題」「無主の土地」といった問題は、既に深刻な事態にまで拡大しています!


【今や不動産は「金食い虫?」】

 不動産というものは、人の居住云々に関係なく、上記のようなケースであっても「固定資産税」「都市計画税」が課せられるのです。 これに加えて家屋がある場合は、万が一を考慮すれば 空き家向けの火災保険の加入は必須になり、門扉や雨どい、屋根瓦なども定期的にメンテナンスをしないと破損や倒壊によって周辺に二次被害を生じさせるリスクになり兼ねません。 事態を放置し続ければ、害獣の住処と化したり、不審者のねぐらにもなる恐れも出てきます。

 更地であっても、雑草雑木の始末は土地の所有者が責任を持って行わなくてはならず、自分たちで出来なければ地域のシルバー人材センター等へ依頼して処置しなくてはいけません。

 これらの保全に関する費用は、確実に毎年発生します。 所有している限り。

 自分たちに使い道がない、売ろうにも売れないような物件、では管轄する地域の自治体に寄付すれば?  
無償で土地が手に入るのだから自治体にもメリットがある訳だし、毎年負担する費用さえなくなればこちらは文句ないのだから、両方に得では? 

 ところが、なかなかそうはいかないのが現実世界でして、自治体サイドによほどのメリットがない限り、寄付を受け取ってもらえることはほとんどありません、丁重にお断りされるのがオチです。 本音は有難迷惑というケースが殆どだと、聴いたこともあります。 

 かといって、老朽化した廃屋同様の家屋等を何ら手を打たないままでいると、今では2015年以施行された「空家対策法」に基づいて、最悪の場合、行政代執行で「迷惑空き家」を解体撤去が執り行われて、その費用全額を所有者や相続人に請求してきます。  場所や家屋の規模によって一律には決められませんが、概ね300万円前後が解体諸費用の目安と言われています。 

 止めを刺すようですが、家屋は処理されても土地は所有者の物のままです。 保全費用、課税負担は何ら変わることなく発生し続けるのです!!



【相続放棄という選択】

 「負の価値」しかない相続財産、幸い親には借金もなく、連帯保証人にもなっていないからこの土地だけ相続放棄しても他人には迷惑をかけるものでもない。 寄付も叶わないから、せめて土地だけの相続放棄は認められないか?

 気持ちは理解できる面もありますが、現時点では全く無理です。

 既にご存知と思いますが、相続放棄とは 「全部相続するか、全部放棄するか」の2択しか選べないのです。 他に選択肢も例外規定もありません。

 では、相続財産が件の不動産だけになれば?
全ての財産を放棄する相続放棄という解釈に沿った選択となるのです。

 例えば、親が金融資産や貴金属や骨董品等の財産価値のある物品を保有しているのであれば、親が健在のうちに子や相続人に段階的に生前贈与していくのです。

 期限付きの生前贈与非課税制度に該当する場合には、子や孫に対しての教育資金一括贈与、住宅取得等資金の一括贈与、結婚・子育て資金の一括贈与等の生前贈与非課税枠の制度等を活用して財産の処分を進めておき、相続発生時には不動産と共に相続放棄しても悔いのない程度の金融資産額にしておけば、相続人もすんなり相続放棄を決断出来ますし、法的にも問題はありません。

 但し、親に借金や連帯保証人といった「負の財産」がある場合は、それを解消しない限り、このやり方は利用できません。
借金を払いたくない為にこういった行動をしたと判断されて、詐害行為としてそれまでの贈与行為全てが取り消されます。
 
 何よりも、現時点で親の財産の中にこのような負の財産になりそうな不動産があるかどうか?
その有無を迅速に確認、把握することが大切です。 そのうえで、この問題にどう対処するかを親子で検討することをお奨めします。 またあまりに性急に生前贈与を進めますと、肝心の親の暮らしが立ちいかなくなる恐れが出てきます。 そのタイミングも慎重に検討する必要があります。


 相続放棄については以前このコラムで何回か紹介していますので、興味のある方はそちらもお読み下さい。

 参考までに、相続放棄の基礎についてのコラムをリンクしました。

相続放棄の基礎知識その1
相続放棄の基礎知識その2


【補足記事】

 ちょうどいいタイミングで新聞でも土地の放棄に関する記事が掲載されていました。 5月29日付の朝日新聞紙上での記事です(以下抜粋引用)

「政府は、土地の所有権を放棄したい時に放棄できる制度の検討を始めた。人口減で土地の活用や売却に困る所有者が増えていることが背景にある。防災上の必要性など一定の要件を満たせば、所有者が土地を手放せるようにする方向だ。放棄された土地の引受先などが課題になりそうだ。」

 「政府が来月に取りまとめる「骨太の方針」に盛り込む。法務省や国土交通省が具体的な検討を進め、来年2月にも方向性を示す。」

 民法には「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」(第239条)との規定があるが、土地放棄の手続きを定めたルールはない。そこで廃棄物処理のように、土地の所有者が一定額を納めれば放棄できる仕組みなどを検討する。 

この記事を書いたプロ

寺田淳

寺田淳(てらだあつし)

寺田淳プロのその他のコンテンツ

Share