まちの専門家をさがせるWebガイド マイベストプロ東京
寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし)

寺田淳行政書士事務所

コラム

家なき子の規定の見直しとは?

終活~相続に関する問題

2018年5月16日 / 2018年9月19日更新

【今日のポイント】

 今日のコラムは前回簡単に触れた「家なき子の特例」と、その見直しについて改めて紹介したものです。


【小規模宅地等の特例~家なき子の特例】

  もともとの規定では「相続開始前の3年以内に国内にある本人又は配偶者の所有する家屋に居住していなかった。」場合を家なき子として特例の適用を認められていました。 これを活用して、節税対策の為の手法が登場してきたのです。

 前回のコラムの内容の繰り返しになりますが、以下の4項目が「節税対策」として認められてきた「家なき子」の該当パターンでした。

1)子の持ち家を孫に生前贈与し、孫の名義の家に子が「間借り」することで、子は「家なき子」となる。
2)子の自宅を親に「売却」し その家に「家賃なしで賃貸」暮らしをする。
3)親が建てた物件(無論、親名義)に子が「無料で賃貸」する。 
4)子を飛び越して孫に親の土地を「遺贈」する。

 さらに補足しますと、ここにある「孫」には「教育資金の一括贈与」等の様な年齢や学生か否か、のような前提条件は一切ありませんでした。 極端な話乳飲み子の孫に土地を遺贈しても問題にはならなかったのです!


【今回の見直し】 

 最も大きな相違点は、次の2項目でしょう。

〇自分、その配偶者、3親等内の親族、同族支配の会社や一般社団法人等が所有する家屋に、3年以内に居住していたことが無いこと。

〇相続開始時において居住用の家屋を「過去に所有していたこと」が無いこと。

 まず前記の項目「3親等内の親族が所有している家屋に」の条件に、孫は該当することになりました。

 次に2番目の項目によって、子が孫に今までの住まいを生前贈与しても、子の自宅を親に売却しても「過去に居住用家屋を所有していた」ことから、適用対象外になるのです。


【正当な家なき子の条件とは?】

 代表的な事例で言いますと、孫に遺贈する場合であれば、高校や大学入学によって親元を離れ、同族支配でない賃貸物件や学校所有の学生寮、赤の他人が経営する下宿住まいとなっていれば正真正銘の「家なき子」になり、その後3年を超えて賃貸物件暮らしを続けていれば、その後に相続発生となり、遺贈によって祖父母所有の家屋を受け取る場合には晴れて家なき子の特例対象となり、固定資産評価額は8割減となります。

 無論学生でなくても就職で地元を離れ、赴任先で上記したような賃貸物件に暮らす場合も同様です。 サラリーマンであれば多くの場合転勤族になりますから、孫でなくとも子の場合も家なき子の資格を得ることが容易になります。

 とはいえ、意地悪な見方をしますと、大学生の場合で講義のある曜日は下宿暮らしで、講義のない平日や土日は親元に戻って今まで通りの生活をしていたらどう判断すればいいのでしょうか? さらに夏季休暇等の長期の休みの時は全て親元暮らしとなれば年間通算で下宿暮らしより実家暮らしの方が長くなる場合もあり得ます。 住民票の異動だけを済ませておけば、文面上は「下宿で一人暮らし」の証拠にはなりますが・・・?
 
 この回答については個々の事情が大きく影響してきますので詳細は書きません。 当該の税務署の判断でいかようにもなるとだけに留めておきましょう。


【課税に関する注意点】

 仮に、相続発生の3年以上前から赤の他人の賃貸物件に暮らしていた孫であっても特例以外の税金は通常通りに発生し、課税されるという事です。

 遺贈は「相続税」の対象となるので、仮に被相続の子である自分の親が健在の場合は孫は相続人ではありませんから、「相続税の2割加算」の対象になります。 加えて、特定遺贈(遺産の中から特定の遺産~この場合は土地~だけを遺贈するケース)の場合には「不動産取得税3%」が別途加算されてきます。

 また、下宿や寮生活を始めたとしても3年以内に相続が発生した場合や、今回の見直し項目を知らずに、単純に親と同居中の孫への遺贈という内容の遺言を遺していた場合は、そもそも特例の適用対象外となりますから、通常の固定資評価額で算定された相続財産を受け取ることになり、さらに2割加算の相続税が課せられ、場合によっては3%の不動産取得税も課せられるという事態になる可能性が出てきます。


【補足:税負担出来ない孫への遺贈?】

 最後に、家なき子の条件を満たし、晴れて不動産を遺贈された場合、先に書いたように不動産の規模や価格によっては8割減の評価額であってもかなりの税負担になることは少なくありません。 まだ若い社会人は勿論のこと、学生の孫がこのような資産を受け取った場合、相続税や不動産取得税等は「自己責任で納付」しなくてはいけないのでしょうか?

 この場合、「年間110万円までの生前贈与非課税」の枠内であれば、親から資金援助することは何ら問題ではありません。 一括では賄えそうにないのであれば数年にわたり枠内の金額を生前贈与してプールしておけば、その時に慌てることなく孫への財産移転手続きを進めることが出来るのです。

 まとめておきますと、 家なき子の特例の恩恵を正しく受けるのであれば、

・親が健在な時点からその為の準備に入ること。
・新規の家なき子の適用条件をよく理解してくこと。
・孫へ遺贈を目指すならば、生前贈与非課税枠を利用した納税対策用資金の孫への提供を考える事。
・自分と子(子と孫)どちらが家なき子になれば最適な節税方法になるかを比較検討する事。

  この点を十分に検討することをお奨めします。 

この記事を書いたプロ

寺田淳

寺田淳(てらだあつし)

寺田淳プロのその他のコンテンツ

Share

寺田淳のソーシャルメディア

twitter
Twitter
2018-09-19
facebook
Facebook